軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハーピーの討伐依頼

チーズフォンデュを食べ終わった俺は、久しぶりに冒険者ギルドに顔を出すことにした。

ガドルフとウルドに顔を出すように言われたし、『雷鳴の剣』のメンバーも寂しがっているようだからな。

冒険者の転送業のお陰で名声が広がり、エミリオと出会うきっかけにもなった仕事だ。ギルドで仕事をする必要性は今となっては下がってしまったけど、お世話になった場所なのできちんと顔は出しておきたい。

「クレトじゃねえか!」

冒険者ギルドに入ると、よく通った声がギルドに響いた。

視線を向けると、ギルドと併設された酒場のテーブルにヘレナがおり、嬉しそうな顔で手を大きく振っていた。傍には仲間であるロックス、レイド、アルナもいる。

どうやら『雷鳴の剣』が勢ぞろいしているようだ。

「転送屋がいるぞ!」

「あいつの魔法なら依頼場所まですぐだ!」

「今日はやる気出なかったけど、転送屋が送ってくれるならやるかー」

俺がやってきたとわかると冒険者たちが一気にざわついた。

やる気なさそうにしていた冒険者だけでなく、掲示板を眺めて悩んでいた冒険者も一気に活気づいてきた。

そして、クーシャをはじめとするギルド職員も忙しくなることを警戒してかわたわたと動き回る。

すみません、俺のせいでまた忙しくなると思います。

「おい、転送屋! 俺たちを依頼場所まで送ってくれよ!」

「うちも頼む!」

「お前ら割り込んでくんな! クレトにはアタシが一番に声かけたんだからよ!」

慌てて詰め寄ってきた冒険者たちに威嚇するヘレナ。

女性ながらも鋭い気配を発している。今にも剣を抜いて斬りかかりそうだ。

さすがはBランクパーティーの斬りこみ隊長だけあって迫力がすごいな。

「そうですね。ヘレナさんが最初に声をかけてくださったのでご用件は順番でお願いします」

「ああ、悪いな」

やんわりと告げると、冒険者たちはバツが悪そうにして下がる。

ヘレナたちのパーティーとは一番に仕事をした仲であり、お得意様だ。ちょっとくらい優遇してもいいだろう。

「久しぶりだな。最近は顔を出さないものだから心配した」

冒険者たちをひとまず追い払うと、ロックスが声をかけてくれる。

「すみません、最近は新しく家を買ったりと忙しかったもので」

「その若さで家を持つようになるなんて稼いでるね!」

ヘレナが豪快に笑って肩をバンと叩いてくる。久しぶりに会えた嬉しさからのスキンシップなのだろうが中々の威力だ。肩がちょっと痛い。

「……家、いいな。私も家を買ってのんびりとしたい」

「そのためには人生を上がりきるようなお金を稼がないとですね」

「……家に住めるようになるのは遠い」

レイドの現実的な言葉を聞いて、アルナが遠くに視線をやる。

俺の場合はエミリオのお陰で格安で屋敷を手に入れられたけど、王都で一軒家を手に入れるには中々の貯金が必要だからな。

「それまではクレトの家に遊びに行くことで我慢しようぜ。きっといい家を買ったに決まってる」

「……そうする」

「本気か冗談なのかはわかりませんが、機会があれば招待しますよ」

「おお!」

そのように告げると、しゅんとしていたアルナが顔を明るくさせた。

ハウリン村ではニーナ一家やオルガなんかが遊びにきてくれるが、王都の屋敷ではそういう出来事はほとんどない。こちらでも友人を招いて楽しく過ごせるようにしたいものだ。

後は単純に絵画を飾ってもらったので自慢したい気持ちもある。

「ところで、クレトさん。今日ギルドにやって来られたということは、転送業をやっていただけると期待してもいいのでしょうか?」

レイドが眼鏡を軽く持ち上げ、真剣な面持ちで尋ねてくる。

「ええ、今日は転送業を引き受けるつもりで来ました。というか、引き受けないと文句を言われちゃいそうですね」

