軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

秘密の洞窟

ニーナ、ステラと一緒に森の中でキノコの採取を続ける。

二人にたくさん教えてもらったお陰で、カラタケ、アカタケ、クロタケ、ムキタケ、シイタケとたくさんのキノコを採取することができた。

そして、それ以上に食べられないキノコの種類や特徴も教えてもらった。

色々なキノコと出会い過ぎて、これ以上教えられても覚えられないかもしれないな。

子供の頃の物覚えの良さが純粋に恋しい。

「クレト! こっちこっち!」

「はいよ」

などと思いながらシイタケを採取していると、ニーナに呼ばれた。

また食用のキノコを教えてくれるんだろうと思ったが、なにやらこそこそとしており様子が違った。

首を傾げながら付いていくとニーナは茂みをかき分け、洞穴を見せてくれた。

ちょうど子供一人が入れるかどうかといったような大きさである。

「おお!」

俺が反応を示すと、ニーナはニシッと笑った。

いい歳をした大人とはいえ、俺も少年の心を持っている。

こういう秘密基地的な場所を見つけると、妙に心がワクワクしてしまうのだ。

ニーナは身を屈めると洞穴に入っていく。

必然的に俺の視界にはニーナのすっきりとしたお尻が映ってしまう。

スカートを履いてるわけではないので平気ではあるが、あまり男性が見ていい光景ではないな。ニーナも幼い年齢だけあってまだそういうところには無頓着みたいだ。

「クレトもおいで」

視線を逸らして待っていると、ニーナはいつの間にか奥に入っていた。

うーん、俺の身体の大きさでそこに入れるだろうか。などと思いながらも精一杯身体を小さくして挑戦してみる。

「痛っ」

しかし、三メートルほど進んだところで頭をぶつけてしまった。

「ごめん。俺の身体じゃこれ以上は進めないや」

「…………」

ピタリと足を止めて言うと、ニーナがまじまじと俺の姿を見つめる。

そして、手を伸ばしてきたところで何をしようとしているか察した。

「待って待って! 引っ張っても本当に無理だから!」

俺が先んじて制止させると、ニーナは伸ばした手をピタリと止めた。

危ない。もう少しで引っ張られるところだった。生憎と俺の身体はニーナにように小さく柔軟ではないので引っ張られたところで無理なものは無理だ。

「えー、そうなんだ。クレトにも奥を見せたかったぁ」

シュンとした様子で呟くニーナ。

彼女が見つけた秘密基地的な場所に俺を案内したかったのかもしれない。

しかし、俺の身長はアンドレほどではないが大柄な部類に入る。

これ以上洞穴を進むのは物理的に無理だ。

「この先には何があるんだ?」

「ちょっと広い空間があるよ」

ニーナが後方を指さしながら教えてくれる。

奥に視線をやると、確かにちょっとした空間が視認できた。

「あ、これなら魔法を使えば入れるかもしれない」

直接身体を入れることはできないが、空間魔法を使って転移すれば入ることができそうだ。

「え? 本当!?」

「ああ、ちょっと先に入って端に寄ってくれるか?」

「うん!」

俺がそのように言うと、ニーナは嬉しそうに頷いて奥に入る。

「転移」

ぽっかりと空いた空間をしっかりと視認した俺は、空間魔法を発動。

屈んだ体勢のまま転移をすると、俺はニーナと同じ空間にやってくることができた。

「わっ! すごい! クレトも入ってこれた!」

「転移でごり押しだけどね」

こんな狭い場所に無理やり転移をするのは初めてだったので、少しだけドキドキとした。

失敗したら壁の中に埋まったり……なんてことはないよな?

「狭い洞穴だけど中は思っていたよりも広いんだな」

「でしょ? 最初に見つけた時は私もビックリした!」

俺の身長では完全に立ち上がることはできないが、少し頭を下げるだけで歩き回ることくらいはできる。座って過ごす分には問題ないくらいに広いし、ニーナくらいの身長であれば自由に立って歩き回れるほどだ。

「なんだか秘密基地みたいでワクワクするな」

「秘密基地?」

思わず感想を漏らすと、ニーナが首を傾げた。

どうやらこの世界では、子供たちの秘密基地っていう呼び方や概念はないのかな?

