軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

116 一等資格

予定とは異なり、エグランティーヌに借りを作る形になってしまったが、オレは無事に商人ギルドの一等資格を得ることができた。これで自分の商会を持つことができる。

しかも、エグランティーヌはオレがジャックとして活動していることを知っているため、ジャックの名前で一等資格を得ることができた。

ジルベールだと成人していないが、ジャックなら成人と認められている。エグランティーヌの細かな気遣いに感謝だ。

商会の名前はジゼル商会にした。ジャックとジゼルは兄妹という設定だからね。妹の名前を商会名に使ってもおかしくはないだろう。

一等資格を得ることができたオレは、さっそく小麦の売買に参入することにした。

したのだが、これがちょっと一筋縄ではいかないみたいだ。

小麦を取り扱うことはできる。だが、オレにはよくわかっていなかったのだが、小麦にも種類があるらしいし、同じ小麦を挽いた小麦粉にも挽き方によって種類があるらしい。

オレとしてはリットリアに安定して小麦粉を供給できればと思ったのだが、リットリアが何の小麦粉を使っているのかすらオレは知らない。このあたりは後でエミールに確認してからだな。

カトルカールの材料はシンプルだ。小麦粉と卵、バター、砂糖の四つだけである。

バターはオレがダンジョンでドロップアイテムを回収してくるとして、あとは卵と砂糖か。

驚いたのだが、卵は王都の場合、平民や貧民が屋根裏部屋でニワトリを飼育していることが多いらしい。しかも、既に卵を売る先は決まっているようだ。今から新規で参入するのは難しいそうだ。

砂糖は南の国からの輸入品らしいのだが、こちらは独自で船を持っていないと話にならないと言われてしまった。

小麦やバターはオレが商人になったことでリットリアへの嫌がらせも解決できそうだが、残りの二つは難しそうだ。

まぁ、しばらくはリットリアではなくジゼル商会が買い出しをすることで時間稼ぎできそうだが、ジゼル商会とリットリアの関係が明らかになれば、ジゼル商会へと卸す素材の値段も上がってしまうだろう。

こうなったらリットリアに嫌がらせをしている犯人を突き止めてやめさせるしかないのだが、商人たちに一斉にリットリアへの商品の値上げを指示できるということは、相手はそれなりの権力者だろう。おそらく、商人ギルドでも確かな地位を築いているはず。考えたくはないが、そのバックに貴族がいる場合もある。

何度でも言うが、今のオレはただの平民だ。王族の騎士見習いという身分もあるが、貴族家の当主と比べればカスみたいなものである。

まぁ、オレにはエグランティーヌという切り札があるのはたしかだが、できればそれは使いたくない。これ以上エグランティーヌに借りを作るのは避けたいところだ。

「どうするかなぁ……」

とりあえず、リットリアの代わりにジゼル商会の名前でカトルカールの材料を買って時間を作り、その間に嫌がらせをしている犯人を突き止めるか。どうするかはそれから考えよう。

そうと決まれば、さっそく行動開始だな。

オレは商人ギルドの中で周りを見渡す。

当然だが、オレに商人の知り合いはいない。さて、どうしたものか。

まぁ、当たって砕けろだな。

オレは商人ギルドの隅で話している二人の商人に近づいていく。

「少しよろしいでしょうか?」

「おや? あなたは……」

二人の商人は不思議そうな顔でオレを見ていた。

「私はジャックと申します。この度、ジゼル商会を立ち上げたのでご挨拶をと思いまして」

「商会を?」

「失礼ですが、あなたはご高名な冒険者のはずでは?」

二人はよほどビックリしたのか、目を丸くしていた。

それにしても、やはり商人は耳が早いな。今日は白虎装備ではなく、平民服に仮面だけ着けている状態なのに、オレを冒険者のジャックだと気が付いたようだ。

「ご存じの通り、私は冒険者もしておりますが、商売にも興味がありまして」

「なるほど」

「しかし、商会を立てるとなると一等資格が必要なはずですが……」

「幸運に恵まれました」

敢えて濁すことで相手の深読みを誘う。まぁ、相手は商人だ。意味はないかもしれないが、この短期間で一等資格を得ることができる何かがあることを匂わせる。あとは勝手に相手が調べてくれるだろう。

「ジゼル商会ですか。この度は商会の設立、並びに一等資格を得たこと、おめでとうございます」

「おめでとうございます。それにしても、すさまじいものですね。普通にやれば十年はかかるはずですよ」

「ありがとうございます。ですが、私はまだ商人としては若輩者です。ぜひお二人のお話を聞かせてくださいませんか?」

目の前の二人はいずれも四十代だ。おそらく、叩き上げの商人のはず。教えを乞う形で商人の作法や情報集めを始めよう。

そうしてオレは商人ギルドを訪れる商人たちとまずは面識を持ち始めることから始めるのだった。