軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

63話 デキムス商会第一期決算報告会[1/2]

狂乱の 農神祭(サトゥルナリア) を利用した、ぞんざいな態度と真面目な話を織り交ぜたガンギマ共との白熱の交渉により、古代ローマの人力オーパーツLLMこと俺の トークン利用制限(事前アポ制) を何とかガンギマリ共に納得させ、ようやく迎えた前世の記憶から数えて2度目となる新年。

と言っても、風習上の新年は3月、アンナ・ペレンナの祭りの方がローマ人にとってはなじみが深いため、 執政官(コンスル) の就任式などの国家イベントや、親しい者同士で守護神ヤヌスにちなんだプレゼントの交換などはあれこそすれ、正月は前世日本に比べるとあっさりしたモノだったりする。

そんなこんなで新しい1年も始まり、今はもう1月も下旬となっております。

さて、皆、忘れてることない?

そう、俺がローマに来た理由。

ポンペイからの脱出先というだけではなくて、なんか目的あったよね?

なんだっけ? ガンギマリに知識チート流してローマを宇宙勝利させるRTAだっけ?

違うよ? そんな俺に何の利益もないRTAはしないよ!

俺の今挑戦中RTAは最速奴隷解放RTAだよ!

はい、そんなわけで今回はですね!最速奴隷解放RTAの途中経過報告こと、デキムス商会決算報告会を皆さんにお見せしていこうとぉー思います!

厄介ごとの制限がとりあえず可能になった事によって緩んだ頭を引き締めるために、いつものように脳内で架空の新規投稿動画を副音声にしつつ、俺は意識を目の前の 執務室(タブリヌム) に移す。

今日、エスクイリーヌスの丘にある 我が家(デキムス邸) に集まったのは、いつものガンギマリ――ではなくデキムス商会に関わるポンペイからの面々、通称ポンペイ・オールスターズ。

ガルム王ことアウ爺、新興洗濯商人ステファヌスさん、ポンペイのパン業界のドンことテレンティウスさん、商会主たるデキムスさん、俺の主家たるルクレティウス家の 家財管理奴隷(ヴィリクス) でソキエタスとしての唯一の出資者であるフェリクスのおっちゃん。

フェリクスのおっちゃんはルクレティウス家の 家財管理奴隷(ヴィリクス) のため、俺がローマに進出して以降も基本的にポンペイに残留していたため、会うのは何気に半年以上ぶりとなる。

ちなみに、なんで決算報告会の場に、製造関係をほぼ任せているアウ爺や、初期出資者で主家関係者であるフェリクスのおっちゃんはともかく、ステファヌスさんやテレンティウスさんも参加しているかというと、これには浅い理由がある。

一言で言うと、 麦の蜜(水あめ) 事業はテレンティウスさんに、化粧品事業はステファヌスさんに、実務面はほぼ丸投げすることにしたからだ。

なんで丸投げすることになったかというと、元々デキムスさんに爆速成長してもらってその辺を担ってもらう予定だったのだが、デキムスさんは法人税と有限責任組合の制度化のために財務官僚やドミティアヌス殿下の サンドバック(複式簿記講師) になってもらう必要が出てきたから。

デキムスさんが真面目にパンクしかけているのを察知した二人は、俺に対していい笑顔で売り込みをかけてきたので、忙しかった俺はその申し出をそのまま快諾してフランチャイズ事業全般に本格的に関与してもらうという流れになったわけだ。

「それでは皆さんお集まりいただいたことなので……昨年の決算報告を始め、ます」

デキムスさんが、積みあがる 蝋版(タブラ) の山を片目に、開会を宣言する。

「じゃあまず儂が担当している、工房の製造報告から」

それに呼応するように、まずはアウ爺が製造原価報告書にあたる書類の報告と、トピックとしての製造高や今後の見込みを報告しだす。

話の内容をかいつまんで抽出すると、供給能力は稼働後3か月で安定化。麦の蜜、化粧品共におおよそ20万人程度の需要規模への対応は可能な供給能力は安定して出せる見込みとのことだった。

そしてアウ爺の報告の後は麦の蜜事業をテレンティウスさんが、化粧品事業をステファヌスさんが行っていく。

いずれも数字は絶好調、トピックスとしては今年の春にはようやく需要に対してローマ内においてはきちんとした供給体制が確立しそうということだった。

それぞれの事業の経常利益は 麦の蜜(水あめ) 製造販売9万1千セステルティウス、 麦の蜜(水あめ) フランチャイズ8万3千セステルティウス、化粧品製造販売7万2千セステルティウス、化粧品フランチャイズで5万5千セステルティウス。

「合計すると、昨年の利益は30万1千セステルティウスとなります」

二人の報告が終わった後にデキムスさんはすべての数字の合算を全員に提示する。

「おぉ、なかなかいったな」

「ある程度四半期ごとで数字が見えていたから予測はしていたが……」

「実際に目の当たりにするとすさまじいな……初年度、しかも本格的に売上が立ちだしたのが春以降で、この数字だろ?」

デキムスさんのまとめた数字にアウ爺、テレンティウスさん、ステファヌスさんは三者三様の反応を見せる。

特にアウ爺はともかく、他の二人は自身のポンペイでの商売の年商(つまり売上)と同額以上の利益がすでにこの事業で出ているという結果に驚いているようだった。

もちろん事前に見込は伝えているし、数年で俺が100万セステルティウスを稼ぐといった以上、想定していた数字ではあるだろうが、実際に結果を見るのはまた別ということだ。

そして、その二人以上に愕然とした顔をしている人が、一人。

そう。フェリクスのおっちゃんだ。

「な、なあルシ坊。これ、出資分の分配金って……」

「元の約束の時通り2割だから……60200セステルティウスかな」

「……あらかじめ覚悟してこなかったらここで頭痛で倒れてたところだ」

俺が金額を耳打ちすると、目頭をもみながら半分あきれ顔で感想をこぼすフェリクスのおっちゃん。

分かっていただろうに、何をいまさら。

マルクス様の判断により、マルクス様の手配でデキムスさんに出資していることになっているため、この分配金のかなりの分はルクレティウス家のものになるとはいえ、それでも1万5千セステルティウス程度はフェリクスのおっちゃんの手元に残ることになるだろう。

それは、大体ローマ軍の100人隊長の年収に匹敵する。

身の振り方を考えなければいけなくなる額と言っても良い。

「ここで頭を抱えるレベルだと困るんだけどなぁ」

「……嫌な予感がする、帰っていいか?」

俺の言葉に、フェリクスのおっちゃんが椅子から腰を浮かせようとする。

「ダメ」

当然ながら俺はそれを制止する。

ちゃんと聞いていかないとだめでしょ、マルクス様への報告もあるんだから。

というか本題はこれからだからね、今までは去年の話。本番はこれから議題に上がる今年の話なんだから。