軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14話 リバーシを作ろう

「ルシウス!できるわよね!?」

蒸留酒(エタノール) の入った壺をしまい、蒸留器の後片付けをしようとしている俺にルクレティアお嬢様は有無を言わせぬ圧を唐突にかけてくる。

せめて用件だけでもいいので話してくれません?

誰か助けてくれないかなーとあたりを見回す。

あ、2階のフェリクスのおっちゃんの部屋の窓からフェリクスのおっちゃんが顔を出している。

蒸留実験を終えるのを待っていたのだろう。

要件は多分デキムスさんの工房の件かな?

ちょうどいいや、おーいタスケテー。

あ、俺の前に立つルクレティア様の背中に気づいた。

……あぁ!何事もなかったかのようにスッと窓を閉めやがった!!!

管理奴隷(ヴィリクス) として関わってはいけない 嵐(無茶ぶり) を察知する能力は超一流なフェリクスのおっちゃん。

あーそういうことするんだ?

それなら今回の無茶ぶり俺も自重しないからね?あとで文句言わないでね?

心の中で悪態をつきながら、孤立無援になってしまった俺は仕方なくルクレティアお嬢様に向き直る。

「あの、せめて何をすればよいのか教えてくれません?」

「あれ?言わなかったっけ?」

出来るわよね?しか聞いてないんですが。

「しょうがないわね。じゃあ一から説明してあげるわね―――」

そう言って先ほどまで開かれていたお茶会の推移と、その後のお嬢様の地位の危機、それの打開策を語りだすルクレティアお嬢様。

ふむふむなるほど?

「……えーと、つまり来週開かれるウンブリキア・テルティア様主催の昼食会までにポンペイ……いえローマにまだ存在しない新しい 遊戯(ゲーム) を考えた上で貴族や豪商のお嬢様のお眼鏡にかなうレベルの物を工房などを使って作れ、と?」

どんだけ無茶なこと言ってるかわかってます????

「できる?できるわよね?ありがとう!!」

……ハイヨロコンデーと言う回答以外聞く耳を持たないんですねわかります。

「……大理石とか宝石を使った細工はまにあわないですよ?」

なので、とりあえずどう考えても無理なものをつぶす方からしていこう。

「うーん、木工細工で作る遊びかぁ……ルクレティウス家としてはちょーっと『格』が落ちるけど仕方ないわね。それでいいわ」

「使えるお金はどれくらいです?」

「銀貨数十枚くらいならフェリクスに言えばすぐ出せるでしょう?今回の件はお母様も賛成してるし」

それなら製作費については大丈夫か……。

とりあえずすぐにできるとは言わずに少し考えるそぶりを見せる。

それにお嬢様が不満げな表情を見せだしたあたりで俺はこう切り出した。

「うーん……ちょっと案を練りたいので、ネタ探しに街へ外出してきていいですか?」

「いいわよ! ただし、夕方までに職人への依頼も済ませてね!!」

お嬢様の中ではもうすでに俺が新しい遊戯の制作に乗り出していると脳内変換されたらしい。

前世の日本基準で考えるとブラック企業の経営者も真っ青だ。

そんなポンポン新しい遊戯なんて―――

あるんだなぁこれが。

前世の記憶万々歳である。

現在日本は娯楽があふれていた時代だ。

その中でも古典的なボードゲームでも古代基準なら最新 遊戯(ゲーム) 。

なんなら今までの知識チートの中で最も難易度低いまである。

まさに「こんなこともあろうかと」とドヤ顔しながらお出しできる部類のチートである。

そんなことを言った日には無茶ぶりが悪化することは一目瞭然なので言わないが。

内心でほくそ笑みながらお嬢様をかるくいなして俺はお嬢様と別れる。

とりあえず 危機回避をした(見捨てやがった) フェリクスのおっちゃんの部屋に 凸(とつ) ってフェリクスのおっちゃんからパピルス1枚とペンとインクを 強奪(カツアゲ) し、ボードゲームの試作品用の材料その1を調達。

さて、何にするか。

チェスは納期一週間では凝った駒を作るのが難しいし、すでにラトルンクリというチェスの原型になるゲームがある。却下。

モノポリー……はルールが複雑すぎるし、貴族の令嬢たちが刑務所に入ったり破産したりするゲームはまずいな、却下。

となれば、ここはリバーシだな。

ルールは簡単だし道具もシンプル、それでいて奥が深い。

娯楽があふれている現代日本でも大ヒットしたというお墨付きもある。

とすると材料は台所の生ごみ置き場にある貝殻とかでいいか。

あさりとかの小さ目の貝殻を生ごみから漁って水洗いし、パピルス一式と一緒に袋に放り込む。

これでプロトタイプの材料はできたので、あとは製造関係兼 アイデア元(共同発明者) として丸投げと責任を押し付けれる人を探そう。

……と言ってもそんなのは一人(二人?)しかないわけだけど。

「あ、あールシウス君だ!」

邸宅を出て大通りを歩いていると、曲がり角からひょっこりと顔を出す少女。

その声はすごいわざとらしく偶然を装っている。

そうルシアだね。

麦の蜜(水あめ) の取引が本格化して以来、俺をストーキングしている君ならすぐに釣れると思ったよ。

正確にはアイデアはルシアに、製造系の調整はデキムスさんに押し付けるつもりだ。

「こんにちはルシア。ちょうどいいところに。デートしようよデート」

「んー?デート?……ついにルシウス君も私に興味が!?」

ついにって、そんなことを言うほど付き合い深くないんだが、ルシアの中ではアプローチの結果が実ったと認識されているようだった。

俺らの歳でハニトラってまだ早くない?

まあルシアは普通に美少女なのであと2~3年後くらい後だったら普通に引っかかってたと思う。

だが今は俺も そう言う欲(色恋や性欲) はないし、ルシアもまだちんちくりんなんだよなぁ。

まあアリバイ作りなので釣れれば何でもいいや。