軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18話 温厚な友人もたまには怒る

「タッキー殿!」

ドン! という音と共に空のジョッキがテーブルに叩きつけられる。

お、おお……。

あの温厚なふじやんが怒っている。

あれは、昔ゲームデータを間違って消してしまった時以来か。

なつかしいな、ってそんな場合じゃない。

何で、こーなったんだっけ?

「高月まこと様ー、居ますカ?」

とある日の昼ごろ。

冒険者ギルドの食堂スペースで、ルーシーと昼食をとっているところにやってきたのは、ふじやんのお店で会った店員さんだった。

ウサギ耳の人だ。

「まことくんならあっちですよー」

マリーさんが、案内してきてくれた。

「まことくんってこんな可愛いウサギ耳族の子とも知り合いなんだー?」

なぜかマリーさんが一緒のテーブルに腰かけた。

仕事しなくていいんですか?

「こんにちは、お久しぶりです」ウサギ耳の人に挨拶する。

「どうもー、マスターのご友人。フジワラ商店のニナと言います」

この子はニナさんと言うらしい。

「まことに何か用なの?」とルーシー。

もう少し愛想よくしなさい。

しかし、ニナさんは笑顔を崩さない。

「おや! あなた様は、高月様のお仲間のルーシー様ですネ! なんでも、凄い火魔法の使い手だとか」

「え? そ、そうよ。よく知ってるわね」

急に褒められて、ルーシーが戸惑っている。

ちょろいなぁ。

「いやー、将来の大魔道士様とお近付きになれたしるしにこちらを」となにやらお菓子を渡している。

マリーさんの分もあるようだ。

「わ! これ凄い美味しい」

「甘ーい。初めて食べるけどおいしい!」

ルーシーとマリーさんは、きゃっきゃっ言っている。

たぶん、あれはチョコレートだな。

さすがふじやん、そんなものまで仕入れてるのか。

「で、用ってなんですか?」ニナさんに尋ねる。

「そうでした! ご主人様から伝言を託ってまして。本日18時に、『猫耳亭』で食事をしましょうと」

「いつもの店ですね」

店員さんがみんな獣耳のふじやんのいきつけの店だ。

「ご都合いかがですカ?」

「そういえば1ヶ月くらい会ってないし、俺も会いたいかも。大丈夫ですよ」

「それはよかった。ご主人様が喜びマス」

「え? 私は今日どうすればいいのよ」

ルーシーが拗ねたように、こちらを振り向く。

別に、たまには別々でもいいだろと思ったが、そんな目で見ないでよ。

「よろしければ、お仲間のルーシーさんもご一緒にどうぞ」

ニナさんが誘ってくれた。

「私も行きたいー」

マリーさんまで、首を突っ込んでくる。

「マリーさん、仕事はいいんですか?」

「今日は、夜まで……」

「無理じゃないですか」

「まことくん、冷たい!」

ひどい~、と言いながらマリーさんは受付に戻っていった。

「それじゃあ、お店でお待ちしてますね」

ニナさんも帰って行った。

「ねぇねぇ」ルーシーが袖を引っ張ってくる

「なんだよ」

「フジワラ商店の店主って、異世界から来たやり手の商人でしょ? まことの友達だったのね!」

「ああ、ルーシー知ってるの?」

「何いってるのよ! フジワラ商店の店主って言えば、1年で数々の商売を成功させて、マッカレンの領主ともつながりがあるって噂よ。敵対する商人の弱みを次々に握って黙らせ、この街の裏の世界まで知り尽くしているとか。この街で逆らってはいけない人ランキング上位の大物よ!」

「へぇ……」

知らなかったな。

ふじやんに、この街の話を聞いても「いやー、大したことありませんぞ」としか言わないからなぁ。

どうやらチートスキルを使って、順調にのし上っているようだ。

「じゃあ、夕方まで修行しようか」

「ええー、今日はもういいんじゃない?」

「じゃあ、俺は一人で修行するよ」

「うそだから! 私も頑張るから!」

夕方まで、がっつり修行した。

「「「「かんぱーい」」」」

夕刻に、『猫耳亭』にて。

今日は、俺とふじやんとルーシー。

あと、店員のニナさんも居る。

ルーシーが、女の子一人にならないよう気を使ってくれたのかな?

