軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編ss「ハロウィンだそうです」

本編がシリアスに片足突っ込んでるときに限ってイベントは訪れます…!

「パンツの日」SSと同様に、

アレンディオがおかしなことになっていることを

あらかじめご了承ください。

◆◆◆◆◆

騎士団の執務棟にて、今日もアレンディオは心を無にして書類仕事をこなしていた。

本編で何があろうと、将軍は平和の象徴として剣よりペンをとっていなくてはならない……。

「もうこの書類に囲まれている設定、終わりにしないか?ヒーローというポジションである限り、やはりソアリスの危機には絶妙なタイミングで駆けつけるのが仕事だと思うのだが」

すぐそばに立つ補佐官に対し、アレンディオは恨み言を放つ。

が、ルードは申し訳なさげに苦笑するばかりで賛同はしてくれない。

「諦めてください。そもそもあなた様は十年も不在だったのです。いわば、いない系ヒーローなのです」

「扱いがひどいな。だいたい、最近はジャックスの方が目立ってないか?護衛だからってソアリスのそばに毎日いる時点で腹立たしいのに」

全方向に苛立ちをぶつけそうになっているアレンディオを見て、ルードは呆れていた。

「あなたが選んだんでしょう、奥様の護衛。アレン様が嫉妬深いからって、ジャックスなんて『どこにでもいる顔』だとか『印象に残らない』とか外見スペックは中の中なんですし、そこはもう許してあげてもらいたいですね」

ここでアレンディオはふと気が付く。

「そういえば、当初あいつは騎士団内に彼女がいる設定ではなかったか?」

「そんなの誰も覚えていませんって。長編になれば、何か起こるのは仕方ありません。別作では、ヒーローに弟が2人いる設定だったのに1人完全に忘れられていて出版後に気づいてますからね。ジャックスの彼女なんて忘れ去られてますよ。そもそも、別作で凡ミスが多発しているのにこの『嫌われ妻』だけが無事なわけないじゃないですか」

「そうか。ジャックスうんぬんの前に、俺たち全員に何かしらが降りかかる可能性があるんだな……」

かすかに笑いを漏らすアレンディオ。

しかしルードは気づいていた。

今のところ、何かおかしな点が発生する可能性が高いのはヒーローであるこの男だということに。

これは本人が感じ取らないうちに話題を変えよう。

ルードはわざと明るく装い、本日のお題を口にする。

「そういえば、アレン様。今度はハロウィンだそうです」

「…………そうか」

「おや、反応が薄いですね」

パンツの日に食いついておきながらこちらには反応を示さないとなれば、それはそれで別の問題が発生するのでは。勘のいい補佐官は慌ててハロウィンのよさを訴えかける。

「アレン様!ハロウィンは、様々な衣装を着て遊ぶコスプレというものがあるそうですよ?奥様はどんな衣装を着てくれるんでしょうか、楽しみですね!それに、子どもたちがお菓子をもらいに家々を訪問し、『おかしをくれなきゃいたずらするぞ』なんて言って楽しむそうです」

「はっ、どうせ今回も不憫で終わるんだろう?七夕SSもそうだった。それにパンツの日なんて、俺はこの執務室から出ることさえできなかった……。もう期待して落とされるのはたくさんだ。今日はもうずっとここで仕事をする。本編でイチャつければ十分だ。この場には期待していない」

アレンディオは拗ねていた。

再び書類に目を落とし、断固としてハロウィンには乗っからないぞという意思表示をする。

困った補佐官が哀れみの目を向けていると、ここへ救世主が現れる。

――コンコン。

「お届け物でーっす。ジャックスでーす」

陽気な声。

そして、返事をしていないのに開く扉。

二人が目をやると、そこには大きなかぼちゃと巨大な箱を持ってきたジャックスがいた。

黒いフード付きマントに血塗れ&蜘蛛の巣メイクを施した彼は、剣の代わりに腰からほうきを下げている。

「うわぁ、全力な奴が来ましたね」

ルードが呆れて声を上げた。

「もう準備が大変で。朝から二~三人をヤッてようやくこの血濡れが完成したんですよ~」

ジャックスは、リアリティを追及する男だった。

「ルード様にはかぼちゃ、アレン様にはこっちです」

かぼちゃからは甘い匂いがした。

上部に切れ目が入っていることから、中に菓子が入っていることは予想がつく。

いったんテーブルにかぼちゃを置くと、アレンディオ宛てだという巨大な箱に注目した。

「まさか中にソアリスが!?」

椅子を弾き飛ばすように立ち上がったアレンディオは、慌てて箱に駆け寄る。

――バコンッ!

