軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最高の仲間たち

夏至祭、三日目の運営は、驚くほど淀みなく流れていた。職人たちは迷いのない動きで料理を仕上げ、ボランティアたちは満面の笑みで客を誘導していた。

「肉巻きおにぎり串を、五本お願いします!」

「はい、少々お待ちください!」

職人たちは、この二日間ですっかり手慣れた様子を見せていた。手早くご飯を握り、薄切り肉を迷いなく巻きつけていく。数日前とは別人のような手際の良さだった。

串から立ち上る湯気は、 醤(ジャン) の甘辛い匂いを風に乗せて運び、鼻腔を強くくすぐる。肉の照りは、まるで飴細工のように光を反射し、その場にいるすべての者の目を奪った。

「わあ、本当に美味しそうね!」

「お好み焼きはいかがですか?」

隣の屋台では、別の職人が鉄板の上で生地を返している。特製ソースが熱い鉄板にかけられ、「ジュッ!」という景気の良い音を立てた。甘く香ばしい湯気が勢いよく上がり、ソースの芳醇な香りが肉の匂いと混ざり合い、祭りの活気を一層高めていた。

「この料理も珍しいわね」

客の女性が目を輝かせる。連れの子どもたちも、その鉄板から視線を釘付けにしていた。

「子どもたちも喜びそうね。家でも作れるかしら?」

ボランティアの案内を聞き、女性は即座に「ぜひ試したい」と意気込んでいた。リーナは美食エリアを見回す。誰もが自信に満ちた表情で接客に臨んでいる。

「今年の祭りは最高だった!」

「来年も絶対にまた来る!」

客たちの歓喜の声が、エリア全体に重なり合っていた。

空はまだ明るいものの、日差しは少しずつその勢いを弱め、広場には名残惜しむようなひんやりとした風が吹き始めていた。そして、空が橙に染まる前の、午後の早いうちに、彼らの料理はすべて完売した。

「完売だ!」

誰かが叫ぶと、歓声の渦が美食エリアを駆け巡る。

「やったー!全部売り切ったぞ!」

「うちの屋台も空っぽだ!」

リーナは両手をきゅっと握りしめた。三日間ですべて売れた。喜びが全身を満たしていく。

ガードルートは口元に深い笑みを刻み、腕を組んだ。

「上出来だ! 陽が高いうちに完売とは、想像以上の成果だ」

マルセロが帳簿を持ちながら感嘆の息を漏らす。

「これだけ早く片付けられるなら、打ち上げもゆっくりできそうですね」

「だな! さっさと片付けを急ぐぞ!」

やがて片付けが終わるころには、空は深い橙に染まっていた。屋台の木枠が取り外される乾いた音が広場に響き、人通りはまばらになっていく。

あれほど喧騒に満ちていた美食エリアには、心地よい静けさが訪れた。風に乗って運ばれてくるのは、薪と炭の落ち着いた香り、そして遠くで笑う人々の声だ。

広場の石畳は夕陽の残光を受けて金色に輝き、空気は祭りの余韻でまだ暖かかった。

「さて、乾杯の準備はいいか!」

ガードルートの声が響き渡る。

「今日はみんなで盛大にやるぞ!」

「おーっ!」

空には濃い藍が広がり、小さな星が瞬きはじめた。ランタンの柔らかな光が、集まった輪を優しく照らしている。

「それじゃあ乾杯だ!」

ガードルートが高く杯を掲げた。

「夏至祭、最高だった!みんな、本当にお疲れ!」

「お疲れーっ!」

全員が杯を打ち鳴らす。乾いた音が夜空に弾け、そこに解き放たれたような笑い声が重なった。

ギルバートが立ち上がり、Tシャツを脱ぎ捨てる。鍛え上げられた二の腕がランタンの光を受け、その影が広場に踊った。

「見ろ! この筋肉! 祭りの力仕事でさらに鍛えられたんだぞ!」

ボランティアの女性が顔を覆い、職人たちが腹を抱えて笑う。その隣で、マルセロがおもむろに鞄を開き、几帳面に 綴(と) じられた計画書を取り出した。

「さて……来年の計画書、ですが」

「やめろーーーー!!」

ガードルートは雷のような怒声とともにテーブルを叩いた。叩いた衝撃で、周囲のジョッキが音を立てて揺れる。

「酒の席で仕事の話すんじゃねえ! 今日くらい忘れろ!」

「ですが、未来を考えるのは大事です!」

「呑め! いいからその計画書と一緒に呑み込め!」

職人の一人が、マルセロの紙束をそっと取り上げ、代わりにジョッキを無理やり持たせる。周りからは「マルセロさん真面目すぎ!」「今日くらい休んでくれ!」と声が飛び交い、場は再び爆笑の渦に包まれた。

職人たちの自慢げな声が、ランタンの光の下で波のように広がる。誰もが己の料理の優秀さを主張し、その熱気は酒の力を借りてさらに高まっていた。

「いやいや、今年一番売れたのはうちの屋台だって!」

「何言ってんだ! うちの串焼きが一番行列できてただろ!」

それぞれが自分の屋台を主張する。鉄板焼きの香り、べっこう飴の美しさ。次々に自慢が飛び交い、誰もが譲らない。

「おいおい、落ち着けって!」ガードルートが手を振った。「決着つかねぇだろ!」

「だったら来年、料理コンテストやったらいいんじゃねーか?」

ギルバートの叫びに、場の空気が一気に沸騰した。

「いいな、それ!」

「俺が優勝してやる!」

「屋台の数も倍にしようぜ!」

次々に声が飛び出し、みんなの瞳が星のように強く輝く。

ガードルートがニヤリと笑い、リーナを指差した。

「おい、リーナ! お前はどうするんだ?」

リーナは一瞬息を呑んだ。その場の熱と光を全身で受け止める。高揚の波が、体の奥から湧き上がった。

大きく息を吸い込むと、彼女の声は夜空へ向かって響き渡った。

「来年は、今年よりもっと、もっとすごい料理を作ります! そして、私が料理コンテストで優勝します!」

再び笑い声と歓声が渦を巻いた。

「さっすがリーナだ!」

「リーナが出たら勝てねーよ!」

「そこはみんなで頑張って勝つんだよ!」

ガードルートが杯を高く掲げる。

「アードベルを、ブランネル王国随一の美食の街にするぞ!」

「おーっ!!」

歓声は夜空を突き抜けるように響いた。笑い声と熱気は途切れることなく広場から流れ出て、夜風がそれを遠くまで運んでいく。リーナは全身でその熱と光を感じていた。来年が楽しみだった。