軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迫る危機と三本目の矢を放つ俺

俺の予想は現実のものとなった。

《邪神の誘惑》の開始から六時間が経過。

丸太の向こう側の地面は死体で埋め尽くされ、地肌がほとんど見えない。あれだけ深く掘った溝も死体で埋まり、もう溝の役目を果たしていない。

あれだけ補強した丸太の柵もボロボロで、途中に何度補修をしたことか。

正直に言えば、この戦力差で、ここまでもったことが奇跡に近い。ゴーレム起動も既に三回やった。神像も二体は壊れ使い物にならなくなっている。

まだ滅びていないのは、こちらの踏ん張りもあるが……それだけじゃない。

長宗我部ができるだけ長く苦しむ俺を見たくて一気に攻めずに、あえてなぶり殺しのような手段で、じわじわと追い込んでいるのだろう。

村人たちはあれからずっと休むことなく戦い続けている。まだ日も昇らない時刻だというのに俺も、自然の神のプレイヤーも疲れ果てている。

新しい方のPCでネット通話をしているのだけど、聞こえてくるのは愚痴や弱音ばかり。

『もう、無理ですよ……。村人たちも限界ですって』

彼がそうこぼしたくなるのも無理はない。

実際に村人たちは疲労困憊で、まだなんとか動けるのはガムズを含めた十数名のみ。

建物内に避難していた村人たちも自ら見張りを買って出て、少しでも戦闘担当の村人を休ませようと頑張ってくれている。

チェムは怪我人の回復に魔力を使いすぎてしまい気を失ってしまった。

今はなんとか目を覚ましたが休憩所で寝転んでいる。顔色は紙のように白く、これ以上魔力を使ったら危なかったそうだ。

怪我人に関しては、この日のために作り置きしていた回復薬のおかげで、なんとかなってはいるが、満身創痍とはこのことだろうな。

今、こうやって戦況を再確認できるのは、向こうが何も仕掛けてこないから。

こちらに抵抗する力がなくなったことを確信して、総攻撃を仕掛けてくるに違いない。

まさに嵐の前の静けさ。

それを全員が肌で感じ取っているのか、疲れ果てた表情で地面に座り込んでいるのが大半だ。

まだ目に光が宿っているのは……ロディス一家、ガムズ、チェム、ラン、カン、ムルス。古参のメンバーはまだ誰一人としてあきらめていない。

それが何よりもうれしかった。

まだ彼らはこの俺――運命の神を信じてくれている。

「あきらめるのは村が滅んでからだ。それまでは決してあきらめたりしない」

『でも、もうどうしようもないですよ。あと数分で最後の攻撃が開始されて、僕たちは……ゲームオーバーに。練習もしましたけど、最後どれだけ敵が襲ってくるのか……』

自然の神である彼の弱気な声に、俺の心も折れそうになる。

マウスを握る手がかすかに震えているのは自覚している。でも、俺は。

不意に手の甲に感じる冷たい何か。

視線を落とすと俺の手にそっと手を添える、ディスティニーがいた。

俺の顔じっと見つめ、何度も頷いてくれている。

「相棒、ありがとうな」

ディスティニーの頭を撫でてPCに目を向ける。

暗かった画面が少し明るくなってきている。どうやら朝日が昇り始めたようだ。

現状は勝ち目のない戦いにしか見えないが、俺には秘策があった。

だけど、それが実行されるかどうかは――神のみぞ知る。

《邪神の誘惑 最後の襲撃‼》

耳障りな音と画面を占領する赤い文字が何度も点滅をする。

とうとう来たか、最後の戦いが!

柵の向こうに広がる、死体で埋め尽くされた大地が朝日で照らされる。

徐々に登りつつある日の光をバックに、今までとは比べものにならない数の群れが、ゆっくりと村へ向かってくるのが映っていた。

百、二百、いや、そんなもんじゃない!

