軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七十九話:サザンゲート防衛戦⑪(開戦6日目~)論功行賞

「なんとか、今回は勝ったな、いや、勝たせてもらったが正解か……」

「はい、父上の言う通り、まともに戦っていたら此方が大きな痛手を受けていたと思います。

仮に……、勝てたとしても」

「最後は魔物に助けられたきらいはありますが、その魔物、今後が厄介ですね。

ここだけでなく、テイグーンでも油断できません」

戦いが決した翌日も、俺たち3人は、兵を率いて戦場であった場所を巡っていた。

グリフォニア帝国軍が撤退後も、カイル王国軍は大規模な魔物掃討作戦を、継続して実施している。

帝国軍が引き込んだ魔物は、掃討作戦などの結果、その多くを狩り取ったものの、まだまだ予断を許さない状況だった。

今、俺たちの居る、前回の戦で陣を構えた小高い丘、この辺りも、夜間は油断できない場所となっている。サザンゲート平原からテイグーンに通じる、魔境側のルートは、当分通行できないだろう。

この頃になってやっと、テイグーンから安全なルートを迂回した使者が到着した。

「テイグーンの町は健在です。

敵軍約3,000名を撃退し、負傷者はいるものの、味方に死者はおりません。

多くの民が防衛戦に協力し、500名が関門で我が軍と共に戦い、800名以上が後方を支えてくれました。

戦いの後、捕虜を約400名、軍馬は500頭以上を回収し、その他武器や防具の鹵獲品は相当数ございます」

「遠路ご苦労様。皆の無事が聞け先ずは安心したよ。

今日は砦でゆっくり休んでね。その間に、手紙を用意するから、それをテイグーンに届けて欲しい」

ミザリーさん、クリストフやクレアを始め皆には、改めて礼を言わなきゃ。3,000名の軍勢を撃退するなんて、本当によく頑張ったと思う。

早くテイグーンに駆けつけたい。

彼らに礼が言いたいし、祝杯もあげたい。

おそらく、この後の展開として、俺も父や兄と王都に論功行賞に向かわなくてはならないだろう。

その後はエストの街に。

多分、当分は帰れないなぁ……、改めてそう思った。

暫くはずっと魔物の退治、と思っていたが、意外に早く王都に召喚された。

まぁ、戦で全く役に立たなかった、貴族連合軍第一軍と第四軍が居残り、当面、魔物退治や治安維持を申しつけられた、理由としてはそういう事だけど。

今回は、俺も王宮での論功行賞に呼ばれている。

無位無冠ではあるが、前回の兄と同様、特別に謁見の間に参列する事を許された。

「個別論功第一位、ソリス・フォン・タクヒール、前へっ」

「はっ!」

何と俺は今回の戦役で個人戦功第一位に認められた。

大臣に呼び立てられ、前に出て跪く。

「此度の働き、誠に見事である!

参謀として数々の献策を行った知略、

主将の窮地に際し、真っ先に飛び出し救った忠義、

テイグーンでの防衛戦では、30倍の兵力差を覆し、領民と協力して町を守り抜いたこと、特に関門戦では、民と共に6倍の敵軍を、完膚なきまでに撃退する活躍など、ソリス男爵家として、家門の評価を超える戦功と判断した。

依って個別論功第一位として報奨を与える」

「ありがとうございます。ひとえに王家のご威光の賜物です。また、見事に帝国軍を撃退した、テイグーンの民たちの、王国への忠義と献身に感謝しております」

「うむ、論功第一位の証として金貨1万枚を下賜し、卿には個別に男爵号を授ける。防衛戦で奮闘した民を労わり、今後一層の忠義を示すこと、期待しておるぞ」

「身に余る光栄、感謝に堪えません」

「続いて個別論功第二位、ソリス・フォン・ダレク、前へっ」

「ははっ!」

「寄せ集めの新兵と揶揄された、第二子弟騎士団を率い、戦功を上げたこと誠に見事! また連合騎馬隊での不退転の奮戦と、窮地の友軍を救った功に対し、個別論功第二位として報奨を与える」

「ありがたく存じます。ひとえに兵達ひとりひとりの忠義と奮戦があったからこそ、と感謝しております」

「其方には金貨5千枚を下賜し、今の準男爵から正式に男爵へと昇爵、王都で学んだ後は、こののち編成される騎士団において、副団長の席を用意している」

「ご高配に感謝いたします」

そう、個別論功で、ソリス男爵家は兄弟が2人とも報奨を受ける事になった。

ちなみに、個別論功の前に発表された論功行賞でも、ソリス男爵家は破格の評価を受けた。

<論功行賞>

1位 ソリス男爵家 金貨20,000枚 子爵昇爵

2位 ゴーマン子爵 金貨10,000枚

3位 キリアス子爵 金貨 8,000枚

4位 コーネル男爵 金貨 4,000枚

そう、父は今回正式に子爵に昇爵した。

そして以前と比べものにならない金貨を下賜された。

「また今回の戦に参戦した各貴族家に対し、新たに報奨を授ける。これは、先に辺境伯より卿らに約した内容に代え、直接王家より支給する。

なお、辺境伯の軍令に反した者、戦線を離脱した者達には、厳重なる処罰を与える所ではあるが、配下の騎馬隊を多く失った伯爵からも、第一子弟騎士団の助命嘆願が届いておる。

