作品タイトル不明
189.世界一安全な場所
「ここが大穴の入り口なのです」
坑道脇にぽっかりと開いた、文字通り大きな穴がそこにはあった。
「瘴気が漏れ出ていますね。ここが原因かと」
「で、おチビ。本当についてくの?」
ちーちゃんが言うと、エナがこくりとうなずく。
「おとうさんを探すのですっ」
「よし、じゃあ俺の側を離れないって約束してくれるか?」
「はいなのですっ!」
いい返事だ。
「兄さんのそばなら安全ですね」
「同感です。世界一安全ですから」
うんうん、とちーちゃんたちがうなずく。
「よしいくか」
俺たちは穴の奥へと進んでいく。
「く、暗くて何も見えないのです……」
ごぉお……と風の通る音が、まるで獣のうなり声のように聞こえる。
「兄さん、明かりを」
チノが光魔法を使おうとするが、しかし発動しない。
「大穴は光すら食らってしまうのです」
「なるほど。兄さん、お願いします」
「了解だ」
俺は神魔の右手を発動させる。
聖なる光は周囲を明るく照らす。
「す、すごい……相変わらずすごい右手なのです、それ」
右手にかかればほとんどのことが何でもできるからな。
「黒獣が何体か来る。ちーちゃん、チノ」
「「りょうかい!」」
たっ……とちーちゃんたちが前に出る。
「あ、あの? なんでわかったのです」
「瘴気の流れを手で触れて読んだんだよ」
「もうなんでもありなのです……すごすぎる……!」
襲い来る黒い獣たち。
だがちーちゃんとチノが、魔法と打撃で一蹴した。
「ジークの付与魔法が効いてるみたいね」
「瘴気を分析して、それを中和する治癒魔法を作ってしまうなんて、さすが兄さんです」
「よし、奥へ進むぞ」