軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

068 クーのあれこれ

「クーにはお洋服を用意しないといけないですね」

「クー?」

アリスがクーの体にハンカチを巻いてやりながら言う。

「そうだね」

さすがに二十センチほどの小さい人工精霊には興奮しないけど、裸で飛び回られると目のやり場に困る。アリスに似ているからか、アリスの裸を盗み見ているような、そんないけない気分になるんだ。

「そういえば、クーはどことなくアリスに似ている気がするんだけど……」

「それは私が説明しようじゃありませんか!」

カチェリーナが髪をバサッと後ろに払って言う。

どうでもいいけど、エルフのカチェリーナがすると、そんな何気ない仕草が非常に様になっているな。

「その人工精霊、クーにはアリスの血が入っているのよ」

「アリスの血が?」

人工精霊のレシピに人間の血なんて無かったはずだが……?

「創造主の血は、主従の契約を結ぶ上でも、人工精霊に知性を与えるためにも必要不可欠なのよ。そして、人工精霊に人型が多いのもこれが理由ね」

「ふむ……」

オレにはよくわからない世界だが、アリスのDNAとかを参考に人工精霊の体を作っているのだろうか?

それならアリスに似ているのも納得できる。

「それじゃあ、オレが血を提供すれば、オレに似た人工精霊ができるのか?」

「創造主と血の提供者が違うと、失敗するそうよ。その昔、自分の人工精霊を欲しがった王族がいるんだけど、ことごとく失敗したからね」

「そうか……」

オレも人工精霊を手に入れてパワーアップできるかと思ったのだが、そんな簡単な話ではないらしい。

残念だ。

「クー……」

その時、クーのやけに悲しそうな鳴き声が耳を打った。

「どうしたのかしら? 先生、クーがお腹を押さえてわたくしを見上げてくるのですけど……。お腹が減ったの? 人工精霊ってなにを食べるのかしら?」

「人工精霊は、普通は食事の必要はないわ。けど、クーはまだ生まれたてだから魔力が足りていないんじゃないかしら。アリス、クーに魔力を注いであげて」

「はい!」

アリスはクーの頭に手を置いた。すると、すぐにクーがお腹を摩るのをやめた。

「クー!」

「なんだか嬉しそうですね?」

「クー!」

「アリス、人工精霊は空気中の魔力を溜めて行動するけど、魔法を使ったりすると魔力が足りなくなる場合があるの。そんな時はクーに魔力を注いであげるといいわ。感覚としては、人工精霊に魔力を渡して、代わりに魔法を使ってもらう感じかしら」

「はい! ありがとうございます、先生」

なるほどなぁ。それで人工精霊を装備した錬金術師は魔法が使えるようになるのか。

ゲームの時はただの装備品だと思っていたけど、目の前で嬉しそうに飛んでいるクーを見ていると、ただの装備品だとは割り切れないな。

アリスに似ているからなおさらね。

オレはその日のうちにクーのために服屋を呼んだ。もちろんアウシュリーだ。たぶん彼女たちならこの小さなお客さんのために最高の服を作ってくれるだろう。

「こちらがその人工精霊ですか……」

「はい。クーといいます」

「クー!」

クーは物怖じしないのか、寸法を測りに来たアウシュリーの店員に手を上げて応えていた。

なんだかクーを見ていると、無邪気なアリスを見ているようで、保護欲がむくむくと湧いてくるんだよなぁ……。これが父性とかいうやつかもしれない。

「初めて見ました。本当に小さな人間のようですね……。かわいらしい……」

「クー?」

「で、ではクー様、採寸させていただきます」

クーの採寸はすぐに終わった。クーは人間の言葉がわかるのか、アリスの言うことを聞いてくれたからだ。これが主従契約の効果なのかもしれない。

「いつまでも裸というのはかわいそうだ。特急で頼む」

「かしこまりました。おそらく明日には何着か完成品をお持ちできるかと思います」

「よろしくおねがいします」

「クー!」

さすがに今すぐ服ができるわけじゃないか。それまでクーにはハンカチにくるまっててもらおう。

翌日、それも朝にはアウシュリーはクーの服を用意してみせた。おかげで今日からクーは教室デビューだ。

「あれ、なにかしら?」

「空を飛んでる? まさか、妖精!?」

「すげー……!」

「あ、あんな生物はいないはずだ!?」

「じゃあ、なんだよ?」

すごいな。教室中の視線がクーに集まっている。

「クー!」

なのにクーは視線なんて気にした様子もなく、パタパタとアリスの後ろを飛んでいた。むしろ、視線を集めてアリスの方が恥ずかしそうだ。

「エグランティーヌ様、おはようございます」

「おはようございます、アリス。ところで、あなたの後ろに飛んでいる妖精はなんでしょう? 先ほどから皆さん気になっているようですよ?」

エグランティーヌの言葉に、教室中が頷いたと言っても過言ではない。

「これは、わたくしの人工精霊です。名前はクーといいます」

「まあ! これが噂の人工精霊ですか? ずいぶんかわいらしい見た目なのですね。気に入りました。よろしくおねがいしますね、クー」

「クー!」

クーはエグランティーヌの伸ばした人差し指にペチッとタッチしたのだった。