数え切れないほどのモンスターの群れ。

相手にしてみれば、ここで戦力を惜しむ必要はない。全戦力をぶつけるのは当然だ。

『ど、どうしましょう! も、もうダメですよ!』

うろたえる彼の声を聞きながら、俺は待っていた。

その瞬間がくるのを――

不意に着信音が響く。登録していない電話番号だが、誰からかは予想がつく。

早朝のこんな時間に、このタイミングで電話してくる相手なんて……一人しかいない。

PCで通話中の彼にも聞こえるようにスピーカーホンにして通話を許可した。

『追い詰められた気分はどうだい?』

この嫌みったらしい声はユートピーの社長、長宗我部で間違いない。

「絶体絶命って感じですね」

『えっ、誰ですか⁉』

『おや、誰かいるのかい。もしかして、ダークエルフの村のプレイヤーかな?』

すぐに感づいたか。

まあ、この状況で秘匿義務があるゲームに関わっている人物となると、答えは一つしかないけどな。

『こちらは今攻めてきている邪神側のボス。そしてこっちは自然の神のプレイヤーだ』

隠す必要も無いので両方に教える。

『えっ、敵のボスがどうして……あっ、そういえば前に……』

長宗我部との因縁は簡単にだけど彼には伝えている。

なので察してくれたようだ。

『やはり、組んでいたのか。二人揃っているのであれば丁度いい。今から蹂躙を開始するんだけど、最後に言い残すことはないかい? これでゲームの記憶もなくなってしまうのだから、私だけでもその悔しさを覚えてあげようという慈悲なんだけどね』

『あ、えと、撤退してくれるとかいうのは』

『無理だね』

『うっ』

懇願をあっさり拒否されて、自然の神のプレイヤーは黙り込んでしまった。

『キミは何か言いたいことはないのかね?』

おっとその質問をしてくれたか。

ちらっとPCに目を向けると、モンスターたちは動きを止め律儀に待ってくれている。話し合い中に攻める気はないのか。

「そうだな。素朴な疑問なんだけど戦いに勝利した後、参加している社員の人たちはどうするんだ。ボーナスでも出すのか?」

『そんなくだらない質問でいいのかい。あいつらにはボーナスと休暇を与える、とは伝えているけどね。でもまあ、そんなの口約束だけど』

口約束?

あの何かを含んだ物言い。これは……俺は静かにマウスを掴みクリックする。

「おいおい、今日も徹夜までさせてこき使ったんだろ?」

『まあね。今日まではよく頑張ってくれたよ。でも、もう必要ないし。私は彼女を手に入れる手段として、キミを倒すために彼らを集めたんだよ? 部下たちが邪神側のプレイヤーとはいえ、目的を達したら用なしだろ。理由をつけてクビにでもするさ』

酷い話だ。

自分の欲望に忠実で、他人を駒としか思っていない。

俺が社員ならこんなヤツの下で働きたくはない。

「つまり仲間を騙して裏切るのか」

『人聞きの悪いことを言わないでくれよ。それに騙される方が悪いって昔から言うだろ? 俺には神から与えられた運の奇跡があるからね、あんなヤツら必要ないさ。経費は削減しないと』

絵に描いたような自己中心的な男だ。

「そんなことして恨みを買って、本拠地を襲われてもしらねえぞ」

『同じ邪神側のプレイヤーの拠点を攻めることは禁止だよ。裏切られたところで、なーんにも困らないからね。私にとってこのゲームはリアルで成り上がるための手段にすぎない。これで精華さんを手に入れたら、望みは完遂だ』

それを言い切るとはいい性格してるよ。ここまでいくと感心する。

だけどアイツの言う通りだったな。勝ち誇って調子に乗っているときは口が軽いから、簡単に内情をバラしてくれる、か。

眉唾だったけど、ここまで都合よく暴露話をしてくれるなんて。

「あんたのところにも部下という三本の矢はあったのに、一本も束ねられてないんだな」

『いきなり、何を言っているんだ? 追い詰められて、頭がおかしくなったのか。やれやれ、同情するよ』

ため息交じりにバカにしているが、特に気にならない。

ここでその例えを出したのには意味があるからだ。

思い出すのも恥ずかしいが、長宗我部を三本の矢の逸話で有名な毛利元就という戦国武将と間違えたことがある。

そのときに俺と自然の神のプレイヤーを、二本の矢と例えた。

当時の俺たちはあの逸話のように三本の矢には一本足りなかったが……ここで三本目の矢を放つべきだ。

今こそ、一矢報いるチャンス!

