軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

103 ダンスの後の

「ふぅー」

コレットとのダンスも一段落した時だった。最後の決めポーズでピタッと止まると、パチパチと大勢の人々の拍手が聞こえてきた。

「なんだぁ?」

「さあ?」

コレットと一緒に周りを見渡すと、みんながオレたちを見て拍手をしていた。無論、そんな予定は舞踏会に含まれていない。

「素晴らしいダンスだった」

「一年生であれだけ踊れるとはな」

「美しかったですわ」

「最高です」

拍手と共に聞こえてくるオレたちを称える声の数々。

だが、オレは冷静にそのことを受け止めることができた。ゲームの舞踏会イベントでも同じようなことがあったからだ。

舞踏会で最高の得点を取ると、拍手喝采を浴びることができる。それによって、学園内での知名度や評判も上がるのだ。

ゲームでは、知名度や評判は仲間を集めたり、友達になったりするのに必要なステータスだった。そのことを覚えていたオレは、コレットの学園内での評判を上げるためにこの作戦を立案したのだ。

このイベントが発生したということは、コレットの評判も上がるだろう。オレは内心ガッツポーズをしながらコレットの手を取った。

「ジル?」

「コレット、もう一回踊ろう。アンコールってやつだ」

「ふーん。ま、べつにいいけどよ!」

オレとコレットは、拍手の中もう一度ステップを踏み出した。

「ふぅー」

コレットともう一度ダンスを踊り、オレはコレットをエスコートしながら舞踏会の会場の隅へとやってきた。

「ははっ! 見たかよ、ジル? クラスメイトどもの驚いた顔を」

コレットがオレの腕に抱き付きながら小声で言う。その顔は完璧な淑女なのに、言ってることのギャップで風邪を引きそうだ。

「コレット、小声ならなにを言ってもいいわけじゃないぞ?」

「いいだろべつに。へへっ。これでクラスメイトたちも、もう俺のこと猿なんて言えないだろ? 猿に礼儀作法で負けたなんて認められないだろうしな」

「はぁ……」

オレの狙い通り、コレットはその本心はともかく擬態をすることを覚えたようだが……。これでよかったのかなぁ。ちょっと不安になるよ。

そしてオレたちはアリスの所に戻ってきたのだが……。そこにはアリスがいなかった。その代わりにいたのが、エグランティーヌとコルネリウスだ。アリスはどうしたんだ?

「ジル、コレット、素晴らしいダンスでした」

「二人ともすっごくよかったよ」

「ありがとうございます、エグランティーヌ殿下、コルネリウス。それで、アリスはどこに?」

二人にアリスの行方を問うと、二人とも眉を下げてお互いを見ている。

なんだか嫌な予感がする。なにかあったのか?

「ジル、アリスですが……。少し気分が優れないということで、あちらのテラスにいますわ」

「気分が?」

「ええ。ちょっと問題がありまして……」

エグランティーヌの言葉に、オレは弾かれたようにテラスへと歩き出す。

「あ、おい、ジル!?」

オレはいても立ってもいられず、コレットの腕を解くとテラスに足を踏み入れた。

アリスは、いた。こちらに背を向けて、まっすぐに立っていた。月明かりに照らされて、アリスの銀の髪がキラキラと輝いている。まるで満月の夜に妖精に出会ってしまったような非日常感がそこにはあった。

「ジル様……」

はっと息を呑んで声をかけれずにいると、アリスからそっと声をかけられた。オレは意を決してアリスに近づいていく。

「アリス」

なんと言おうか悩んでいると、再びアリスから声がかけられる。

「わたくし、見ていました。コレットと踊るジル様はキラキラして本当に素敵で……」

アリスがこちらを振り向くことはない。しかし、その肩はアリスの溢れる感情を表すように小刻みに震えていた。

「ジル様、わたくしは……。わたくしはジル様に相応しいのでしょうか? ジル様に愛していただける資格があるのでしょうか? わたくしは……。わたくしよりもジル様に相応しい方が――――」

オレはこれ以上アリスに言わせてはいけないとアリスを後ろから強く抱きしめた。

アリスの体が大きく震える。オレはアリスの気持ちが落ち着くことを祈ってアリスの細い体を掻き抱いた。

「ジル様……。わたくしは……」

アリスが震えた唇で言葉を紡ぐ。オレはそれを遮るように口を開いた。

「アリス、オレが愛しているのはアリスだ。愛されるのに資格なんて必要ない。相応しいかどうかだって他人が決めることじゃない。オレたちがこれから自分たちで目指すことだよ。外野の言葉なんて関係ない。勝手に言わせておけばいいさ」

「でも……」

「でもはなしだ」

考えてみれば、最近はコレットにかかりきりで、あまり二人の時間を取れていなかったな。だからアリスも不安になってしまったのだろう。これじゃあ婚約者失格だな。

「アリス、愛してる。オレの気持ちを受け止めてくれ。そして、アリスの気持ちもオレに受け止めさせてほしい」

「ジル様……。わたくしは……」

「アリスが承知するまで、オレはアリスを解放することはないよ? オレがアリスをどれだけ強く思っているか、この機会にわかってほしい」

「もう。ジル様は時々強引ですね。あの、もう少しだけこのままで……」

「ああ」