軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5年越しの真実【前】

「で、あなたたちは一体なぜ会いに来たの?うれしいけれど、驚いたわ。せめて連絡してくれたら、迎えにだって行けたのに」

「「ごめんなさい」」

しゅんと反省する二人。

まさか姉に会えないかも、なんて思いもしなかったそうだ。

「でも、アレンディオ様が戻ってきたって拾った新聞で読んで……」

ニーナ。拾ったっていう部分は言わなくてもいいんじゃないかな?

お姉ちゃんはちょっと今ドキドキしているよ?

ここには私たちとユンさん、ヘルトさんしかいないけれど、あまり実家の窮状は言わないで欲しい。

「アレンディオ様が帰ってきたら、きっとお姉様が責められるって思って」

「責められるって、何を?すっかり忘れていたこと?それはまだ白状していないから大丈夫よ」

「ぶはっ!」

サミュエルさんが紅茶を噴いた。

気管に入ったのか、ゴホゴホと咳き込んでいる。

ニーナは大事に抱えていたリュックをテーブルの上に乗せ、そっと私に向かって差し出した。

「これは?」

「アレンディオ様が、お姉様にって贈ってくれた誕生日の贈り物なの」

「贈り物?」

心臓がドキンと跳ねる。

あぁ、嫌な予感がする。

手紙はお父様宛てに半年に一度送られてきていた。

この10年間、彼との接点はそれだけだった。

そう、思っていた。

恐る恐るニーナの顔を見ると、今にも泣きそうに顔を歪めていった。

「ごめんなさい……!お父様が、贈り物を売ってしまっていたの。お姉様には秘密で」

「なっ!?」

「たまたま最初の贈り物が来たときに、お父様が受け取っているのを私が見ちゃって。サミュエルさんが来たときに聞いてみたら、高級そうな荷物をお父様から買い取ったって……。だから、『いつか必ず買い戻すから、それは絶対に他の人に売らないでください』って、質屋の店頭に並べないでってお願いしたの」

「そんな……」

くたびれたリュックの中身は、アレンディオ様からの贈り物だった。

サミュエルさんは約束通り、贈り物を売らずにずっと置いておいてくれたらしい。

「俺だって商売だから売ろうかと思ったんだが、仮にも伯爵家のご子息からの贈り物を転売して裁判沙汰になったら利益なんて飛んじまうからな。別にこいつらに同情したから、預かっておいたわけじゃないぜ?まぁ、嬢ちゃんは都会で働いているから、そのうち自分で買い戻せる金を稼げるっていうのも見越してたさ」

サミュエルさんだってさすがに利のない商売はしない。でも必死に頼んだ妹に同情したのも確かで。

「ありがとうございます。何てお礼を言ったらいいか」

「いや、礼はこれを買い戻してからだな。こいつらが内職したり働いた給金では、全部を買い戻せねぇ。嬢ちゃんが差額を支払ってくれるなら、今すぐにこれは嬢ちゃんのもんだ」

金額を尋ねると、今の私に払えない金額ではなかった。うちが没落のピークを過ぎていたことが何より大きい。

王都にいる間、城の窓口へ取りに来てくれと伝えると、サミュエルさんは2つ返事で了承してくれた。

私はここで、彼への面会許可を紙に書き記して手渡す。

弟妹が払った分も私が支払うと言ったけれど、それは受け取れないと断られ、そのあたりのことは姉妹で話し合ってくれと匙を投げられた。ごもっともである。

「でもお姉様、そもそもお父様が贈り物を売ってしまったのは、私とエリオットの生活費や学費のせいなの。出稼ぎに出るのも、学校を出ていないといい勤め先がないってそれでお父様は無理をして」

「そうね。確かにアカデミーを出ていないと、貴族っていう身分が逆に足を引っ張るかも……」

誰だって、貴族令嬢を雇いたくなんてない。面倒事があったら困るからだ。

私も、弟妹にはアカデミーを卒業してもらいたかった。

「だからって、私のためにニーナとエリオットが苦しい思いをして働いたお金を使うわけには」

いつだって、弟妹には私が助ける側でありたい。

姉としての見栄なのだ。

「本当なら僕たちが全額払って買い戻してから、姉上に渡したかったんだけれど……」

エリオットが悔しそうに言う。

「2人ともありがとう」

その気持ちがうれしかった。

「だって、好きな人からの贈り物を知らないうちに売られちゃうなんて悲しすぎるわ。アレンディオ様からの愛情でしょう?贈り物って」

妹が盛大に勘違いしている。

好きな人って、もしかしなくてもアレンディオ様のこと!?

ここで否定するなんて無粋なことはできない。さっきすでに「忘れていた」って口走っちゃったけれど、あれはもう妹の記憶から消えているみたいだから触れないでおく。

サミュエルさんだけは「嬢ちゃんは別に好きじゃないんじゃ?」って顔してる。今だけは黙っていて!恩人だけれど何も言わないで!!

しかしニーナはここで、さらに衝撃的なことを告白した。

「3回目に贈り物が届いたときには、商人さんの偉い人を捕まえることができて、それで私がお願いしたの。『お姉様はアレンディオ様のことをずっと待ってますから、絶対に迎えに来てください』って」

「なんですって!?」

思わず叫んだ私。もう品性が、とか気にしている余裕はなかった。

サミュエルさんも頭を抱えている。

「それは商人さんが、アレンディオ様に……?」

私がずっと待っていると、彼に伝言をしたということなのだろうか?

司令官級の騎士には、商人としては取り入っておきたいと予想できる。

きっとニーナからの伝言は、アレンディオ様に届いている。

「その伝言を、彼は真に受けていたってこと……?」

目の前が真っ暗になった。

待っていてくれてありがとう、確かに彼は再会したときこのお邸でそう言った。

商人から伝言を聞いていて、私が彼の帰りを今か今かと待ち続けて10年経ったと思っていたなら……。

「勝手にごめんなさい!でもアレンディオ様がちゃんと迎えに来てくれるようにって、出世したから他の女の人の方に気が移らないかって私、心配で」

夫を待ち続けた健気な妻、そんな像が出来上がっている。

存在すらうろ覚えだったという現実との乖離がすごいわ!!

ニーナを責めることはできない。私の未来を案じてのことだったんだから。

ただ、状況を整理すると「待ってます」と伝言をお願いしたにもかかわらず、いざ帰ってきたら私は彼の変化に戸惑って邸から逃亡し、引越しはしたくないと拒絶し……。

あああああ、もうどうすれば!?