「その言葉が聞けて助かったよ。……ねえ、社員の皆さん」

俺はさっきマウスを操作して繋げておいた、もう一つのネット通話用のマイクに向かって話し掛けた。

『口が達者なゲス野郎だとは思ってたけど、ここまでとはね』

『はあ、おいしい話はそうないものですね。また就活か……元の会社に戻るのは難しいし、困ったな』

PCのスピーカーから流れてくる男女の声。

『あれっ? 今度は誰の声ですか?』

あえて説明をしていなかったので、自然の神のプレイヤーが戸惑った声を出している。

今聞こえてきた新たな人の声は、もう一つのPC通話だ。俺は今、スマホと二つのPC通話をフル活用していた。

『今の声は、まさか……なんで、うちの社員と通話が繋がっているんだ! どういうことだ! 答えろ!』

長宗我部は現状を即座に理解してくれたようだ。

「どうもこうも、ネット通話でそちらの社員さんと繫いでいるだけですよ。社員の皆さんは会議室にまとめて放り込まれて、自分は優雅に社長室ですか。一緒にプレイしていたらこんなのすぐに気づいたでしょうに」

話の途中でマウスを操作して、向こうへこちらの会話が筒抜けになるようにしている。

『なっ、いや、待て。いつの間に、お前はうちの社員と連絡を取り合う仲になった! まさか、お前ら裏で手を組んでいたのか!? いや、だが、連絡が取れたとしても……お前のような元ニートに力を貸す理由はない!』

