軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

090 第二十一階層

今日は冒険者ギルドにもレアポップモンスターの情報も無かったし、階層を進めようと思う。ソロでどこまで行けるのか、楽しみだね。

「ん?」

次の階層へと続く階段を探しながら歩いていると、二十メートルほど先の草原に白いモコモコの集団が見えた。頭に鋭いツノの生えたウサギの群れだ。

「ッ!?」

その瞬間、オレは身の危険を感じてサイドステップを踏む。

すると、さっきまでオレの顔が、体があった場所を白いなにかが高速で通り過ぎていく。気分はもう銃弾を避けた気分だ。

「バレットラビットッ!?」

第二十一階層から登場するモンスターだ。その素早さは異常の一言。その素早さに物を言わせて、ツノを突き付けて跳んでくるのである。見た目は第一階層で登場したホーンラビットにそっくりなのに、かなり凶悪な性能だ。ただのウサギとナメてかかるとたいへんなことになる。

オレはフェイントを織り交ぜたサイドステップで、どうにかバレットラビットの乱射を避け続ける。

だが、いつまで経っても終わりが見えない。一度回避したバレットラビットたちが、すぐさまオレに向かってまた突っ込んでくるからだ。

「はっはっ……」

少しづつ息も上がってきた。

現実は非情だ。ゲームならターン制で必ず順番が回ってくるし、こんなに多くのモンスターに一度に襲われることもなかった。ゲームと同じだと思っていたら痛い目に遭っていたに違いない。

迎え撃つしかないか。

オレはタスラムを握るとバレットラビットを迎え撃つ覚悟を決める。

「ッ!」

腹を目掛けて飛んできたバレットラビットを避け、バレットラビットが通り過ぎる瞬間、その背に向けて拳を放つ。

「ファストブロー!」

MPを消費してスキルを使用。タスラムは見事バレットラビットを捕らえ、その身を砕く。ファストブローは発動が早いのだ。

それに、回避と両立するために腰の入っていない手打ちになってしまった拳の威力を補強してくれる。

ポキポキと小枝を折るような感覚が拳に残る。まずは一体。

続いて突っ込んできたバレットラビットの群れ。まるでショットガンのような面での攻撃だ。

すべてを避けることは不可能……!

オレは覚悟を決めるとタスラムを握ってどっしりと構えた。正面から迎え撃つ……!

「ラッシュ!」

跳んでくるブレットラビットをスキルで迎え撃つ。ラッシュはMPの続く限り打てるファストブローみたいなものだ。普通ならすぐにMPがなくなって息切れするが、オレには殴るたびにMPを吸収する白虎装備がある。オレのラッシュは止まることがない。

タスラムを装備したラッシュは、まるでミサイルを迎撃するイージス艦のように次々とバレットラビットを落としていく。そのツノを砕き、一撃でバレットラビットを屠っていった。

「グッ!?」

しかし、多勢に無勢だった。十体以上いたバレットラビットの内、二体を撃ち落とすことができずに、左足と右肩にバレットラビットが突き刺さる。

幸い、急所を外れたので大事には至らなかったが、ヒヤリとさせられた。

「いてて……」

突き刺さったツノが抜けずに暴れているバレットラビットを処し、戦闘を終わらせた。

「はぁ……」

一戦目から怪我するとか、幸先が不安だな……。

溜息を吐きつつ、収納空間から高級ポーションを取り出して飲み干した。激痛を放っていた怪我が一瞬で治るのはファンタジーだね。さすが、アリス印のポーションだ。

「さて、進むか」

オレは広くどこまでも続く草原を歩き始める。

オレのダンジョン休日は始まったばかりだ。

「MOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」

草原を走ってこちらに向かってくる茶色い長毛の牛、バッファロー。一見普通の牛っぽいが、これもモンスターだ。というか、ダンジョンにいる動物はどれもモンスターである。

「次はドロップするといいが……」

オレは迫るバッファローを見ながらタスラムを構えた。

「フッ!」

「BUMO!?」

バッファローをギリギリまで引き付けてから大きくサイドステップを踏む。あんな大質量の物体を正面から受け止めるなんて自殺行為だ。

「ファストブロー! ダブルブロー!」

バッファローの突進を華麗に避け、その横っ腹にタスラムを叩き込む。まるで気分はマタドールだ。

タスラムの無属性魔法の追加攻撃も合わせた六連撃。さすがに耐えきれなかったのか、バッファローが白い煙となって消える。

バッファローがいたその場所には、一リットルサイズの牛乳瓶が残されていた。

「お! いいね、初ドロップだ」

これこそがお目当てのドロップ品。バッファローのミルクである。ゲームではただの牛乳として取引されていたのだが、この世界では違う。バッファローのミルクは普通の牛乳より味がいいらしく、そこそこの値段で取引されているのだ。

「エミールにこれでカトルカールを作ってもらおう。きっと新商品になるぞ!」

オレはホクホクした気持ちを感じながら、バッファローのミルクを大切に収納空間にしまった。