ここの料理は美味く、お酒の種類が多い。

そして、店員が全員猫耳(の獣人族)。

俺には良さがわからないが、猫耳を差し引いても店員さんは可愛いと思う。

いつも混雑している店内の、奥の大きなテーブルに案内された。

ふじやんは、常連かつVIP客のようだ。

「は、はじめまして。魔法使いのルーシーです」

珍しくルーシーが緊張している。

「はじめましてですぞ。拙者は、藤原と申します。タッキー殿と同じくふじやんと気軽に呼んでくだされ」

「私はニナでス。フジワラ商店で雇われてまして、冒険者もやってまして一応、シルバーです」

と銀バッジを見せられた。

「凄いですね」

「いやいや、そんなことないですよ」

冒険者ランクで、ひとつの壁はシルバーと言われる。

アイアンランクくらいまでは、そこそこの冒険者なら頑張れば到達するそうだ。

シルバーランク以上は、強い魔物が現れた時に緊急クエストなどで呼ばれたりと、ギルドに信頼されていないとなれない。

謙遜しているが、ニナさんは相当強いはずだ。

「俺たちはブロンズランクです。がんばらないとな、ルーシー」

「わ、私は王級のスキル持ってるから!」

おいおい、変な意地張るなよ。

全然使いこなせてないことは、たぶん情報通のふじやんは知ってるぞ?

「いやー、しかしタッキー殿もやりますな。こんな美しいエルフの魔法使いを仲間にするとは」

「ささ、どうぞ。ルーシー様」

「ええ? あ、ありがとう」

ふじやんがヨイショして、ニナさんが酒を注ぐ。

ルーシーは、勧められるがままだ。

あー、これはすぐに潰されるな。

俺は、骨付き肉やらトマトソースのたっぷりかかったパスタ、ガーリックトーストを頬張った。

やっぱりここの店は美味いなぁ。

「まことはさ! ストイック過ぎるのよ!」

ルーシーが酔っている。

ルーシーが酔っ払うと、寝てしまうパターンと、荒れるパターンがあるが今日は後者か。

面倒な。

「毎日毎日、飽きもせずに修行ばっかりだし。そのくせして、マリーさんには言い寄られてるし」

「後半は関係なくない?」

親切にはしてもらってるだけだよ。

「でも、お二人の噂は聞いてますよ。ブロンズランクでグリフォン討伐は凄いですよ。私でも一人では勝てませんネ」

「あれはただのラッキーですよ。俺は火傷しただけだし」

「火傷!? この世界のグリフォンは火を吐くのですか」

「そうだよ。怖いね」

「まこと~、うそ言わないで」

適当なことを言ってたらルーシーにつっこまれた。

仲間の魔法で火傷したとか、かっこ悪いじゃないですか。

そんな感じで楽しく談笑していたのだが、最近仲が良いジャンとかエミリーの話になるとふじやんの表情がだんだん、険しくなっていった。

あれ? 何か変なこと言ったかな?

ぐいっと、エールを空にするふじやん。

「……」

無言である。

「ご主人様?」

ニナさんが困った顔をしている。

「ふじやん?」

口数が少なくなった友人に話かける。

ルーシーは寝ている。

落ちたか。

「タッキー殿!」

ドンっと空のグラスがテーブルに叩きつけられる。

「は、はい」

「なんで、拙者をパーティーに誘ってくださらないのですか!?」

「え?」

怒ってるのって、そういうこと?

「ずっと待ってたんですぞ! 強くなったらパーティーを組んでもらえると言ってたではないですか!」

「そ、そうだったかな……」

「マスターは、そろそろタッキー殿が来てくれる筈だと、いつもそわそわしてましたからね」

あちゃあ。

それは、悪いことしたな。

「寂しいでは無いですか。この街で、最初にお誘いしたのに」

「ゴメン、ふじやん。もう少しレベル上げしてからって思ったんだけど」

「高月様のレベルなら、簡単なダンジョンなら問題ないですヨ」

そっか、そうだよな。

なんだかんだ、経験値を積んできたんだ。

「ふじやん、よろしく頼むよ。元A組コンビで、パーティーを組もう」

「おお! その言葉を待ってましたぞ!」

がしっと、握手する。

あ、ルーシーに相談なく決めちゃったけど、良かったのかな。

まあ、いっか。