作品タイトル不明
108話 温泉バカンスと貞操危機②
てっきり湯あみ着のようなラインのあまり見えないゆったりとした服を着てくると思っていた俺は現代基準で見ても結構攻めたデザインの二人の格好に絶句する。
今の俺は十三歳。
体は思春期で性欲も出てくる時期なのだ。正直煽るのは勘弁してもらいたい。
そんな俺の内心を知ってから知らずか、肌面積の多い装いで俺の前に立つ二人。
二人とも純白のスブリガークルムとストローピウムというスタイルなのは同じなのだが、そのデザインは全くの逆だった。
ルシアは胸当てであるストローピウムは普通の細長い布をひねったようなデザインでしっかりと巻かれており胸のラインは比較的目立たないようになっている。
一方で、腰布であるスブリガークルムは現代で言うところの紐パンのようなデザインで、くびれと下腹部を強調するようなデザイン。
他方のルクレティアお嬢様の着こなしはその真逆。
スブリガークルムは一般的なふんどしタイプのデザインなものの、ストローピウムはゆったりとゆるめに着こなし、更にその上にストラを超短くしたような薄手の布を重ね着している。
おそらく石鹸が入っているだろう巾着を紐でたすき掛けしていることもあって、その布がぺったり肌に張り付くことで逆に胸の形を強調するような状態になっている。
一言で言うと透け濡れπスラッシュ状態。股間に悪い。
姿勢もそれに合わせたスタイルで、ルクレティアお嬢様は胸の下で手を組んで胸を持ち上げるようなスタイルでこちらに自信満々な顔を向けており、ルシアは腰に手を当てて臀部を強調する姿勢。
そんな真逆のスタイルの二人だが共通する部分も。
二人とも……野獣の眼光をしていた。
まるでちょこまかと逃げ回るウサギを追いかけ続けてようやく距離を詰めたとかそんな感じの、例えるなら『ようやく追い詰めたぞこの野郎』といった意志を若干感じる視線。
しかしそれはそれとしてお嬢様の布が張り付いた胸とルシアのへそから足の付け根のラインに目を奪われる俺。
だってこの肉体は十三歳。
性欲に目覚めるお年頃なんだもん。
そして最終的に視線はお嬢様が腕で持ち上げる布が張り付いた双丘に吸い寄せられる。
これで十二歳ってマ?
「勝った……!!」
「ルシウス君そこは私の下腹部とお尻のラインじゃないの!? 男の人ってここが好きって聞いたんだけど!?」
胸>臀部な俺のジャッジに抗議の声を上げるルシア、勝ち誇るお嬢様。
ローマ人的には引き締まった胸や腰からふくよかな臀部が良いと 公共浴場(テルマエ) の猥談などではよく聞く。
が、それは一般的なローマ人の嗜好であって俺は胸が好きなのだ。
特に、ローマに来てからのお嬢様は今強調してるように胸の発育が著しかったからなぁ……。おっぱいおっぱい。
……いかん。精神が身体に 引(ひ) き 摺(ず) られてIQが下がってる気がする。
「ふふん。やっぱりルシアは詰めが甘いわね。一般的な男性の嗜好はそれはそれ。夏場の中庭で薄着で過ごしてる時とかにルシウス、私たちの胸をチラチラ見てたでしょう?」
バレテーラ。
「うっ……でもでも、お尻とかおへそとか普段見せないじゃないですか! 男の人がそっちが好きって聞くし」
「でも事実として胸が勝ったわけじゃない? そんなわけではい、ルシウス!」
何らかの勝負に買った様子のお嬢様が胸を突き出した姿勢でどや顔を向けてくる。
しかし少し緊張しているのか、頬はすこしピンク色に染まり、耳も真っ赤だ。
……とりあえず頭を撫でておくか。
なでなで。
「……」
むんず。むにぃっ!
「!?」
お嬢様の頭を撫でる俺の右手をお嬢様は無言で掴み、そのままストローピウムにある盛り上がりに誘導し、わし掴み状態になってしまう。
「ちょ、お嬢様!?」
「ルシウス君、左手空いてるね? 貰うね?」
予想外に展開に動転している俺の右手をつかみ、下腹部に誘導しようとするルシア。
「ルシア!? え!? ちょっとまって!?」
「貸し切り温泉で年頃の男女が三人。何も起こらないわけがないわよねぇ? ましてや妻 (予定)と妻公認妾 (予定)よ?」
「ルシウス君。お嬢様曰く、私の立場を盤石にするには、絶対じゃないけどそろそろ子どもがいた方がいいんだって? これ以上言うのはちょっと恥ずかしいから察してほしいかなって」
「察するも何も直球では?」
「いいから抱けって言ってるのよ! 大丈夫! 私は婚前だから最後までできないけど妾のルシアはOKだから!」
「全然OKじゃないんですが!?」
口ではぎりぎり軽口を発せているものの、心臓はバクバクと鳴り響いており、理性は既に黄色信号だ。
なんとなく性的に襲われそうな気配は感じていたものの、あまりにロケットスタートな展開に俺は理性と脳の処理の整合性がつかない状態になってしまう。
それによって抵抗しようにも力が入らず、それを好機と見たのか二人はそのまま自らがまとっている布、ルクレティアお嬢様はストラ状のストローピウムの留め具に、ルシアはほぼ紐パンと言っていいスブリガークルムの紐から手をかけ、それと同時に二人して俺の腰布を脱がそうと俺の下腹部に手を伸ばし始める。
「待ってくださいお嬢様! こういうのは本当に今からじゃないとダメなんです!?」
「必須じゃないけど。もしルシアに先に子供が出来たら色々望ましくはあるわ」
「必須じゃないならちょっと先送りにしません!?」
「ルシウス君……私とそういうことしたくないの……?」
俺の抵抗に対しルシアの瞳に涙が溜まり始める。
「いや、そうじゃなくてね!」
「何よ! ルシウスも私やルシアをそういう目で見てるでしょ? 何が不満なのよ?」
「まだ早いって話をしてるんです!」
「あぁもうじれったい! 脱がせば大人しくなるでしょ! ルシア行くわよ!」
「はいお嬢様! ルシウス君安心して! 痛いのは私だけだから!」
具体的な説明をしようとする前に俺が単に 日和(ひよ) っているだけと判断したのか、お嬢様が対話を打ち切ってルシアと組んで押し倒そうと試みてくる。
「あーもー! やめろっていってんだろ!!!」
それに対して、俺は普段のお嬢様への敬語を投げ捨て本気でキレた。
これは俺の理性とか性的嗜好とかローマの常識とか、そういう言う問題ではないのだ。
ヤりたいかヤりたくないかで言えばヤりたいに決まってるだろうが。
だがそういうことじゃないんだよ。
ルクレティアお嬢様は十二歳、ルシアは十四歳。
その年齢でこの先に進むのはまずいのだ。
残っている理性を総動員し、精神が身体に流されるのを押さえつけるようにして俺は叫んだ。
「二人とも一回湯の中に入れ!!」