軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

逆転令嬢リリアンヌのもっと楽しい!?義実家訪問〜アーランデ国でも暴れちゃいます〜5

たくさんの人の声がする。

状況の悪さを悟ったか、ターネルはその場から走り去った。

私は土籠の中で待っている。変に術式を解くよりはこの方が安全だ。火柱の火はこちらまで来ないようだし。

誰が一番乗りかなぁとのんきに考えてたら……フィニアスでした。

その後ろにまたもや同じ顔をした男性。第四王子様だなぁ。

フィニアスの姿が見えたところで、土籠を解除する。

「リリアンヌ! 大丈夫か?」

ぎゅっと抱きしめられるけど、それより気になることが。

「私は。イライジャが大変かもしれません」

「リリアンヌ様!」

多分出口まで一直線だった二人の護衛騎士がやってきた。

ごめん、ごめんよ。多分めちゃくちゃ怒られる。ごめん。怒ったフィニアスホント怖いの。ごめんね、なんとか誤魔化さねば、彼女たちの命が危ない。

「私は大丈夫よ。フィニアス、どうやら護衛が分断されたようなのです。あれはイライジャの火柱です。早く行きましょう!」

「あちらにはここの警備の者が行ったから大丈夫だ。それよりもリリアンヌ嬢がなぜ土籠に」

「相手に攻撃するわけにはいかなかったので」

ふふふと笑うとフィニアスとエブレンは顔色を変えた。

よし、このまま護衛騎士二人が怒られないようそっちに意識向けて行こう! 全部あっちのせいにしちゃおう!

「ターネルか」

私ははっきりとは言わない。

だって、私の肩を抱くフィニアスの手にめちゃくちゃ力入って来てて怖い。

「何を言われた?」

「……ここで聞きますか?」

ちょっと落ち着いてもらいたくてそう言うと、エブレンはそうだなと、私たちを宮殿に誘った。

イライジャはめちゃめちゃ暴れてた。相手五人もいたらしい。

女性騎士の二人は出口まで全力だったので、私たちが全然来なくておかしいなってことで引き返し始めたところだったそう。そこへ妨害が現れた。多少戦闘したようで、よかった。誤魔化しやすい。

フィニアス怖いからね。四人で共謀して出口まで誰が一番か選手権は黙っておくことに。

第四王子、エブレンはずいぶんと謝罪してくれた。ターネルはこの件はまったく知らないと言い張っている。それで本当に通用するとでも思っているのだろうか。表向きは通用してしまっているが。

しかし、焦っているのだなとわかる。魔力と赤目の楔にがんじがらめなのだ、この国は。魔族という種族柄なのはわかるが、大変だろうなとも思った。

「フィニアスも赤目がなくて苦しんだ?」

私の部屋のバルコニーで、夕食の後に少し話すことになった。

「ん? そうだなぁ。私の場合は魔力があったせいで私自身というより周りだね。母上はそれほど気にしていなかったから、そこは救われたが。ターネル様はそうはいかない。第一妃の王子。しかも一番年長者だ。本来ならほぼ反対する者がいない状態で次期王候補となっていたのが、魔力と目がなかったんだから。本人もだが、王妃の衝撃がすごかったそうだ」

「ただね、魔力は増やせる。だろう?」

「そうですね」

「私は生まれながらの魔力量が多かった。だけど、ほら、今はリリアンヌの方が多いだろう? 魔力は努力次第で増やせる。魔力だけならターネルだって増やせたはずなんだよ。覚えてる? 私の祖父が、赤目でなくても王位を継げるようにしたという話。ターネル様が魔力を増やしていたら、私とターネル様、二人も魔力量だけはある王位継承者候補がいれば、きっと通っていた。結局努力なんだよ。手に入れるために努力すること」

そう言って私の髪をすくって口づけた。

「私は王位継承権を手に入れるために努力する気はなかった。だから、赤目がなくて苦しんだ覚えはあまりない。でも、リリアンヌ、君を手に入れるためにはたくさん努力したし、飽きられないようこれからも努力するよ」

「……最近どこかで聞いた台詞です」

「シュワダー・レフサーは心の師だからね」

この間一緒に見に行った観劇だあああ!!!!

