軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

202話 高月マコトは、衝撃を受ける

「蛇の教団が壊滅しました!」

なんだってーー!

これがイラ様が言ってたという『手を打った』ってやつか。

でもどうやって?

「ふじやん、一体なにが……?」

「拙者も詳しいことはまだ……。わかっているのは 運命の女神の巫女(エステル) 様と教皇猊下の命令により、太陽の国の国家認定勇者アレクサンドル殿が『単独』で魔大陸へ渡り、蛇の教団の隠れ家を襲撃。その場に潜んでいた蛇の教団の幹部『大主教』たちを殺害したということです」

「……へ、へぇ」

十分過ぎるほど詳しく説明された。

マジでふじやんの情報収集網ってどうなってんだ?

「にしても、あのぼーっとしたハイランドの国家認定勇者アレクが一人でやったの? 太陽の騎士団か、神殿騎士団と一緒にじゃなくて?」

「それが……、軍を動かしたわけでなく単独行動だったという話ですぞ」

ふーむ、やっぱりあいつはとてつもなく強かったんだなぁ。

国家認定勇者アレクが協力すれば、もっと楽に魔王を倒せたんじゃなかろうか?

先の作戦では、なぜか桜井くんとは別行動だったみたいだけど。

「現在、ハイランド城前の広場にて蛇の教団の幹部たちが『晒し首』になっております。タッキー殿と因縁深い大主教イザクの首もそちらに……」

「えっ!? あいつが?」

衝撃を受けた。

水の国の王都ホルンで、忌まわしき魔物を暴れさせ。

太陽の国の王都シンフォニアで、 魔物の暴走(スタンピード) を起こし。

木の国で、魔王の復活を試み。

火の国で、彗星落としを計画し。

商業の国へ侵攻する魔王軍の作戦を立案した(と思われる)働き者のテロリスト。

大主教イザク。

そっかぁ……イザクさん、死んじゃったのかぁ。

しかも首を晒されているとか。

結局、生前に顔を見ることはできなかった。

どんな顔をしていたんだろう……。

「タッキー殿、見に来ますか?」

ふじやんが、遠慮がちに聞いた。

「いや……やめておくよ」

俺は首を横に振った。

いまさらだ。

死者にムチ打つようなことはやめておこう。

厄介な敵が居なくなったはずなのに、なぜかしんみりした空気になった。

「そして、大きなニュースはもう一つありますぞ!」

「ほう」

ふじやんがシリアスな空気を払うように声を張り上げる。

「ノエル王女が、『神の試練』を無事突破され『慈愛の聖女』様へとなられたのです!」

「神の試練?」

はてと、俺が首を捻っていると。

「勇者マコト。太陽の巫女であるノエル様が神の試練を乗り越え『聖女アンナ』様と同じ力を得たのですよ」

ソフィア王女がやってきた。

そうだ、そういえばそんな話を聞いたかも。

そっか、ノエル王女が『聖女』様になったのか。

きっと強くなったんだろうけど……聖女様って戦うのかな?

「タッキー殿。聖女アンナ様のスキル『勝利の行軍歌』は、数万の兵をそれぞれ一騎当千の 強者(ツワモノ) へと変えてしまうといわれる伝説のスキルですぞ」

なるほど……強化スキルか。

数万規模を一気に強化ってのは、規格外だな。

普通の 強化(バフ) 魔法の対象って、数人から多くて十数人がせいぜいだ。

聖女様の 固有(ユニーク) スキルってわけか。

「それをノエル王女も使えると?」

「ええ、ノエル様も『勝利の行軍歌』スキルを授かったそうです」

「それは、心強いですね」

惜しむらくは、先の戦争で欲しかったけど、大魔王との決戦に間に合っただけでも僥倖か。

「ところで、ソフィア王女は何かご用があったでのは?」

ふじやんが、心を読んだように会話を誘導する。

「ええ、その通りです。藤原卿には申し訳ないのですが、ノエル王女のところまで勇者マコトをお借りしますよ」

「勿論ですぞ! 連れて行ってくだされ」

あれー?

俺の返事は無いまま決定ですか?

