軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

同席をかけた戦い③

ゴルフ大会の一ホール目の脇にある実況席で、継続してウルペクラと界王配下コンビが進行を行っていた。

『これで、三組が一ホール目を終わらせて次は四組目っすね』

『皆さん結構ちゃんと力加減で来てる感じですが、まだ一発で入れた人はいないですね。あと、グリーンでしたっけ? あの穴があるところに乗せてから苦戦してる割合が多いですね。ベラはどう思う?』

『たぶん、ある程度の距離を飛ばしたりするのは比較的力加減をもやり易いんだろうけど、コツンって当てて転がすのはかなり繊細な力加減が必要なんじゃないかな? 実際三組目の人たちは、直接カップに入れようとしてる感じだったし……』

ここまでで既に三組十八人が最初のホールを終えて二ホール目以降に進んでおり、次の四組目で半分という状況だ。

ここまでくると前にプレイした面々を見て、ある程度対策などを立てて望んでおり、グリーン上のパットが難しそうと判断した三組目のプレイヤーたちはチップインやホールインワンを狙う方針に切り替えているようだった。

『戦略としては別に間違ってはねぇっす。チップインやホールインワンができるなら、当然狙ったほうがいいわけっすし……でもまぁ、初めての競技でそこまで繊細なコントロールができるかって言うと難しそうっすね』

『結構駆け引きがある感じですか~見ている私も手に汗握りますし、口に入れるお菓子も止まりません』

『なんでフィナンシェ食べてるの!?』

真面目な様子で解説をしているかと思えば、いつの間にか脇にこんもりと山積みにしているフィナンシェをパクパクと食べ始めたベラを見て、思わずクレアがツッコミを入れる。

『長丁場なわけだし、実況解説にもエネルギーの補給は必要。これは当然の権利行使だと思う』

『夕食食べる宣言して、デザート大盛り要求して、いまおやつも食べてるって、ただの食いしん坊では?』

『いっぱい食べる私が好き』

『ただのナルシスト!?』

『ほら、私はクレアより消費エネルギーが多いから……ね?』

『誰の体が抵抗を極限までカットしたエネルギー効率抜群の流線形エコボディじゃ!!』

『そ、そこまでは言ってないんだけど……』

例によってコントのようなやり取りをするクレアとベラを見て苦笑しつつ、ウルペクラは尻尾を動かして流れるようにベラの脇に置いてあったフィナンシェを数個奪い取って口に入れる。

『さて、次の組は誰っすかね~』

『……え? なんか、もの凄く自然におやつ盗られた……』

唖然とした表情でウルペクラを二度見するベラだったが、ウルペクラは特に反応せずに司会進行を続けていく。

そして、四組目の一番手としてティーングエリアに立ったのは、六連星のひとりであるシリウスだった。やる気に満ち溢れているのか、普段は二本以外は隠している六本腕を全て出し……各手にひとつずつクラブを握っていた。

『……なんであの馬鹿はクラブ六本持ってるんすか?』

『ろ、六刀流だから……?』

『打つボールはひとつなんすよ。あんな馬鹿みたいな状態でどうやって打つ気なんすかね』

六椀を生かし、クラブ六刀流という……おそらくまるでなんの意味もなく、今後の真似をする者は現れないであろう状態となったシリウスは、静かにクラブを構え凄まじい速度で振るった。

魔界でも屈指の剣士であるシリウスが振るったクラブは、六つの斬撃を作り出し……ボールとティーイングエリアを幾重にも切り裂いた。

『……誰か~その馬鹿にルール教えてやってくれねぇっすか? ボール壊して、コース壊したのでプラス四打の上で打ち直しっす』

「ふっ、その程度は理解している。これまでの者たちの様子を見て、ボールはより小さい方がカップに入れやすいと判断したまで! この程度のペナルティは必要経費というやつだ!」

『言っときますけど、新しいボールで打ち直しっすからね。切り刻んで小さくしたから、小さいままで進行とかじゃねぇっすからね』

「……え?」

よくよく見ると、シリウスは六本のクラブを使って器用にボールをカットして半分ほどのサイズまで縮小していたのだが、当然そんな行いが許容されるはずもなく、唖然とするシリウスの前に新しいボールが用意され……失策を理解したシリウスは、一本のクラブで普通にボールを打った。

無駄に四打ペナルティを貰うだけという結果になり、意気消沈するシリウスの元に、明らかに煽り前回という様子で次のプレイヤーであるラサルが声をかけた。

「クカカカ! おイ、虫女……お前にピッタリな異世界の格言を教えてやろウ。『馬鹿の考え休むに似たり』……頭の中まで筋肉の馬鹿が無駄に策など講じたところデ、それはなにも考えてないのと一緒というわけダ」

「……黙れ死肉、腐臭をまき散らさないようにここで八つ裂きにしてやろうか?」

「……ア?」

「……は?」

『誰っすか、この馬鹿とアホを同じ組にしたのは……そこ、喧嘩始めたら失格にするっすからね』

例によって睨み合い一触即発の空気になるシリウスとラサルに対し、ウルペクラが呆れた様子で喧嘩を始めたら失格と告げ、シリウスは舌打ちをしてティーイングエリアから離れ、ラサルは打つ準備を行う。

手に持っていた巨大な棺桶を開くと、中から出てきた人間サイズのスケルトンがクラブを持って静かに構える。

『……こら、アホラサル、なにスケルトンに打たせようとしてるんすか』

「ルールに人間の力量に合わせたスケルトンを代打として使ってはならないとは記載は無かったゾ」

『そのスケルトンに代打させて、仮に優勝したら、アイシス様と同席するのはそのスケルトンにするっすからね』

「……チッ」

力加減の難しさへの対策として、人間族と同じ力のスケルトンを作り出してそれを操作して打とうとしていたラサルだったが、ウルペクラによって阻止される。

反論しても面倒なだけだと、ラサルはスケルトンを収納し……棺桶を振りかぶってボールを打った。

『棺桶で打ったよ、ラサルさん』

『でも、結構いいとこ飛びましたね。これが死霊術師打法……』

クラブの代わりに棺桶で打つというのは奇妙な光景ではあるが、別に棺桶だから打ちやすいとかそんな訳もないので、特に反則やペナルティにはならなかった。

そして、ラサルがある程度器用なこともありなかなかの力加減で、グリーンの少し手前、チップインを狙いやすい位置にボールは落ちた。

『なんか、濃い組っすね。次は……』

『ふははは! 次は小生の番であります!!』

『なんで、馬鹿とアホの次がポンコツなんすか……四組目は問題児の寄せ集めっすか?』

『酷いっ!?』

ラサルに次いで現れたのは三メートル越えのゴーレムであるリゲルであり、それを見たウルペクラは心底呆れたような表情で呟いた。

なお、そのリゲルの次に順番が回ってくるスピカは、のほほんとした顔で空を眺めており……『風が気持ちええなぁモード』に入っているようだった。