作品タイトル不明
110冒険者ギルドにいつもの報告
「ほう……」
いつも通りヘンテコなモニュメントを使ってワープする。
ダンジョンの外に出ると、空はもう真っ赤に燃えていた。ちょっと予定時間より遅いけど、今日中に第二十五階層をクリアできてよかったな。
「ふふん」
オレは上機嫌に慣れない鼻歌を歌っていた。曲はもちろんゲーム『レジェンド・ヒーロー』のオープニング曲である。
オレがここまで機嫌のいい理由。それは、王都のダンジョンを第二十五階層までクリアすることによって、世界各地にあるさまざまな隠しダンジョンに入れるようになるからだ。
隠しダンジョンは総じて難易度が高いが、いろいろとレアなアイテムや装備が手に入る。潜らない手はない。
「楽しみだ」
オレは達成感を感じながら王都の大通りを歩く。仕事終わりの時間に被ったのか、大通りには家に急ぐ王都の住民たちで溢れていた。あちこちから夕食のいい匂いが漂っている。
お腹空いたなぁ。
「へーい! いらっしゃい!」
「ポトフはいかがかなー?」
「ウチのキッシュは最高だぜ!」
空腹の人々を狙い撃ちにしたように聞こえる屋台からの掛け声。仕事で疲れた体で夕食を作る気力もない人々はお世話になる機会が多いだろう。実際、屋台の前には長い列ができているからね。
「オレも早く帰ろ」
とはいえ、まだ宿には帰れない。今日はレアポップモンスターを倒したから、その報告をしないとな。
そうしてやって来たのは、冒険者ギルドだ。
「聞いたかよ? 西の街道で――――」
「かんぱーい!」
「今日はご苦労だった。今日はゆっくり食事して日頃の疲れを癒してくれ」
「なんか最近変異個体見ねえな?」
「しらねえのか? 狩って回ってる奴がいるんだとよ」
「マジかよ? 変異個体を狩るとか、どんな変人だよ」
「髑髏の仮面なんて着けてるマジモンの変人さ」
「おっと、噂してたらいらっしゃったぜ?」
冒険者もちょうど仕事終わりの時間なのか、冒険者ギルドの食堂には、いつもよりも多くの冒険者の姿があった。
みんなそれぞれ思い思いの武装をした統一感のない連中だ。
てか、変人で悪かったな……。
オレは聞かなかったことにして冒険者ギルドの受付カウンターへと急ぐ。
「本日はどんな御用でしょうか?」
「変異個体を討伐した。確認を頼みたい」
「……今日も、ですか?」
「ああ」
受付嬢をしていたエマに頷いて応えると、エマはもう驚きすぎて疲れたと言わんばかりにガックリと肩を落とした。
「いったいどうなってるんですか、もう……。いいですか、ジャックさん? 普通、変異個体の討伐となれば、一流の冒険者パーティが入念な準備をした上で、討伐に挑むものですよ? それでも敗退することがあるというのに……。どうやって倒しているんですか?」
「いや、普通に?」
「絶対普通じゃないですよ!」
そう声を荒げるエマ。
なんで変異個体の討伐報告に来ただけなのに怒られないといけないんだ?
早く報告だけして今日はもう帰ろう。
「第二十四階層、羊の変異個体だ」
ゲームではレアポップモンスターには個体名が付いていたが、意外にもこの世界ではレアポップモンスターに名前は名付けられていないらしい。だから、報告する時はこんな感じだ。
「第二十四階層の羊ですね……。って、この間、第二十階層を踏破したら報告してくださいって言ったじゃないですか! なんでシレッと第二十四階層まで攻略してるんですか!」
「ああ、そうだったか?」
「言いました! 絶対言いました! おめでとうございます! これでジャックさんもブラックウッド級ですよ!」
「そんな怒りながら言われても……」
「怒ってません!」
オレはあまり興味はないんだが、第二十階層を踏破すると、冒険者のランクがホワイトウッド級からブラックウッド級になるようだ。
「冒険者はブラックウッド級から受けられる依頼が広がります。それだけ腕を信頼されているということですね。まぁ、ジャックさんはソロで変異個体を倒して回るほどですから、ブラックウッド級の範疇ではないのですけど……。依頼ですが、ダンジョン外での依頼の方が多いですが、中にはダンジョン内での依頼もありますので、クエストボードのチェックをお願いします」
「ああ」
まぁ、オレが依頼を受けることはないだろうなぁ。オレはダンジョンに潜れればそれでいい。金もレアポップモンスターを倒せばどっさり入る。わざわざ面倒な依頼を受ける意味はない。
「今度から、ちゃんと攻略した階層も報告してくださいね? ジャックさんはあまり興味はないかもしれませんけど、適正なランクで登録していただけると、冒険者ギルドとしても助かりますので……」
「わかったよ。それより、今回の懸賞金はいつになる?」
「はぁ……。今日はもう冒険者の方々も店じまいですので、早くとも明後日頃になるでしょうか」
「明後日か。わかった」
それだけ聞くと、オレは冒険者ギルドを後にしようとした。
「待てよ、死神」