そしてフタを力任せにはがすと、中には予想通り最愛の妻が入っていた。

「ソアリス!?」

「アレン、一体今日は何なのですか……?ユンさんに着替えさせられて箱に詰め込まれて、いつの間にかここへ」

ひざ丈のメイド服を着たソアリスは、説明もされず運ばれてきたらしい。

「それは、コスプレか……?」

「コスプレ?そういえばユンさんもそんなことを言っていましたが」

箱の中に座っていた妻を抱き上げたアレンディオは、一向に下ろそうとしない。

「何を着ても似合うが、まさかメイド服を着てもかわいらしいとは……!」

「あの、このスカートが短すぎると思うんです。何か布をくれませんか?」

アレンディオは感心するようにまじまじとソアリスを見て、満足げに口角を上げた。

「よし、すぐに邸へ戻る。ハロウィンくらい仕事をしなくていいはずだ」

「アレン!?」

突然の帰宅宣言に、ソアリスは目を丸くする。

ところがそこへ、魔法使いのコスプレをしたユンリエッタが現れた。

「お待ちください、アレン様。大人のハロウィンは仕事中にイタズラするのが醍醐味です」

「ユンさん、これは全年齢ですよ!?よくそんなことが言えますね!?」

ルードが思わず突っ込む。

しかしユンリエッタは自信満々に言い放った。

「全年齢に不可能はありません!詳細さえ書かなければ、何したってよいのです!現に私だって、ルードさんと〇〇〇や〇〇〇で〇〇〇なことをいたしていますが、そんなものは全然オッケーなんですよ!」

「もらい事故がひどいんでやめてください」

「ですから、将軍が執務室で奥様をメイドにして〇〇〇な〇〇〇をしても一切問題ありません!」

「問題しかありませんよ!?」

ユンリエッタはユンリエッタなりに、アレンディオの不憫を払しょくしてあげようという意図だった。

が、その場合真っ先に犠牲になるソアリスがユンリエッタの話を聞いて完全に怯えている。

「アレン……」

「大丈夫。SSは自由だ」

「そうではなくてですね?あの、自由には責任がつきまとうといいますか、自由の意味をはき違えてはいけないといいますか」

「そうだったか?それなら、なおさら大丈夫だ。責任は取る。というより結婚しているから責任はもう取っている」

二人のやりとりを見ていたジャックスは、心の中で思っていた。

もう、ハロウィン関係なくない?と。

勝手にかぼちゃのフタを開け、中にあった焼き菓子をこれまた勝手に口へ運ぶ。

「あ、これうまい」

食べ進めているうちに、アレンディオはソアリスを連れてさっさと執務室から出て行ってしまった。

どうやら本当に帰るらしい。

残った上官をちらりと見れば、魔女スタイルのユンリエッタによって謎の薬を飲まされかけていた。

両手を組み合い、押し合っている二人はどちらも目が本気である。

「さぁ……!飲んでくださいルードさん……!すぐにいい感じになりますわ」

「いりませんよ……!魔女の秘薬なんてどこで手に入れてきたんです!?」

「ふぬぬぬぬぬ!強情な人ですね!」

一人放置されているジャックスは、お菓子を食べることしかやることがない。

それもすぐに全部なくなり、喉が渇いたので目の前にあった飲み物を手にする。

「これ、もらいまーす」

「「!?」」

ユンリエッタが持っていた小瓶を奪うと、躊躇いなく飲み干した。

「はぁ……、もう俺、帰ってもいいですか?」

あっけらかんとそう言うジャックスに対し、ユンリエッタは驚愕する。

「魔女の秘薬を飲んでもなんともないっていうの!?」

ルードも信じられないというようにジャックスを見る。

ただし、本人はあははと明るく笑って言った。

「SSは自由だって聞いてるんで!ジュースと思って飲めば、秘薬だってジュースになりますよ。あぁ、それに俺が気にしているのは残虐描写のR15の方です!じゃ、そういうことで」

ジャックスは、笑顔で右手を上げると踵を返す。

自由な男はどこまでも自由だった。

――パタン……。

残された二人は、少しの沈黙の後どちらからともなく目を合わせた。

「どうします?私たちだけで普通にデートでもします?本編ではスイーツ食べ損ねましたし」

「普通にって、魔女のコスプレで普通も何もないかと」

「あら、そうですね。では、ルードさんもいっそコスプレしたらいかがです?ドラキュラなんて似合うと思うんですが」

その言葉を聞いて、ルードはようやくあることを思い出す。

「ドラキュラは、もうやってる方がいます」

「まぁ、それは残念ですね」

「陛下がローズ様とハロウィンパーティーをするんだと」

「あの顔でドラキュラなんてしたら、城内のメイドたちが気絶しそうですね」

顔が怖い陛下のコスプレ。

どうあがいても、皆に怖がられる未来しか見えない。

「「…………」」

二人は、関わらないことを決めた。

そう、たとえ城内から複数の悲鳴が聞こえてこようとも――――――