軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44.国王、勇者に救援要請するが断れる

獣ノ医師ジークが魔族の大軍を退けた、一方その頃。

国王は、王城跡地に建てられた、仮設避難キャンプのテントの中に居た。

「さ、寒い……なんでこんなことに……くそぉ~……」

季節は秋の暮れ、朝夜はすさまじい寒さに襲われる。

しかもこんなペラペラなテントの布では、とてもじゃないが寒さはしのげなかった。

その上……。

「愚王を出せー!」

テントの外では、多くの王都民たちが集まって、国王へ罵声を浴びせていた。

騎士たちが守っているものの、彼らの眼には明確な、国王への怒りと憎しみが浮かんでいる。

「てめえのせいで住むところを失ったじゃねえか!」

「さっさと魔獣をどうにかしてよ! この無能!」

王都民たちのクレームは昼夜問わず続いた。

それも仕方のないことだ。

現在、王都は惨憺たる状況にある。

街を守っていた防壁が、神竜王によって消滅させられた。

国防用の使い魔の魔獣のみならず、街の外にいた魔獣たちも、街へ一気に流れ込んできたのだ。

魔獣の数は多く、また人手不足と言うこともあり、掃討することはできなかった。

できたのは王都の民たちを一カ所に集め、魔獣たちの猛攻をしのぐことのみ。

「いつまでこんな生活させるんだ! さっさと改善しろこの愚王がぁ!!」

外の寒さに加え、魔獣に襲われる恐怖、さらには仮設キャンプという劣悪な環境にすし詰めにされている。

これでストレスがたまらない方がおかしい。

怒りの矛先は、自然、この状況の引き金となった人物に国王に向けられた。

「王に向かって命令するとは何事か、この無礼ものどもが!」

国王もまた追い詰められ、精神的な疲労がピークに達していた。

髪の毛はストレスで抜け落ち、寝不足で目の下には大きなクマ。

さらに最近は家畜達の数が減ってきているせいで、まともに食事をしていない。

心も体も擦り切れてしまい、普段以上に気性が荒くなっていた。

「し、しかし陛下……このままではジリ貧です。何か打開策を講じなければ……」

宰相を見やり、ふん! と鼻を鳴らす。

「すでに妙案を思いついておる」

「で、ではついにジークを呼び戻すのですね!?」

「バカが! そんなことしたらあやつを追い出したわしの判断が間違いだったことになるだろう。そんなの認められるものか!」

「で、ではいかがなさるのですか?」

「人民の窮地を救う希望の星が、この世界には存在するであろう?」

「ま、まさか勇者に救援を要請すると……?」

「そうだ、人間のピンチを救うのは勇者の仕事ではないか」

国王は勝ちが確定したような笑みを浮かべる。

「なるほど! 今すぐ勇者とコンタクトを取れるよう手配します!」

「早くしろ、わしを待たせるな」

ややあって。

高価な通信用の魔法水晶を持ってきて、国王の前に置く。

魔力を込めると、水晶玉が光り出す。

「勇者よ。勇者【マケーヌ】よ。わが呼び声に応えるがよい」

水晶玉からザザッ……とノイズが走ると、若い男の声が聞こえてきた。

『は? 国王から通信……? ボクに何か用事でもあるの? 今忙しいんだけど』

「き、貴様! 相手が国王だというのに挨拶もできぬのか! 無礼者!」

『なにそれ。呼び出したのそっちじゃん。あーうっざ。通信切るわ』

国王は慌てて勇者マケーヌを呼び止める。

「実はおぬしに火急の依頼を頼みたいのだ」

国王は手早く、この国の現状を話した。

「頼りになるのはもうおまえだけだ、勇者マケーヌよ。今すぐ戻ってきて、魔獣どもを殲滅してくれ」

しばしの沈黙ののち、彼は言う。

『国王サン、ハッキリ言ってあげるよ。誰がそんなことするかよバーカ!』

「なっ、ば、バカだとぉ!?」

『魔獣の討伐? そんな雑用のために、魔王を倒す存在である勇者が出張るなんておかしいでしょ』

まったくもって、勇者マケーヌの言葉は正論だった。

『子供でもわかるような理屈がどーしてわからないのかね。あ、そっか、だからみんなから愚王って言われてるのか♡』

「う、う、うるさいうるさい! さっさと帰って魔獣どもを倒せ!」

『嫌に決まってんじゃん。それより神竜王かぁ~……いいね、そっちの方が興味ある。ぜひともボクの剣のサビにしてやりたいねぇ』

くくく、とマケーヌが笑う。

『神竜王を倒せば勇者としての名声もまた一段上がるってもんだよね。今獣人国にいるんだっけ。有益な情報どーもありがとね』

「ま、待て! お、王都はどうなる!?」

『知らないよバーカ』

マケーヌは通信を切る。

「お、おい! 勇者! 返事をしろ! おい! おぉおおい!」

いくら呼び出しても、勇者マケーヌは応じてくれなかった。

そのときだった。

「へ、陛下ぁああああ! キャンプにまで魔獣がなだれ込んできましたぁ!」

「な、なんだとぉお!?」

「もう限界です! 勇者にすら見捨てられたのでは、残るはジークを頼る他ありませぬ!」

ぐぎぎ、と国王は歯噛みする。

「陛下! お早いご判断を!」

「わかっている! くそ……! くそぉおおお!」