まあ、上司命令だし行きますけど。

俺とソフィア王女は、ハイランド城まで出向くことになった。

「あれは……?」

ハイランド城前の広場に沢山の人が集まっていた。

どうやら晒されている『蛇の教団』幹部の首を見物しているようだ。

中には石を投げている人も居る。

……悪趣味、とは言うまい。

蛇の教団は『魔人族の解放』を謳った集団であり、その手段は過激な『無差別テロ』だ。

女神教会の影響力が強い『 太陽の国(ハイランド) 』や『 商業の国(キャメロン) 』はよく狙われ、罪の無い一般人が巻き込まれることも度々だったらしい。

家族が犠牲になってしまった人たちもいるだろう。

憎い仇の無様な姿を見て溜飲が下がるのであれば、それも意味があること……なのかもしれない。

見物人たちが会話している。

『聞き耳』スキルで、人々の会話を拾った。

「せいせいするな。なんど商売を邪魔されたことか!」

「ああ、勇者様と教皇様のおかげでだ」

「こいつらのせいで、何人の命が奪われたか……」

「しかし、教皇様もお優しい。どうせなら魔人族を全て根絶やしにすればよかったんだ」

「ほんとよねぇ。 月の国(ラフィロイグ) の『汚れた血』の連中を残せば、新しく蛇の教団の幹部が生まれるに決まってるわ」

「月の国なんて焼き払ってしまえばいい」

「こいつらのせいで、お父さんがっ……!」

「魔人族なんて、地上から居なくなれ!」

なんとも言えない気持ちになった。

蛇の教団は、魔人族によって構成されているが、全ての魔人族が『悪神』を信仰しているわけではない。

九区街(スラム) にいるシスターや子供たちは、太陽の女神様を信仰する温和な魔人族だ。

だが、一般の人々にとっては魔人族そのものが悪に見えるのかもしれない。

月の国(ラフィロイグ) は……フリアエさんの故郷だ。

廃墟の地下で細々くらしているという、フリアエさんの同郷の人たち。

彼らが安心して生活を送れる日はくるのだろうか……。

この件、イラ様に相談してみようかな。

そう思いながら、俺とソフィア王女は王城の門をくぐった。

「……すいません、勇者マコト。確かに訪問の 約束(アポイント) をしていたのですが……」

「ノエル王女の秘書が、 二重予約(ダブルブッキング) をしていたんですからソフィア王女のせいじゃありませんよ」

ハイランド城に行ってみると、面談相手のノエル王女が不在だった。

ソフィア王女が「どういうことですか!」と詰め寄ったが、「ノエル様は多忙だ。再度、日程を調整するように」とつれないものだった。

あっちのミスなのに、酷い話だ。

これが大国ハイランドの次期女王と、小国の王女の差か……。

仕方なく再度、面談の日程を確保したところ、指定された日程は数日後のものだった。

――俺たちはとぼとぼと、病室へ帰った。

「あら、お帰りなさい。マコト様、ソフィアさん」

「「え?」」

そして、俺の病室に戻ってくるとそこにノエル王女が居た。

どーいうこと!?

なんか、病院に随分たくさんの神殿騎士が居るなと思ったけど!?

全部、ノエル王女の 護衛(ボディガード) か。

「ソフィア王女と私の騎士に会いに来たらしいわよ」

フリアエさんが不機嫌そうに黒猫を撫でている。

ルーシーとさーさんも、流石にハイランドの次期国王と一緒で少し緊張気味だ。

「どうされたのですか!? ノエル様」

ソフィア王女が慌てて駆け寄る。

さて、俺が言うべき言葉は……。

「ノエル王女、『神の試練』の件、おめでとうございます」

「ありがとうございます、マコト様。ソフィアさん、うちの秘書が失礼しました。予定を切り上げて、こちらに来ました」

「そんな……恐れ入ります」

おお。

わざわざこっちを優先してくれたのか。

ソフィア王女が、恐縮してしまっている。

しかし、ノエル王女は本当に多忙のはずだ。

なんで、こんなところに?

俺が首を捻っていると、ノエル王女はニッコリ微笑みこちらに近づいて来た。

「マコト様」

「は、はい」

なんだ?

「大賢者先生の守護騎士になられたそうで……、先日の魔王討伐に続き、ハイランド城ではあなたの話題でもちきりですよ」

「そうなんですか……?」

それは恐れ入るなぁ。

まあ大賢者様、偉いから。

有名税か。

「リョウスケさんも、いつもマコト様のことを話しています。どうか、これからも一緒に大魔王を倒してくださいね」

ぎゅっと、手を握られ見つめられる。

ぽわんと、光に包まれるような錯覚を覚えた。

こ、これが『聖女』様のお力だろうか?

……後ろからルーシー、さーさん、ソフィア王女の冷たい視線が刺さっているのだが。

でも、相手がノエル王女だと遠慮しているようだ。

「善処しますね」

無難に答えておいた。

「絶対にですよ!」

さらにぐいぐいくる、ノエル王女。

ちょっと、近いっすよ!

さすがに距離を取ろうとして

「私の騎士に馴れ馴れしくしないでくれる?」

フリアエさんに引っ張られた。

「あら、 月の巫女(フリアエ) 。失礼しました」

「ふん」

ノエル王女が、フリアエさんのほうに 視(・) 線(・) を(・) 向(・) け(・) ず(・) に離れた。

「 太陽の国(ハイランド) には、優秀な勇者やら戦士は沢山いるでしょ。私の騎士は弱いんだから巻き込まないでくれる? 太陽の巫女(ノエル) 」

「ええ、勿論ハイランドが先頭に立って魔王軍と戦います。でも、みなで力を合わせるべきでしょう。あと今の私は『聖女』です」

「ふぅん、それがご自慢というわけ?」

「違います。そのような言い方をしなくともよいでしょう。フリアエ」

フリアエさんもノエル王女と視線を合わせない。

二人とも口調は冷静だが……。

少しギスギスとした雰囲気で居心地が悪い。

その空気を察したのか、話題を変えるようにノエル王女が俺に向けて微笑んだ。

「そうでした! 伝言があるんです、マコト様」

「俺ですか?」

「リョウスケさんが、マコト様に話があるそうです。一度会ってあげてください」

ノエル王女が、そんなことを言ってきた。

(……あれ?)