朝から、いや、夜明けから叩き起こされ、アイリーン妃に派遣された使用人たちにこねくり回された。お肌もつるぴかだし、髪の毛もそれは素晴らしく結い上げられ、……疲労困憊。

「女性の準備は大変だと聞いていたけど、大丈夫かい? 座れるだけ座って休んでいてくれ」

本当はベッドに寝転んで一時間ほど眠りたいけど、髪の毛もドレスも乱れるので許してもらえない。

ソファに座ることすら、私をここまで仕上げた使用人たちの眉がピクリと動いて圧がかかる。

「ああ、私の可愛いリリー、今日の姿はまた一層美しい。その……その、空色のドレスもとてもよく似合っているよ」

後半言いよどむのやめてあげてくださいアシュリーお兄様。

「あら、イヤリングは持ってきたものと違うのね」

お母様の言葉に私は頷く。

「アイリーン様にいただいたものなのです」

「今日はこれにしてもらいました。とても、意味のあるものなので」

フィニアスが笑うと、お母様は何かを悟ったように頷いた。

「似合っていますよ。デザインは少し古いものかもしれませんが、昔からの格式高い形ですし石はとても上等なもののようですから」

ちなみにネックレスはスカーレット様が一年の星降る宴前に選んでくれたものです。今回のドレスのデザインと合うのでこれにした。

「反射の魔導具は?」

「今日はつけておりませんよ。種明かししてしまいましたし。反対に利用されて私にかかったものを周囲に拡散するようになったら困りますし」

「それだとリリアンヌがかぶることになるじゃないか」

「かぶらないように動くしかありませんね。そもそもそういった輩がいるのが困ります」

なんだか不満そうなフィニアス。本来は魔物を相手に使う物なのだ。お茶会につけていったのはちょっとした出来心……ではなく、ジュマーナがいるかもしれないお茶会には付けていくよう、スカーレット様に厳命された。

スカーレット様の先見の明がすごい! やっぱり素晴らしい人だ。

「その代わり録画は陛下の許可を得たのでしょう?」

「あれは証拠として残るだけだから、加害には対応できないだろう」

フィニアスが証拠を残すことの出来る魔導具があると言ったら、一度見てみたいというので今回の婚約式をフィニアス目線で撮ることになったのだ。

陛下がつけたいと言ったらしいが、側近に止められた。まあ、魔導具を身につけるのは、それが害するものだったときのリスクが高いのでわかる。いくら信用しているフィニアスだとはいえ、常に気を付けていなければならないアーランデ国の王なのだ。

時間になり王宮へ向かう。

婚約式は王に誓いの言葉を述べ、婚約を宣言する。そのあとダンスパーティーとなるので、結構な貴族がやってくるそうだ。

私とフィニアスはそこで一度ダンスを踊って終了。

終了にはならないだろうけど。挨拶などでめまぐるしくなる。ギュネイ公爵派のお嬢様たちとおしゃべりしなくては。

馬車が止まり、私たちは真っ直ぐと謁見の間へ向かう。

両親は先の馬車ですでに入場している。

もちろん貴族たちも揃っており、重い扉が開くと正面にはラーヴェリヒ陛下とディライ第一妃陛下が並んで座っていた。両側にはたくさんの貴族。左右に昨日会ったターネルと、エブレンがいる。それぞれの派閥が側に連なっているのだろう。側妃も参加だったようで、正面の二人の後方にアイリーンとマクブーレ、そしてもう一人たぶん第四妃のメルティムが控えていた。

国の重要人物たちが一堂に会するその光景に、少し震えた。

すると、フィニアスが腕に絡めた私の手をそっと撫でて笑う。

息を思い切り吸って吐いて、再び真っ直ぐ行く先を見据えた。

ゆっくりと、周囲に私たちを見せつけるように進む。

決められた位置まで来たところで、私とフィニアスは礼をとる。カーテシーは完璧だ。

陛下の側の宰相が長々と向上を述べた。そして最後の台詞が紡がれる。

「ここに、フィニアス・カスクーチとリリアンヌ・クロフォードの婚約を認めることとする」

結局、フィニアスはカスティルを改め、カスクーチと名乗ることにした。家門に好き勝手させないためにはその方がよいと判断した。

つまり、リリアンヌ・カスクーチになるのだ。

ふふ、ちょっといいかも、なんて思っていたら、重い扉が、ドンッと音を立てて開いた。

「異議を申し上げます!!!」

あー聞いたことのある声だ〜。