作品タイトル不明
177.事情聴取
ちなみに船は一時的に停止しており、救助者達は直した船で帰っていった。
正気に戻ったクラーケン達から、俺は事情聴取をおこなうことにした。
「なんで暴れていたんだ?」
『それが、我らもよくわからないのです』
大量のクラーケン達が、船の隣でしおれている。
その様子を、他の乗客達が遠巻きに見ていた。
「わからない?」
『はい、いつものように海を泳いでいたら、急に意識が遠のいて……気づいたら』
頭の良いチノも、それだけの手がかりで、怪現象の原因はわからないみたいだった。
「なにかそうなるきっかけみたいなものはないのか?」
『『『ううーん……』』』
大勢のクラーケンたちが首をひねる。
「く、クラーケン相手に普通に話してる」「す、すげえ……どうやってるんだ?」
「気にしちゃ駄目よ。ジークは特別だもの」
乗客たちをちーちゃんがなだめている。
『あ、そう言えば』
「何か心当たりが?」
クラーケンの一匹が触手を上げて言う。
『はい。群れで泳いでいたところ、【黒い獣】を見かけました』
「黒い獣……ですか」
チノが考え込む。
『黒い獣が我らに気づくと、口から黒い靄のようなものを吐き出していました。それを吸い込んだ後に異常が……』
「チノ。なにかわかるか?」
ふるふる、とチノが首を振る。
「それだけのヒントでは何も」
「ふむ……そうだな。じゃあ血液から調べてみるか」
「血液、ですか?」
「ああ、体内に取り込んで悪さをしたなら、その原因物質が血中に含まれてるかもしれん」
「しかし兄さんが浄化したのでは?」
「血を採取した後、血だけをさっきの状態に戻してみる」
チノが目を剥いて言う。
「そんなこともできるのですか……さすが兄さんです」
「もう何でもありね、ジーク。凄いけど、いや凄いけどさ……」
やれやれ、とちーちゃんが呆れたようにため息をついて首を振る。
「それじゃあ血液を……って、どうしたおまえら?」
クラーケン達がブルブル、と震えている。
『ち、血を採るのは……ちょっと』
『われら血、怖いので……』
するとそれを見ていた、乗客達は目を剥く。
「クラーケンが怯えている……いったいあのジークという青年は、何をするつもりなんだ?」
「きっとあの化け物を極大魔法でぶっ飛ばすのかも」
「いや、それよりももっと凄い破壊の力で粉々にするのかも……!」
「自分で治して、自分で破壊する……もはや神かなにか!?」
……なんか知らんが、いらん誤解を招かれていた。
「仕方ないわよジーク。あんな力を見たあとじゃ、ねぇ」
「兄さんすごいです! 皆に尊敬されてますよ!」
「いや尊敬されてないだろあれ……」
ともあれ、俺はクラーケン達から血を採取し、血中の成分を調べてみることにした。