軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エピローグ〜もっと楽しいこれからの生活〜

国王陛下から、ウォルポート領をメイナードのものにするために、さらにスカーレット様との婚約のために話し合うようにと別室へ促される。

私も当然席を立とうとして両側から腕をつかまれた。

左はお怒りのお母様。

右はかなり手を伸ばしたフィニアス。

「あなたはこちらの話がこれからでしょう」

「スカーレット様のことはまたあとでにしてくれるかな? 私たちの話をしよう」

隣ではラーヴェリヒ陛下がニコニコしている。

「そなたらにも別室を用意してある。そちらに移るが良い。本日は大儀であった」

陛下からそう言い渡され私たちは部屋を出てそのまま並んで行く。すかさずフィニアスがエスコートしてくれるのだが、お父様からの圧が……もう諦めて欲しい。私は諦めた。

用意された部屋は幾つもある応接間の一つだ。中央のローテーブルにはペンが用意されていた。

改めてラーヴェリヒ陛下と挨拶を交わして座る。

「双方合意の上での、婚約ということでよろしいのかな?」

ラーヴェリヒ陛下はお父様に尋ねる。

うんと頷くしかないのだが、それをフィニアスが止めた。

「陛下。状況が変わりました。少しリリアンヌに説明しなければなりません」

状況? 何のことだろうと彼の言葉を待つ。

「リリアンヌはスカーレット様と一緒にいるために、王都に残ることを条件の一つにしていただろう? だがこのままの流れだと、スカーレット様は領地へ赴くこととなる」

それは!!! 失念していた! 完全に完全にすっぽり抜けていた!!

私の表情にフィニアスは苦笑する。

「さてどうしようかな……さすがにあちらの領地に着いていくのはさらに難しい問題だ」

「フィニアスの当初の予定はどのようなものだったのですか?」

色々と考えてくれるのはありがたいし、大切にされているなと十分に思える。これ以上困らせるのは、私の本意ではない。

「本当はね、卒業と同時に大使として就任する予定だったんだ。その段取りももう済ませている。国に籍を置いておきたいのは、あちらで一族が好き勝手しないようにだ。少し国の勢力図も変わってね」

「今回の魔素石持ち込みに王族が関わっていたのだ」

「こちらで国家反逆罪であるようにあちらでも死罪に値する。……ジュマーナが過去壊した魔導具というのが、我々が安全に過ごすために魔素を集約する物だった。そこら辺でごたごたもあるし、まあ、そういうわけで私はアーランデの大使としてこちらで祖国との橋渡しを続けようと思っていたんだ。そうすれば、王都にいられるだろう? 王妃となるはずだったスカーレット様の役にも立てる」

そこまで考えてくれていたのは、正直嬉しい。

お母様もこれには頷いていた。

スカーレット様とは、確かにいつまでも何をするのも一緒というのは無理なのだ。

「フィニアスがとてもよく考えてくださったのはわかりました……そのまま進めてください」

「スカーレット様のことはいいの?」

「どちらにしろずっと一緒にはいられません。ただし! 冬の社交の時期はスカーレット様最優先にさせていただきます!」

それはもちろんとフィニアスが笑い、私たちは正式に婚約を交わすこととなった。

夏の休暇は目まぐるしかった。オズモンド王太子の擁立、新しい公爵領ヴィオーリャ領の告知、スカーレット様とメイナードの婚約発表。

ラーヴェリヒ陛下をお招きして晩餐会も開いた。アーランデの王はたくさんの妻を娶るのが普通で、親子のつながりはかなり希薄らしいと聞いていたが、フィニアスとラーヴェリヒ陛下はそれなりに親子だった。陛下のからかいをフィニアスは平然と受け取るので、全部私が被弾した。

お土産の中に化粧品を詰めておいた。

ぜひ拡散させたい。

気付けば夏の素材採集の日になっていた。

以前と同じくハンスを伴い、フィニアスとイライジャと四人で出かける予定だったのだが、なぜかメイナードがスカーレット様を伴ってやってきた。

「リリアンヌ!」

スカーレット様の採取服姿にやられた。

ドレスもいいが、こちらもとても似合っている!

「スカーレット様……そちらのお召し物はいつご準備されたのですか……」

「メイナード様がプレゼントしてくださったの」

頬を染めて言う姿はもう、完全に恋に落ちていた。

ギルベルトには見せなかったその初めての姿を見られたことを喜ぶべきなのか。

「良い趣味だろう」

「何から何まで余裕しゃくしゃくなのがすごく、腹立たしい!! よく分からない感情にわたくしは翻弄されてます」

なんか悔しいの!

なんで!!

とってもとっても悔しいぃぃ!!

私にこれだけ言われても、別に怒るでなく面白そうに見ているメイナードがいる。その隣にはすっかり花開いたスカーレット様の笑顔。

採取の間もずっと、私は怒っていた。

我ながら情けないが感情を制御できなかった。

川の側でひと休みしていると、フィニアスが隣に座る。手には実家の料理人に作らせたお弁当があった。

「お昼にしようって」

「では皆さんと――」

立ち上がろうとすると腰に手を回され、座ったまま引き寄せられた。

「フィニアス!?」

「二人で食べよう? 皆そうしてるし」

少し離れた場所でスカーレット様とメイナードが仲良さそうにしていた。

むぐぐぐぐ……。

私の様子を見てフィニアスが笑う。

「リリアンヌは、スカーレット様をとられて淋しいんだね」

まんまと図星をつかれて、何も言えない。

淋しい。

淋しくて淋しくて、叫びたい。

何も言えなくてむぅと黙る私の髪を、フィニアスが撫でる。

「私がその淋しさを埋めてあげる」

「そ、そういった台詞はどこで習ってくるんですか!?」

「んー、シュワダー・レフサー?」

お兄様ァァァァ!!

「あれはもう、読んではダメです」

「でも、すごくためになるよ? 特にこんなときは」

急に何をと思ったら、唇をぱくりとついばまれる。

「ふぃっ!?」

「リリアンヌ、私はこれからずっと一緒だよ」

そう言ってもう一度ぱくりとやられた。

「み、見られます」

「見て見ぬふりをしてくれるよ」

今度は手を握られる。今日の手袋は魔力を通すものだ。

やり直したせいで、スカーレット様とは一緒にいられなくなってしまう。けれど今のスカーレット様はとても生き生きしていて幸せそうに笑っている。

スカーレット様が幸せなら、私も嬉しい!

迷ったこともあったけれど、今は私は私の選択を後悔はしていない。

あの笑顔が、見られたことが最高のご褒美だ。

残りの学園生活も、もっと楽しいものになるだろう。

「リリアンヌ! 行くわよ!」

「はい! スカーレット様。……フィニアス、行きましょう」

私は彼の手を取ると、一緒に駆け出した。