「まあ、そうですね。でも裏切るに値するメリットがあるとしたら?」

邪神側のプレイヤーを寝返らせるのに有効な手段がある。

それを提示したらあっさりと一人のプレイヤーが裏切ってくれた。

俺がそのプレイヤーに連絡を取ったのは、運命の女神に電話した直後だ。

――時は数週間前に遡る。

運命の女神との電話を終えて、一息つきたい気分だけど、まだだ。

机の隅に置いてあった財布を手に取り、そこから一枚の名刺を取り出す。

そこに書かれている名前は――羽畑。

相手はフェリーでの交渉や北海道でカーチェイスをした、あの邪神側のプレイヤーだ。あの時、羽畑からもらった名刺を取り出して確認した。

名前と電話番号が書かれた名刺。ご丁寧にメールアドレスまで記載してある。

「どうすっかなー。この番号が本当だとは限らないけど繋がる気がする」

向こうから直接俺に接触するのは神同士の話し合いによって禁止されたが、俺からの接触は規制されていない。

神から多くの情報を得たことで、心置きなく羽畑に電話をすることが出来る。

ペットボトルのお茶を飲んで喉を潤してから、名刺に書かれた電話番号を打ち込む。

「これはこれで、また違った緊張感があるな」

だけど、神様と話すことに比べたら楽なもんだ。

そう自分に言い聞かせて相手の反応を待つ。

呼び出し音が繰り返され、あと五秒待ったら切ろう。そう決めてカウントダウンを始めると……声がした。

『まさか、あなた様からお電話を頂けるとは思いもしませんでしたよ』

電話からでも伝わってくる慇懃無礼さ。

間違いない、羽畑だ。

「お久しぶりです。その節はお世話になりました」

『皮肉の効いたいいカウンターですね。あの頃よりお強くなられたようだ』

なんでこの人は喜んでいるんだ。飄々とした態度は相変わらずだな。

まずは通話できたことに安堵しそうになったので、気を引き締める。

「無用な前置きは必要ないと思いますので、単刀直入に言いますが……禁断の森から手を引きませんか?」

『ほほう……。少し見ない間に冗談が上手くなりましたな。そもそも私が禁断の森に手を出している証拠でもあるのですか』

「いや、あれだけ襲ってきているのに、今更そこをとぼけられても困るんですが」

この数ヶ月《邪神の誘惑》のタイミングで村を襲っているのは羽畑で間違いないはずだ。

確たる証拠は何もないが、毎回モンスターの顔ぶれが同じなんだよな。

『私が金欠でモンスターをまともに雇えず、毎回ワンパターンな攻撃で村を襲っている犯人だと言いたいのですね』

「もうそれは自供しているようなものでは」

『おや、これはしてやられましたな。あっはははは』

この陽気な口調での返し。口を滑らせたにしてはわざとらしい。

元からとぼける気もなかったということか。

「くだらない言葉遊びはやめませんか」

『これは失礼しました。それで私が襲っていると仮定して話を進めますが、対戦相手に撤退を求めるのはどうかと思いますよ? 私にメリットはありませんし』

「羽畑さん、最近になって禁断の森で他の人と組んでますよね? それも複数人と」

まだ情報不足もいいところだが、俺は複数人という可能性に賭けてかまをかけた。

敵の拠点を襲った際に多種多様なモンスターがいて、そこには今まで何度も手を出してきた羽畑が操っているモンスターの姿もあった。なので、その可能性は高いはず。

それに俺は彼の姿をある場所で目撃した。――ユートピーの社内で。

あれは偶然でもなんでもない。

おそらくだが、長宗我部社長が俺の村を襲っているプレイヤーの一人だ。

確信はないが精華への強引な勧誘や妹の務めている会社との繋がり。すべて偶然というには無理がある。

これが運命の力なのかどうかは定かじゃないけど。

長宗我部社長は俺の村を何度も襲っていた羽畑と接触して、社員として招き入れた……という大胆な仮説を立ててみた。

間違っていたとしても俺が恥を掻くだけですむ。

『……本当に面白いことを仰る。続けてください』

肯定も否定もしなかったな。

陽気だった声のトーンが落ちた。真面目に話を聞く気になったか。

「そっちを裏切る気はありませんか? といっても邪神側のプレイヤーと戦ってくれなんて言いませんよ」

単刀直入に切り出す。

回りくどく口説くより、目的をハッキリさせた方がいいだろう。

……というより、長年ニートだった俺にそんな交渉術は身についていない!

『裏切る、ですか。それも戦闘をお望みでない、と。もしや、組んでいるところの情報をそちらに流せというところですかな。スパイ活動みたいで楽しそうですね』

声の感じは乗り気に聞こえるが、この人は曲者だからな。油断するとこっちが取り込まれかねない。

「情報を流す程度なら、羽畑さんにデメリットはないと思うのですよ。それに組んで主神側の村を襲ったところで利益率は低いのでは? 分配率は知りませんが、どうしても一人当たりの儲けは減りますよね。そこで、もっと簡単に安全に楽に稼げる方法があるとしたら?」

『それはそそる申し出ですが、先ほども言いましたが仮に私が裏切ったとしてもメリットはないように思えるのですよ』

「メリットはあります。あなただけが確実に儲かる提案をしますので」

『それは興味深い。詳しいお話を是非』

食いついてきたか。

この人が金にだらしなく、何よりもお金に執着しているのは前の接触で理解している。

信用が出来ない相手だけど、金に対する依存度が高いのは邪神側プレイヤーの特徴だ。そこを刺激すれば……。

「ではもし裏切り情報を流してくれるのであれば――」

これで三本の矢が揃った。

――羽畑に裏切りを提案したら、ほいほいと乗ってきて今に至る。

あれから数回連絡を取って、邪神側の情報をかなり手に入れられたのは大きい。向こうがモンスターを操作するときの決まり事やルール。それを知り、この策を練ることが出来た。