いつの間にか俺たちの周囲には冒険者が居座っていた。

その瞳はとてもギラギラとしており、ここで帰るなどと言ったら暴動が起きそうな雰囲気だ。

「では、これから依頼を受けてくるので転送をお願いしたいと――」

「お話のところすみません! 少しよろしいでしょうか?」

レイドとの話が纏まりそうなところに割り込むように入ってきたのはギルド職員のクーシャだ。

「クーシャさん、一体どうされました?」

そのことにレイドはムッとしつつも、リーダーであるロックスが落ち着いて問いかけた。

ギルド職員である彼女が急いで声をかけてきたということは、それなりに重要な要件があるということだろう。

「実は王都から五日ほどの距離にあるオルギス山にハーピーの巣が発見され、近隣の街や村に被害が出ているんです。冒険者の皆さんには、クレトさんのお力でそちらに向かっていただけないでしょうか?」

「そのレベルの依頼なら、騎士団が動くもんじゃないのか?」

ヘレナの言うことはもっともだ。

勿論、依頼となれば冒険者が動くこともあるが、大きなレベルでの魔物被害は王国騎士団が対応するものだ。

「十日後には建国祭が控えておりまして、王族の方の護衛や王都の防備のために騎士団は動けないのです」

そういえばそんなものがあると聞いたような気がする。

王国の建国を祝う祭りが一年に一度だけあると。王都にやってきてからまだ一年も経過していないので初めてになるな。

「騎士団の代わりにアタシたちを顎で使おうっていうのか。気に入らないね」

ヘレナをはじめと冒険者たちがクーシャの言葉を聞いて、つまらなさそうにする。

組織に縛られるのが嫌いな自由人たちが集まっているのが冒険者だ。国に対して忠誠心も欠片もない俺たちからすれば、都合のいい時に頼られている状態だ。

面白くないと感じてしまうのも無理はない。

普段何もしてくれず偉ぶってるだけの親会社が、都合が悪い時にだけ頼ってくるようなイメージか。

「……クレトがいるんだし、複数の依頼を平行して達成した方が稼ぎが良さそう」

「まったくだな。今日はせっかくクレトがいるんだからよ!」

ぼそりと呟いたアルナの言葉に、ヘレナだけでなく多くの冒険者が頷く。

……うん、俺も逆の立場ならそう思うかも。

「お待ちください。これは王国から正式な依頼を受けてなので報酬金も高くなっております。その上、依頼を受けてくださった方々には、ギルドへの貢献があったと認められ、ランクアップの際の査定として加味されます」

ギルドへの不満の声が大きくなる中、クーシャの口からそのようなことが述べられる。

これにはブーイング状態だった冒険者たちも目の色を変えた。

ランクアップの査定に加味されるとなると、冒険者としては実に美味しい。

どうやら王国としては、よっぽどこの事件を冒険者に頼みたいようだ。

「……ふむ、報酬が高いことは当然として、ギルドへの貢献として評価されるのは美味しいですね。ランクアップへの確かな一歩になります。これなら引き受ける価値があるでしょう」

「そうだな。ハーピーの討伐を引き受けようと思う。ちなみに聞いておきたいのだが、クレトはオルギス山までの転送はできるか?」

「できますよ」

そこなら以前、商売で行ったことがある。

「では、是非ともお願いします!」

これにはクーシャが顔を輝かせて頭を下げてきた。

王国とギルドの板挟みになって大変だろうな。さすがに可哀想なので力になってあげたい。

「王国に使われるのはちょっと気に入らないけど、アタシもリーダーの決定に異論はないぜ」

「……私も問題ない」

『雷鳴の剣』が引き受けると、他の冒険者もハーピーの討伐を引き受けるようで手を挙げる声が多く上がっていた。

そんな様子を見て、クーシャをはじめとするギルド職員はホッとした表情を浮かべ、冒険者たちに詳細な内容を伝えていった。