軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

216.

《チノSide》

時間は少し遡り……。

ジークが、竜王国スカイ・フォシワへと向かったあと。

ジークの妹チノは、魔王国で仕事をしながら、ふぅ……と悩ましげに息をついた。

「兄さん……」

コンコン、と扉がノックされる。

「チノ」

「ちーちゃん……」

人間姿のちーちゃんが、お盆を持って現れたのだ。

書類の山を見て、ちーちゃんはため息をつく。

「少し休んだら?」

ちーちゃんは多分だが、自分の心の中を察したのだろう。だから、休めと言ってきたのだ。

気を遣わせてしまったことに申し訳なさを覚えつつも、その気遣いを嬉しく思った。

「そうですね」

ちーちゃんがテーブルの上にクッキーとお茶を載せる。

チノはクッキーを摘まんで……一言。

「おいしいです」

「よかったー!」

……サクサクとした歯ごたえに、小麦と砂糖の甘さがあいまって、とてもおいしかった。

「これ、あなたが作ったのですか?」

「もっちろん!」

「料理……上達しましたね」

一時は酷かった。

ジークの弁当にネズミを入れたことさえあった(嫌がらせではなく、竜はネズミを食べる)。

でもあれから随分と、ちーちゃんは頑張ったようだ。

今では普通に、人間が食べて美味しいと感じるものを、提供できている。

そこにちーちゃんのジークへの思い……愛情が感じられて、すごいなと感心する。

「ねえチノ。あんた……さみしいんでしょ?」

「……お見通しでしたか」

「何年一緒に居たと思ってるのよ」

ちーちゃんは、ジークが拾ってきた竜だ。

幼竜だったちーちゃんを、兄が育ててきた。

しかし側に居たのは兄だけではない、妹の自分とも、側に居たのだ。

だから、チノが、思い詰めると、別のこと(仕事や勉強)に注力するようになると……。

その癖を知っていたからこそ、チノにさっきのセリフを吐いたのである。

まさにそのとおりだった。

「……兄さんが居なくて、さみしいです」

チノは兄を深く愛している。

本当は片時も離れたくないのだ。

でも……自由奔放な兄を束縛するようなマネはしたくない。

彼の迷惑になるようなことは……わがままは、いえないのだ。

ちーちゃんはあきれたようにため息をつくと……。

「お風呂いきましょ」

「え?」

「ほらっ」

ちーちゃんはチノの手を引いて、外に行く。

魔王国にはジークが作り、人も獣も自由に、ただで入れる温泉が存在するのだ。

「そんな風に悩んでたってしょうがないわ! 温泉に入って、ストレス発散しましょ!」

「ちーちゃん……」

同じ男を愛するものとして、一時はいがみあっていた二人。

だが……長い時間をかけて二人は和解したのだ。

ぶつかり合う、とりあうのではなく、こうして支え合う。

そんな風にできる相手が……できた。

それはうれしいことだった。

「ちーちゃん、ありがと」

「どういたしましてっ」