が、俺はノエル王女の言葉が引っかかった。

(桜井くん、結構ここに顔出すんだよなぁ……)

実は、ちょっと前にも俺の病室に見舞いにやってきた。

俺と雑談したり、フリアエさんやさーさんとも会話している。

その時は雑談しかしなかったが……。

『二人で話したい』ということだろうか?

「そういえば、今日は光の勇者様とご一緒じゃないのですね」

ソフィア王女もそちらの話題に乗っかる。

「ええ、リョウスケさんも忙しいですから。私もここしばらくは会えていなくて」

寂しげにノエル王女が微笑む。

おっと、そうなのか。

桜井くんとノエル王女は、すれ違い生活なんだな。

でも、桜井くんがこっそりここに来たことは、ノエル王女に言っちゃだめな情報だな?

さーさんを見ると「わかってるよね?」という目で合図を送ってきた。

わかってるって。

俺もその辺の空気は読んでるからね!

「あら? リョウスケならたまに、ここに来てるのに。ねぇ、私の騎士」

「げ」

おい!

フリアエさん、余計な事言うな!

あ、ノエル王女の顔から笑みが消えた。

フリアエさんは、わざとらしく「しまった」みたいな顔をした。

にゃろう、わざとやな?

「……フリアエ、今の言葉は本当ですか?」

「何も言ってないわ、忘れて頂戴」

「私は一週間も会っていないんですよ!?」

「そう、大変ね。同情するわ」

「なのに、あなたは会ってるんですか!?」

「ちょっと、手を掴まないで! 痛いわね」

「リョウスケさん! この女がそんなに良いんですか!」

ああ、ノエル王女が取り乱している。

「本人の前で言いなさいよ」

「……それは言えません」

「はっ、カマトトぶってると大変ね」

「見境なく魅了する人に言われたくないですね」

「は?」

「なんですか?」

フリアエさんとノエル王女が至近距離で睨み合っている。

これ以上はいけませんね!

「はい、姫ストップ」

「ノエル様、落ち着いてください」

俺とソフィア王女が、二人を引き離す。

この二人、本当に相性悪いなぁ!

桜井くんが居る時はしゃーないと思ったけど、居なくても駄目だ。

「失礼をソフィアさん。ではリョウスケさんと会ってくださいね、マコト様」

「は、はい」

ノエル王女は、優雅に微笑む。

俺はこくこくと頷く。

「…………ふふふ、リョウスケさん。今夜はじっくり話し合いましょうね」

去り際のノエル王女のつぶやきを『聞き耳』スキルが拾ってしまった。

あ、あかん。

ノエル王女が 闇落ち(ヤンデレ) してる。

桜井くん、すまない。

俺は心の中で、合掌した。

ソフィア王女は、ノエル王女を追いかけていった。

どうやら移動中に相談したいことがあるらしい。

多忙な人の時間を取るのって大変だなぁ。

こうして病室には、いつも通り平和な時間が訪れた。

(さて……俺の次のアクションは)

折角のノエル王女からの依頼だ。

こいつをとっとと終わらせてしまおう。

俺はおっとり刀で、ふじやんのもとを訪ねた。

「ふじやん、ふじやん」

「おや、何ですかな? タッキー殿」

「ひとつお願いしたいことが……」

――桜井くんと話せる場を。

今や『魔王討伐』の立役者である桜井くんの時間を確保することは容易ではない。

そこでふじやんに調整を頼んだのだ。

さすがのふじやんでも、これは時間がかかるだろうと予想したのだが。

「桜井殿のスケジュールは横山殿が管理してますぞ。『タッキー殿が逢いたがっている』といえば最優先で調整してくれましたぞ」

ということだった。

そういえば横山サキさんが、桜井くんの部隊の副官だっけ?

クラスメイトのコネ、強いなぁ。

翌日に、 約束(アポ) を取りつけることができた。

俺は、ハイランドの繁華街にある酒場の指定席で桜井くんを待った。

ガヤガヤとうるさいが、客層は悪くない。

変な輩に絡まれる心配もなさそうだ。

俺はだらだらとフライドポテトとソーセージをつまみに、 麦酒(エール) をちびちびと飲みながら待った。

桜井くんの話って何だろう……?

まさか、この前フリアエさんに(額に)キスされたのを見られた!?

いや、あれは俺のシマじゃノーカンだから……。

(そうなの?)

そうですよ、ノア様。

(刃傷沙汰には気をつけなさいよ~☆)

いやいや、無いですって。ないない。

……無いよな?

アホなことを考えていると――

「やあ、高月くん。お待たせ」

「や、やあ、桜井くん」

幾分、元気の無い幼馴染(光の勇者)が現れた。