軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

男友達しかいないサバサバ系女子

ミュリエルの言葉に、サロン内の女性が頷いた。

そうね、女性にだけ礼を失してるなら、それは嫌われるわ。

「は?」

「あなたの発言は、とにかく男性を褒め称え女性を貶める、そう言う類のものです。ケルミス伯爵令息とシャーロット様に対する言葉掛け、それだけであなたの意識が分かります。失礼な者を嫌う、当たり前では?」

「は?そんなことないよ、婚約者ちゃんにだって『可愛い』って褒めたじゃない!」

「可愛い、と言いさえすれば褒めてると思ってるなら、あなたの自意識は幼児以下です。言えばいいんだから。可愛いの前後に何を言ったかは覚えてないんですか?シャーロット様の可愛さは楽に嫁ぐためのもの、そう侮辱したんです」

「侮辱なんてしてない!」

「そうですか?やっぱり幼児以下ですね。あなたに合わせて、わたくしも騎士科を褒めて差し上げましょうか」

ウォーレン嬢を含めた騎士科に向けて、ミュリエルは冷笑した。

「騎士科の皆様は、運動神経 だ(・) け(・) 良くて得しましたね。頭を使わずに剣を振るってれば、それだけで何かを成し遂げた気持ちになれるのでしょう?作法や振る舞い、家のことをひたすら気にしなければいけないわたくしたちと違って、叩きのめしたら終わりなんて。鍛え上げられた筋肉を、どうぞお大事になさってね?衰えたらお終いですわ」

騎士科は全員固まった。

最後の一言『衰え』が、騎士たちの最も恐るべき単語だ。

ウォーレン嬢は体を震わせた。

「っっ、褒めてないよ!馬鹿にしてる!」

「褒めましたよ。あなたと同じように、『運動神経は良い』と。それを馬鹿にしてる、と捉えたなら、あなたも先程無意識にシャーロット様を馬鹿にしたんです」

「〜〜!」

ライアンに突き付けた扇を開き、ミュリエルは優雅に微笑んだ。

「ウォーレン嬢。あなたが嫌われるのは、あなたが騎士以外の人間を見下してるから。騎士に見初められたら幸せ、などと馬鹿げた発言をなさってる時点で、あなたは全ご令嬢から嫌われる人間です」

「なんでよ!騎士に見初められたら、騎士と結婚出来るんだからいいじゃない!」

「結婚することが幸せ、とかわたくしたちの祖父母世代の発想ですけど。まあそこは良いでしょう。わたくしから言わせてもらいますとね、ウォーレン嬢。見初められる最高峰は、騎士ではないんですわ。だって、騎士って所詮は 宮(・) 仕(・) え(・) なんですもの」

そう言って、ミュリエルがこちらに目を向けた。

釣られて私を見たウォーレン嬢が、目を見開く。

「お分かり?全ての騎士には仕えるべき主人がおり、その主人たちを束ねるのが王家です。王族に見初められたマリアベルを前にして、たかが騎士科生徒ごときに声を掛けられたくらいで喜べなんて……はっ、鼻で笑うわ」

あ、ミュリエルの貴族の皮が剥がれた。

よしよし、ありがとうねーミュリエル。

彼女の隣に立ち、ポンと背を叩く。

ミュリエルは口を閉じ、私がまた交代だ。

「ケルミス伯爵令息。ウォーレン子爵令嬢。この騒ぎについては、各家・教官・そして王家に報告をさせてもらいます。守るべきご令嬢を敬えない騎士なんて、全く信頼が出来ないわ。あなた方がその考えを改めない限り、騎士になる道はないと思いなさい」

二人は顔を青褪めさせた。

ついでに後ろの騎士科一同にも忠告しておく。

「面白そう、とだけでついてきたあなた方も同じよ。仲間を諌められない、間違いを正せない騎士なんて不要です。今一度、ご自分たちの〝騎士道〟とはなんなのか、よく振り返って見ることね」

ミュリエルも彼らに指摘する。

「ねぇ、男女逆にして考えてみて?女性の集まりに男性一人、『男なんてどうしようもないよねー、女性の大変さをちっとも理解しないでさ。俺は女性のこと分かるよ、友達だから』とか言ってて。女性たちは『女友達みたいなものよ』ってちやほやしてて。あなた達、その男性と仲良くなれる?周りの女性たちに『僻んでるのよ、やーねー』とか言われて、その女性と結婚できる?わかってねえなコイツ、て思うでしょ?今、わたくしたちご令嬢一同はあなた達をそう見てるのよ。この先ご縁があるといいわね?」

同じくらい青褪めさせたところで、サロンの入り口が賑やかになる。

「シャーロット!ルキア!」

「マリー!ミューも、大丈夫か?!」

「お前たち!こんなところでなにしてるんだ!」

ヘンリック様、殿下、騎士科の教官たちが一斉に入ってきた。

殿下が駆け寄ってミューとともに抱きしめられたところで、ようやく緊張してた体の力を抜く。

ヘンリック様もルキア様とシャーリーの肩を抱いてた。

騎士科生徒たちは全員教官に連行されてく。

殿下が不思議そうに見ていた。

「……何があったんだ?あんな大勢で」

「『女に嫌われる女』です」

「は?」

ミューの返事が聞こえたのか、シャーリーがこちらを潤んだ目で見た。

「シャーリーとは違うタイプの、ね」

「マリー様、ミュー様……!」

「お二人とも、シャーリーのためにありがとうございました」

自称保護者のルキア様が礼を言い、シャーリーも頭を下げた。

それを見て、ミュリエルが貴族ではない素の顔で笑う。

「ああいうタイプもいるのね。サバサバ系、だっけ?男友達が多くて女子の受けが悪いー、的な」

「はっきり言うから嫌われてる、て思ってたみたいね。言ってる内容が酷いから嫌われてるのに、そこは気付いてなかったとか都合のいい頭してる」

「そんなに酷かったのか?」

「主に対象がシャーリーだったけどね。男尊女卑の思考を持つ女騎士とか、絶対雇いたくないんだけど」

「そうですわね。女性の立場から男性騎士の言い寄りを煽るなんて最低です。正当化されて、付き纏われそうでしたわ。ヘンリック様、きちんと対応してくださいね」

「わ、わかった」

ルキア様の進言に、ヘンリック様がしっかりと頷く。

これで二度とライアンは近寄れないだろう。

どうにか落ち着いたが、今日はもうサロンを閉めるらしい。

帰り支度をしながら、ミュリエルにこっそり囁く。

「……替わってくれてありがとうね、ミュー。話が通じなさ過ぎて、本当にどうしようかと思った……」

ミュリエルがふふ、と笑う。

「どういたしまして。気にしなくていいのよ、マリー。一度言ってみたかったし」

「?何を?」

「『女に嫌われる女』に対してね。なぜ嫌われてるのか、もう少し考えろ、って。周りが嫌ってるのではなく、あなたが 嫌(・) わ(・) せ(・) て(・) る(・) んだって、思い知らせてみたかったのよ」