軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

99.マーゴン、皇帝の前で悪事を暴露される

冒険者ジークが、帝国の財務卿マーゴンを追い払った、数日後。

ジークは帝都の城を訪れ、皇帝サーシャの前にやってきていた。

「ジーク・ベタリナリだ。魔王国で王をやってる」

「サーシャ=フォン=マデューカスです。遠路はるばるようこそ我が国へ」

サーシャの魔王を見やる眼は実に穏やかであった。

しかし一方で、魔王の表情は冷たい。

「今日はどのようなご用向きでしょう?」

「実は、あんたのところの財務卿マーゴンに、二度も敵対行動をとられてな」

「二度、でございますか?」

ジークが皇帝に、先日の出来事を話す。

一度目は直接乗り込んできて、二度目は、冒険者ギルドにて。

「本当なのですか、マーゴン?」

わきに控えていた財務卿マーゴンは、「はて?」ととぼけた表情になる。

「二度目は記憶にございませんなぁ~?」

「なんだと……?」

「一度目は確かに無礼を働きました。陛下に下知され、魔王様のもとへ謝罪へ参ろうとしていたところ、貴方様がここにきたのですがぁ~?」

無論マーゴンの虚言であった。

冒険者を使っての討伐なんてなかったと、事実を隠蔽したのである。

無論あのとき作戦に参加していた冒険者たちは、マーゴンの権力を使って闇に葬った。

ただ仮面の男ジークフリートだけ、杳として行方知れずであったが。

「あくまでとぼけるつもりか?」

「とぼけるも何も、起きてないことにたいして事実を認めろというのは少々無理があるのではぁ~?」

にやにやと笑いながら、マーゴンは皇帝に頭を下げて言う。

「おそれながら、魔王は言いがかりを吹っ掛けてきているのだと思われます。適当な理由をつけ、われら帝国に嘘を吹っ掛けるおつもりなのでしょう」

ニヤニヤと笑いながらマーゴンが言う。

「もしもわしが嘘を言っているというのなら、証拠を見せてみろ。え? 証拠、ないだろそんなものぉ~?」

勝ち誇った笑みを浮かべるマーゴンに、ジークは一歩前に出て、【それ】を提示する。

「証拠ならここに」

「ふんっ! そんなものがどこ……って、え? えぇええええええ!? そ、その仮面はぁあああああああああ!?」

マーゴンは驚愕の表情を浮かべる。

魔王が持っていたのは、Sランク冒険者、ジークフリートのかぶっていた仮面そのものだった。

「どっ! どどどどうして!? なぜ貴様がジークフリートの仮面を持っているのだぁあ!?」

ジークが仮面をかぶり、アイテムボックスから取り出した黒いマントを羽織る。

仮面に黒マント。

それは、ちまたで有名なSランク新人冒険者。

「俺がジークフリート本人だからだ」

驚きのあまりマーゴンはフリーズしてしまう。

「……間抜けは見つかったみたいですね。わたしの判断ミスです。申し訳ございません、魔王様」

深々とサーシャ皇帝が頭を下げる。

「お、お待ちくださいサーシャ様!」

大汗をかきながら、マーゴンは目を泳がせながら言う。

「これは違うのです!」

「……見苦しい。もうおやめなさい」

「聞いてください! こいつは嘘を言っているのです! 魔王とジークフリートが同一人物である証拠がどこにあるというのですか!?」

「まあ、確かにそうだな。俺がそのジークフリートから仮面をかっぱらってきたかもしれないし」

「そうだろうぉ! 貴様の負けだ魔王ぅうう!」

だが、とジークは冷静に仮面に触れる。

パァ……! と仮面から光が発せられる。

その光は空中に、立体映像を映し出した。

「なっ!? なんだこれはぁ……!!」

「ジークフリートのもとをおまえが訪れた際の映像記録だよ。この仮面、録画機能までついているんだ」

映像は一人称視点、三人称視点の両方で映し出されている。

そこでは、仮面の冒険者に、マーゴンが魔王討伐を依頼している姿が、ハッキリと映し出されていた。

「……ち、ちがうのです……これは、これはぁ~……」

最後に仮面を脱いだ魔王の姿が映し出され、映像は終わった。

「さて、どっちが嘘つきだったのか、これでハッキリしたな」

「あ……ああ……」

ぺたり、とマーゴンがその場で尻餅をつく。

「……マーゴン」

サーシャは立ち上がり、冷ややかな眼で、彼を見下ろす。

「嘘をついたのは、あなただったのですね」

「ち、違うんです……陛下……これは……帝国のためを思ってぇ~……」

彼女は深々と、魔王に腰を折る。

「臣下が大変申し訳ございませんでした」

「あんたが謝ることじゃない。悪いのはこいつだろ」

「我が国を攻め滅ぼさないでくださるのですね。ああ、なんて慈悲深きお方……」

サーシャが頬を赤らめて、涙を流す。

うっとりとした表情で魔王を見やる。

「魔王様、すぐにこの男に罰を与えますので」

「へ、陛下……わたくしめは……ただ、帝国を守るために……」

「言い訳無用!」

ぴしゃりと叱りつけた瞬間、彼女の体から尋常ではない魔力があふれ出す。

それは氷の魔法となってマーゴンの体を凍り付かせる。

「マーゴン、あなたを国家反逆罪で逮捕する! 財務卿から外し、貴族の地位も没収! 兵士よ! この痴れ者を牢屋にぶち込んでおけ!」

皇帝の怒気に震え上がりながら、兵士達がいそいそと、マーゴンを運び出そうとする。

「そ、それだけはぁ~……ご勘弁ください陛下ぁ~……おねがいします、弁明を、弁明をさせてくださいませ~……」

「黙れ! 貴様の軽はずみな行動のせいで、われらが帝国が魔王様に滅ばされてもおかしくはない状況だったことを忘れたか! 慈悲深き魔王様のおかげでなんとかなったものを!」

帝国を滅ぼす大義名分を作った時点で、マーゴンは重罪だった。

「楽に死ねると思うなよ愚物が……」

「そんなぁ~……おゆるしください、陛下、皇帝陛下ぁ~……」

情けない声を上げながら、マーゴンは地下牢へと連れて行かれるのだった。