第一子弟騎士団は、戦勝と彼らの嘆願により、罪を一等減じ、死を免じるものとする。

各貴族家が独自に、各々の子弟を処すこととせよ。

その他の者は、処罰としてこの報酬の対象より外す」

こうして、軍令違反を犯した愚か者、第一子弟騎士団と、それが元で戦線を離脱した男爵家三家に対する報酬は除外された。

<全体報奨>

◇ハストブルグ辺境伯関係

辺境伯 1家 × 金貨20,000枚 計20,000枚

ヒヨリミ子爵 × 金貨 2,000枚 計 2,000枚

男爵 3家 × 金貨 1,000枚 計 3,000枚

◇援軍派遣南方貴族

伯爵 4家 × 金貨 5,000枚 計20,000枚

子爵 8家 × 金貨 2,000枚 計16,000枚

男爵 9家 × 金貨 1,000枚 計 9,000枚

◇その他

第二子弟騎士団 金貨 2,000枚

今度は大臣に代わり騎士団長が前に進み出た。

「今回の敵の侵攻を鑑み、南部辺境地域にも、強力な防衛兵力を常駐させる必要があると考えるに至った。

その為、新たに辺境騎士団を創設する。

騎士団の兵力は3,000騎とし、ハストブルグ辺境伯の指揮下に入り、運用されるものとする。

これらを5年を目途に、全ての陣容を整えよ。

辺境伯を始め、南部辺境にある貴族は、爵位に応じ辺境騎士団への兵を供出すること。

なお、王都騎士団や、今回援軍として参加した、南部地域の貴族からも人員を出向させる」

そう、今回の戦いでは、第一皇子親衛軍鉄騎兵3,000騎や、親衛軍騎兵隊2,000名に苦戦した。

前回、ゴート辺境伯の鉄騎兵団2,000騎も同様だ。

グリフォニア帝国は、圧倒的多数の騎馬隊を集団運用してくる。

此方には、それに抗うだけの騎馬集団はなかった。

その反省を生かした対応だ。

更に今回は、王都騎士団は動けなかった。

王都防衛が最優先で、次に東の国境、この流れは今後も変わらないだろう。それを見越してのことか……

「なお、騎士団創設費として金貨60,000枚、翌年以降は維持費用として金貨50,000枚をハストブルグ辺境伯に支援金として支給する。

戦時における各貴族家の兵員数分担は、騎士団に供出した兵員数分を減じるため、俸給などの負担はこれまで通り各貴族家が担当せよ」

なるほど、翻訳すると……

・公設で新たに3,000騎を揃えることは実質不可能

・2,000騎相当は、今の手持ち兵力から分担して供出

・人員の供出は、辺境伯、4子爵、4男爵が中心

・自領から供出した兵士の俸給はそれぞれが負担する

・戦時に従軍する人数は、騎士団に供出した数を含む

・支援金で新規1,000騎相当の俸給や経費を賄う

そんな感じかな。

供出の割合や、新規の増員、王都騎士団からの派遣など、全ての数字を曖昧にしており、まぁ、できる範囲でやれ、そんな感じだろう。

各貴族や個人の報奨だけで、既に金貨13万枚も出してるし、王国もこれ以上ない袖は振れないってことかな。

「ところで辺境伯、其方は今回武勲のあったテイグーンの町に、金貨2万枚を投じておると聞いたが相違ないか?」

「はっ!ソリス子爵家が次男、タクヒール殿よりの提案を受け、おもしろき若者の未来、支えてやるのも年長者の務め、そう思い投資した次第でございます」

カイル王の突然の振りに、辺境伯は驚きながらも回答した。

「そうか、おもしろき若者……、年長者の務め……、なるほどな」

王は軽快に笑い、言葉を続ける。

「儂も、新しく叙爵した若き男爵の、将来性を買ってみたくなっての。

辺境伯が2万であれば……

儂はそうだな……

金貨5万でどうだ?

返済や見返りは要らん。

強いて言えば、テイグーンを更に大きく発展させること、王国に貢献する街にすることかの。

数万の軍勢をも跳ね返す、鉄壁の要塞とすることじゃ

どうじゃ?」

「陛下の先見の明、確かなものと存じまする。ソリス新男爵、陛下のありがたい仰せである」

え? 俺? 前回は口を利いたこともない国王が俺に、いやテイグーンに投資?

正直テンパって俺は固まっていた。

隣にいた兄に小突かれ、やっと我に返って……

「勿体ないお言葉、恐れ多いあまり茫然とし、大変失礼いたしました。陛下のご高配、身に余る光栄です。

不才の身ではありますが、ご期待に沿えるよう全身全霊尽くしたく思います」

なんとか、それだけ言った。

言い回しが正しいかどうかは分からない。

国王に対する、言葉の使い方とか知らないし……

そんな機会があるとは、思ってもなかったから、そもそも習ってないし。