「俺とニーナだけが知っている秘密の遊び場って意味だよ」

「私とクレトだけの秘密の遊び場! いいね、秘密基地!」

説明してみると、ニーナはとても気に入ったらしく目をキラキラと輝かせた。

たとえ、世界が違おうと秘密基地というのは、子供たちの心を鷲掴みにするようだ。

「ニーナ? クレトさん? どこですー?」

なんて話し合っていると、外からステラの声が聞こえた。

「ステラさんが探しているし、そろそろ戻ろうか」

「うん、そうだね」

さすがにずっと姿が見えないままでは、ステラを不安にさせてしまう。

俺は転移を使ってニーナと一緒に秘密基地の外に出る。

ニーナは戻るなりかき分けた茂みを元に戻して、入り口を塞いだ。

「何してるの?」

「隠ぺい! ここは私たちだけの秘密基地だから!」

そう言いながら必死に洞穴を隠す様子が微笑ましい。

早速、秘密基地らしいことをしているようだ。

「あっ、二人ともここにいたんですね」

俺たちを確認すると、ステラがホッとしたような顔をする。

「ここで何をしてたの?」

「えっ? あっ、えっと……」

ステラに尋ねられてニーナの視線が露骨に泳ぐ。

あっ、この感じニーナは嘘をつくのが下手だな。

とても純粋で素直な子なので、何となくそうなんじゃないかと思っていた。

「すみません。ニーナとキノコを採取するのに夢中になってしまいました」

「クレトさんなら大丈夫だとは思いますが、キノコばかりに夢中になってはいけませんよ。森には危ない場所もありますし、魔物だって出ることもありますから」

「はい、以後気をつけます」

口ごもるニーナの代わりにシイタケを見せながら言うと、ステラは納得してくれたようだ。

嘘をつくのはちょっと憚られる気持ちがあったが、秘密基地のためとあっては仕方がない。

「十分な量が採れましたし、そろそろ村に戻りましょうか」

「そうですね」

ニーナやステラの籠や亜空間に収納されている木箱にはたくさんキノコがある。

これでしばらくキノコに困ることはないだろう。

三人で揃って道を引き返そうとすると、不意に後方でシャクシャクと落ち葉を踏みしめる音が聞こえた。

前を歩いているのはニーナとステラ。最後尾にいるのは俺なので、後ろから音が聞こえるというのはおかしい。疑問を抱いて振り返ると、猪がトコトコと歩いていた。

鼻をフゴフゴと鳴らしながら地面を嗅いでいる。

森の豊富な恵みを得ているからだろう。俺の知っている猪よりも遥かにデカく、尖った牙も中々に立派だった。

「……クレト?」

足を止めた俺に気付いたのだろう、ニーナとステラが不思議そうに振り返る。

「あそこに猪がいる」

「あ、本当だ」

指をさして言うと、二人にも視認できたらしい。

「足跡は見当たりませんでしたが、奥の方からやってきたのでしょうか?」

「多分、そうだと思います」

今回は非戦闘員であるニーナやステラがいるので、周囲にはできるだけ気を配っていた。

野生動物の足跡や糞なんかは念入りに確認していたので、ステラの推測通り奥からやってきたというのが自然だろう。

「猪は臆病な動物ですので、刺激しないようにそっと視界から離れましょうか」

「でも、もうこっち見てるよ」

「ええ?」

ニーナに言われて視線を戻すと、先ほどまで地面を嗅いでいた猪がバッチリこちらを見ていた。

うん、完全に目が合っているな。

でも、大丈夫。猪は動くものに反応する習性を持っている。こちらが背中を見せて逃げたり、大声を上げて刺激しなければ襲ってくることはない。

「わっ! 走ってきた!」

なんて聞きかじりの知識を実践して刺激しないようにしていたが、現実は残酷かな。

猪は急にこちらへと突進してきた。

驚異的な脚力を誇る猪から人間が逃げられるわけがない。

咄嗟にニーナやステラを転移させようとするが、二人は猪が突進してきたことにより驚いて下がってしまっている。

二人に座標を合わせて転移させるよりも、魔法で猪の対処をする方が簡単だと判断。

「空間斬」

そうと決めたら速やかに実行だ。

俺は空間魔法を使って、猪の首を落としてしまう。

空間に干渉しているのだから猪は感知することも避けることもできない。

残った体がブレーキの仕方を忘れてしまったように勢いよく倒れた。

ショッキングな光景のために素早く死体を亜空間へと収納しておく。

「二人とも怪我はありませんか?」

「すごーい! クレトって戦えるんだ!」

「クレトさんは攻撃魔法も使えたのですね」

振り返って安否を尋ねると、ニーナとステラが驚嘆の声を上げた。

「あれ? 一応、それなりに戦えると言ってませんでしたっけ?」

「えっと、転移するところや物を出し入れするところしか見ていなかったもので」

言われてみれば、ニーナやステラの前でまともに攻撃っぽい魔法を使っていなかった気がする。

ハウリン村では、危険な動物や魔物が滅多に出てこないから、見せようもなかったんだけど。

「ちょっと刺激が強い光景だったけど大丈夫?」

「平気! クレトの魔法で猪の頭がストーンって落ちて面白かった!」

心配して声をかけると、ニーナは快活に笑った。

バッチリ見られていた。が、特に気にした様子がないようだったので一安心だ。

面白がっているのであれば無理しているということもないだろう。

村娘だけあって、こういう光景にも慣れているようだ。

「また遭遇するとは思いませんが、今日は念のために転移で戻りましょうか」

俺の提案にステラは少し遠慮気味だったが、了承してくれないと後でアンドレがどのような反応を示すかわからない。

そう説明すると、あっさりと納得してくれたので俺たちは転移で村まで戻った。