軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

122 ひらめき

「ふぅー……」

二回目のメリーの群れの殲滅を終え、オレは大きな息を吐く。

今のオレは肩で大きく息をしている。汗もびっしょりかき、じんわりとした疲労感を感じていた。

「今回は、一回も攻撃を貰わなかったぞ!」

前回はけっこう攻撃を喰らっていたからなぁ。

今度は攻撃を貰わないことに意識をしてみたのだが、大成功だ。

オレは確実に進歩している。それが嬉しかった。

オレは、格闘術の成長をサポートしてくれるギフトも、身のこなしをサポートしてくれるギフトも持っていない。だから、全部自力で習得するしかなく、その成長速度も最低だ。

思い出したくもないが、オレがアンベールを圧倒できたのは、オレの技術が優れていたわけではなく、単に圧倒的なレベル差による暴力なのだ。

今まで、オレはたくさんのレアポップモンスターを倒してレベルを上げ、そのレベルでゴリ押すような戦術が多かった。これも悪いわけじゃないが、やっぱり地道にスキルを使ってスキルの熟練度を上げるのも大事だ。

今回は身のこなしに重点を置いていたので、あまりスキルを使うことはなかった。これからはいっぱいスキルを使ってスキルの熟練度を上げていこう。

スキルの熟練度が上がると、スキルの威力も上がるし、新しいスキルも覚えるからね。積極的にスキルを使っていきたいところだ。

「ステータス画面が見れれば、スキルの熟練度もわかるんだが……」

まぁ、ないものねだりをしても仕方がない。がんばろう。

考え事をしている間にだいぶ息も整ってきた。

「よし、拾うか」

オレは地面に散らばってしまったメリーの群れのドロップアイテムを拾っていく。拾うのは羊毛や毛皮だ。いずれもゲームでは安価だったが、こういうのはコツコツと溜めていくに限る。

まぁ、数が数だ。それなりの値段になるはずである。

「もうないかな?」

それから十分ほどアイテム集めに奔走し、アイテムは集め終わったと思う。

「じゃあ、行くか」

それから、また草原を駆ける。バッファローは見つけ次第始末していく。バッファローのミルクが欲しいからね。

だんだん日が傾き、日が空を赤く燃やしていく。

それからは特になにもなくダンジョンの第二十六階層をクリアした。

第二十七階層へ続く階段を降り、部屋の中央に据えられた変なモニュメントに手を触れてダンジョンから外に出る。ちょうど夕日が沈むところで、ダンジョンから戻ってくる冒険者の数が多かった。

夜にダンジョンに潜る冒険者はいない。人間よりもモンスターの方が夜目が利くのが多いからね。夜のダンジョンは攻略難易度が上がるためだ。

ダンジョンを守る衛兵も夜にダンジョンに入るのは止めるほどだ。

オレは冒険者ギルドに向かうだろう冒険者たちの行列から離れ、常宿にしている『優しい止まり木』に帰る。

今日は疲れた。

「お帰りなさいませ」

「ただいま」

この宿の主人のおじいちゃんとも長い付き合いになってきたな。今では気軽に挨拶ができる関係だ。

「今日もダンジョンですか? 精が出ますね。ご無事で何よりです」

「ありがとう。今日は何もなかった?」

オレにもよくわかっていないのだが、どうやらオレは冒険者クラン『グレイブディガー』との問題を抱えているらしい。

もちろん、そのことは『優しい止まり木』の主人に報告済みだ。

問題があるようなら宿を出て行くとも伝えたのだが、目の前のおじいちゃん主人はこのまま宿にいても問題ないと言ってくれた。

トラブルばかり起こす客なんて普通は嫌がるだろうに、本当にありがたいね。

「何もありませんでしたよ。ご心配なく」

「それはよかった。じゃあ、オレは部屋に戻って休むよ。お湯とタオルを貰える?」

「はい。すぐに用意いたします。お疲れ様でございました」

お湯の入った盥とタオルを受け取ると、オレはおじいちゃん主人と別れ、階段を上って自室に戻る。

「さて……」

白虎装備を脱いで、お湯に浸して絞ったタオルで体をゴシゴシ拭いていく。

今日はたくさん汗をかいたからね。なんだかすごくさっぱりする。気持ちがいい。

「でも、やっぱりお風呂に入りたいな……」

タオルで体を拭くのもさっぱりするが、やっぱり元日本人としてはお風呂に入りたいところだ。

だが、大量に水と薪を使うお風呂は裕福な貴族や豪商にしか許されない贅沢である。もちろんというべきか、それなりに高級宿である『優しい止まり木』にも常備されていなかった。悲しい。

「銭湯とか作ったら、儲かるんじゃないか?」

古代ローマのテルマエみたいに、公衆浴場というのはいい考えな気がした。

べつに儲からなくても、オレがいつでもお風呂に入れるというだけでかなり魅力的だ。

「男湯と女湯を作るとして、それなりの広さが必要だな?」

初期費用はかかりそうだが、やる価値はあると思う。

「公衆浴場はメモしておこう」

オレは心のメモにしっかり書き込むと、盥の中に頭を突っ込んで頭を洗い始めるのだった。