軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

65.大司教、皇帝より叱責を食らう

魔王ジークは、大司教グブツに捕虜を返還した。

数日後、神聖皇国にて。

一大宗教国家のこの国は、どこもかしこも白亜の建物、および神々の像が立ち並ぶ。

誰もが白い法衣のようなものを着ており、大司教を見ると誰もが頭を下げる。

「くそっ! 忌々しいジークめ! 魔物ごときの王のくせに、調子に乗りやがって!」

ギリギリと爪をかみながら、グブツは皇帝のおわす城へとやってきた。

帝城の騎士団を動かすためだ。

「神竜を奪われたと皇帝に知られては大目玉を食らう! その前にジークを殺し、神竜を奪い返せば良い」

大司教には団を動かす権限が与えられている。

とはいえそれは大型の魔獣や魔族などが出現した緊急時のみ、となっている。

「いや待てよぉ、ジークを半殺しにして人質にとるのはどうだ? さすれば神竜や魔物達も言うことを聞くだろうし……くくく、そうしてやるぜぇ。待ってろぉ珍しい獣たちぃ。残らずわたくしのコレクションにしてやるからなぁ~」

大司教はそのまま帝国騎士団総団長のもとへいく。

「これは大司教様。いかがなされましたか?」

総団長は女と見まがうほどの美丈夫だった。

「騎士どもをよこせぇ。全軍を率いて魔王国を攻めるのだぁ」

「なっ!? 何をいきなり。ふざけないでください!」

総団長が声を荒らげる。

「全軍の指揮権はわたしにあります!」

「黙れ平民上がりがっ! 緊急時の指揮権限は皇帝陛下より与えられておるぅ!」

つばを飛ばして声を張るグブツに対して、総団長は冷静に返す。

「捕虜にされていた部下から報告がありました。魔王国側は非常に丁重に扱ってくれたと」

すっ、と目を細めて総団長が言う。

「失礼ながら大司教、本当に新魔王は、悪しき存在だったのですか?」

「黙れ! 平民上がりが! わたくしに意見するなど100年早いわ!」

バキッ! とグブツは総団長を殴り飛ばす。

「さっさと騎士どもを集めろこのボンクラ! さもなくば貴様を更迭するよう皇帝陛下に具申するぞぉ!」

と、そのときだった。

「ほぅ、余に何を申し出ると?」

振り返るとそこに居たのは、40代の神経質そうな男がいた。

「こ、皇帝陛下……!」

「グブツ、貴様城にやってきたのに、余にまずは挨拶しに来ないとはなにごとかね?」

「そ、それは……そのぉ……」

「なにか、やましいことでもあったのか? ん?」

だらだら……とグブツは汗をかく。

「や、やましいことなど、あ、ありません!」

「そうか。では先日の捕虜返還については問題なく終わったのだな?」

「え、ええ! もちろん! つつがなく、完璧に!」

そうかそうか、と皇帝はうなずく。

「神竜王を魔王に取られたくせにか?」

「なっ!? な、なぜそれをご存じなのですかぁ!?」

皇帝は不愉快そうに顔をしかめる。

懐から杖を取り出して、軽く振る。

ぐしゃっ! とグブツは重力で押しつぶされた。

「この痴れ者がぁ!」

皇帝は憤怒の表情でグブツをにらみつけると、何度も何度もグブツを踏みつける。

「わが帝国の宝である神竜王を、貴様のミスで失ったのだぞ!? その損失がいかほどが貴様は理解しているのかぁ!」

「も、もうしわけございませぬぅ~……」

「誰の許可を得て見上げている! 頭を垂れて這いつくばれ、この愚物め!」

重力に押しつぶされながら、グブツが深々と土下座する。

「とっとと取り返してこいこの間抜け!」

「し、しかし……相手はかなりの手練れでして……」

「チッ……! 仕方あるまい。総団長、指揮権をグブツに渡せ」

黙ってみていた総団長が、焦りながら言う。

「こ、皇帝陛下。よした方がよろしいのでは? 魔王は話のわかる人物です。きちんと交渉と謝罪の場を設けるべきです」

スッ……とまた皇帝が不快そうに顔をしかめる。

重力の魔法が発動し、総団長はガラス窓を破って吹っ飛んでいった。

「グブツよ。余の名前を申してみよ」

「ハッ!【ゴミィディス】皇帝陛下にございます!」

「そうだ。歴史に神竜王を失った最大の愚か者と残されたら、貴様どう責任を取る?」

ゴミィディス皇帝は杖先を大司教に向ける。

「今すぐ、即刻、魔王国を潰せ。全団率いて、魔王共々、目障りな魔なる物どもを根こそぎ殺すのだ……!」

「は、ははー! 仰せのままにぃ!」

ふんっ、と鼻を鳴らし、ゴミィディスは冷たい目を向けていう。

「できなければ相応の罰を受けてもらう」

「しょ、承知しました! 必ずや! 魔物どもを皆殺しにし、神竜王を取り戻して見せましょう!」

「貴様の意気込みなんぞは何の価値もない。結果で示せ」

重力魔法を解いて、皇帝が立ち去っていく。

「くそぉお……! ジークぅ! 必ず殺してやる! 首を洗って待っていやがれよぉおお!」