その時はまだ長宗我部社長が敵勢力のボスだという確信はなかったが、羽畑が徐々に情報を公開して確信へと変わる。

だから、休憩室で暴露されたときは驚いた振りをしていたが、内心では動揺していなかった。……精華狙いだったのは予想外だったけど。

「俺がそちらのプレイヤーに提供したのは」

そこで自然の神のプレイヤーと繋がっている、PCマイクのスイッチをオフにした。

「ダークエルフの村ですよ。抵抗しないから、単独で奪ってくださいと」

彼らを俺の村に招き入れることで、あの村を守る人員はいなくなった。そこで羽畑が少数を率いて村を占領したのだ。

引っ越しをすすめたのも、これがあったから。

自然の神には悪いが、これ以外に手はなかった。

『なんだとっ! あの村はここを落とした後に落とす予定だと、あれほど言い聞かせていたのにっ……』

「先に向こうの村に手を出されていたらアウトだったけど、俺にご執心で助かったよ。挑発したかいがあったってもんだ」

無理をして自分のキャラに似合わない態度で接してきたが、思いのほかうまくいったな。

これも羽畑から長宗我部についての情報を得られたおかげだ。

『おい、羽畑! 私の命令に従わなかったこと、タダで済むと思うなよ!』

『おー、怖い怖い。自分は私たちを見捨てるつもりだったくせに、よくもまあ。あなただってわかっているでしょ。邪神側のプレイヤーは金に欲深い連中ばっかってことは。それにね私が一番嫌いなのは他人の幸福なんですよ。あなたのように、何もかもうまくいって恵まれている人を見ていると虫唾が走るんですよ。同じ邪神側でもね』

怒鳴り声をものともせずに羽畑は鼻で笑う。

この人の性格も相当なものだ。一生仲良くなれそうにない。

実は羽畑が寝返る際に、残りの邪神側プレイヤー二人をどうするかで悩んでいた。長宗我部が自爆してくれたので、予定と違う展開に転がり、想像以上の成果を収められた。

本来なら、事前に根回ししてくれていた羽畑が、ダークエルフの村を占領して得た金を使い説得する、という流れだったのだが。

『はなから裏切るつもりで……。まさか、今回の襲撃は社員の我々にお任せください、と調子のいいことを言って俺の金で戦力を増強したのも……』

『あ、やっと気づきました? あなたは油断して自分の戦力を減らす。我々は懐を痛めず経費で戦力増強。ちょろすぎて爆笑ですよ。じゃあ、そういうことで、私たちは撤退しますね。いやー、他人の金で戦力が増やせて、あぶく銭も手に入った。満足満足。お疲れ様でした』

『待て、待つんだ。話し合おうじゃないか! おい、社長命令だぞ!』

怒鳴り散らしているが既に通話は切れている。

羽畑の言ったことを証明するように、村の前に迫っていたモンスターの大半が退いていく。残ったのは長宗我部の召喚したモンスターだけ。

他の社員たちも社長に対する義理がなくなり、これ以上自分たちの戦力が減るのはもったいないと判断してくれたようだ。

『くそっ、無能共が調子に乗りやがって。バカ共が、まだ会議室にいるな。……このビルから出られると思うなよ。警備員を向かわせたからな!』

たぶん、社長室のモニターで会議室の様子を覗き見していたのだろう。裏切り者たちを捕まえるために指示を出したようだ。

……残念ながら、それは無駄に終わると思うよ。

少し落ち着いて声の調子が戻ったと思ったら、直ぐさま聞こえる怒鳴り声。

『おい、どういうことだ! 羽畑たちが会議室にいないだと!? 馬鹿を言うな! カメラにはあいつらの姿が映っているぞ!』

それは羽畑の奇跡の力による幻だ。

俺がフェリーや北海道で見せられた幻を作り出す奇跡。

会議室に全員がいるように見せかけて、初めから社員は別の場所にいた。

「だから、社員と一緒にプレイしておけば見破れた、って言ったのに」

『くそっ、くそったれがっ! どういう仕掛けかは、この際どうでもいい! どうせ、あいつらはクビにするだけだ! だがな、勝ったつもりのようだが私の戦力だけでも、弱り切ったお前らの相手にするには十分!』

それは間違いじゃない。

数がかなり減ったとはいえ、まだ百近くのモンスターが残っている。それも緑小鬼なんて雑魚ではなく、もっと強力な個体ばかりだ。

最後尾にいるのは……赤い肌の見るからに凶悪そうなドラゴン。

村人は戦力として期待できない状況で《ゴーレム召喚》だけでなんとかやれるのか。それに加えてポイントもほとんど残っていない。

稼働時間は長くて五、六分がいいところ。

それでも俺は、勝利を掴んでみせるっ!