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作品タイトル不明

第六十一話(カイル歴506年:13歳)戦場へ

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【⚔ソリス男爵領史⚔ 滅亡の階梯】

カイル歴506年、王国は再び戦禍に見舞われる

グリフォニア帝国の雄、ゴート辺境伯、実りの時期に再びカイル王国を侵攻す

ハストブルグ辺境伯、麾下の 兵(つわもの) を率いこれを迎撃す

戦力は拮抗し、対陣は永きに渡ると思われた中

辺境伯の獅子身中の虫により大きく戦局は転換す

ソリス家が誇る若き光の剣士、味方の奸計に陥り孤立

数多(あまた) の兵を救い奮戦するも、光は堕ち再び還らず

エストールの 兵(つわもの) たち、怒りに任せ幾度も敵中に突貫す

数多(あまた) の敵を葬るも、味方の多くもまた再び還らず

エストールの民、深く悲しみ、失われた光を思い嘆く

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秋の収穫が目前に迫ったある日、ハストブルグ辺境伯から父に早馬が来た。

「敵国侵攻の予兆あり。各位は手勢を率い可及的速やかにサザンゲート砦に参集せよ!」

今回、俺はテイグーンの町から200騎を率い、エストの街へと向かった。

「タクヒールさま、これより別働隊は出発いたします。敵の動きがあるまで潜伏いたします」

「うん、潜伏場所も任務内容も危険だけど、皆の安全を第一に、危なくなれば撤退する前提で頼む」

テイグーンからの別動隊として、 闇魔法士(ラファール) と斥候で足の速い馬を揃えた一隊を、魔境の境を抜ける国境線近くに先行して配置した。

彼らはラファールの闇魔法スキルで潜伏し、偵察の任務を行う。

テイグーン方面に向かって異変があれば、テイグーンの町、及びサザンゲート砦の俺に急報を届ける重要な役目だ。

杞憂で終われば良いが……、不安は尽きなかった。

◇テイグーンからの出征兵力

<本 隊>

鉄騎兵団 50騎(父からの預かり)

軽装騎兵 80騎(兵士70騎+魔法士10騎)

傭兵団 70騎

<別動隊>

軽装騎兵 12騎( 闇魔法士(ラファール) を含む斥候部隊)

<残留部隊>

魔法士 13名

弓箭兵 80名

傭兵団 30名

テイグーンを出立した兵士と共に、200騎の軍勢がエストの街に向かう姿を見て、少し感慨深かった。

4年前はソリス男爵軍全体で、従軍した騎馬兵は200騎。今はテイグーンだけで同じ200騎である。

「この4年間でウチの軍勢も変わったなぁ」

「そうですね、数だけでなく、練度、打撃力の質も大きく変わりましたね」

俺の独り言にヴァイス団長が反応してくれた。

「傭兵団も、初めてお会いした時の3倍以上になりましたね」

そう、傭兵団も5年前の30名から団員100名を超える規模に急成長した。

「まぁ全て……あるお方の企みのお陰ですけどね」

「……」

俺は何を指しているか分かったが、沈黙した。

「傭兵団も、その方へのご恩を返すまではエストールの地を出ることはありません。

当面はご奉公したい、それが傭兵団の総意です……」

まぁ、引き留めるために色々やったのは事実だが……

そんなやり取りをしながら、エストの街に到着する頃には、ほぼ出征の準備ができていた。

俺たちがエストに到着してすぐ、集結したソリス男爵軍全軍が出立した。

今回はバルトも同行しているので、改良型コンパウンドクロスボウ(エストールボウ)は全てバルトが空間収納で秘匿しつつ運び、兵士たちが通常のクロスボウをそれぞれ所持して移動する。

バルトにはエストの街で調達した、大量の矢と食料も収納させている。これにより荷駄隊は積載する荷物も少なく、速やかな行軍が可能だった。

テイグーンの兵力も含めたソリス男爵領の兵力は、これまでにない規模となった。

陣容は総勢500人に加え、双頭の鷹傭兵団70名、4年前と比べて出征兵力だけでも170人増えている。

<ソリス男爵軍>

鉄騎兵団 200騎

軽装騎兵 100騎

弓箭兵 200人

傭兵団 70騎

そしてこの570名全てが、表向きはクロスボウを、実際はエストールボウを使い弓箭兵としても活躍する。

サザンゲート砦に到着すると、ほぼ同時にゴーマン子爵軍も到着した。先に到着していたキリアス子爵、ヒヨリミ子爵、コーネル男爵、クライツ、ボールド、ヘラルド各男爵軍と合わせ、ハストブルグ辺境伯軍の全軍が勢揃いした。

各軍の陣容は、うち以外は4年前とほぼ同様だった。

<ハストブルグ辺境伯軍>

ハストブルグ辺境伯 3,200名

キリアス子爵 1,000名

ゴーマン子爵 800名

ヒヨリミ子爵 600名

ソリス男爵 570名

コーネル男爵 230名

クライツ男爵 200名

ボールド男爵 200名

ヘラルド男爵 200名

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合計 7,000名

カイル王国南部に領地をもつ、その他貴族の援軍はまだ到着していない。

当日夜、全体の軍議が開かれ、最新の情報が共有された。

「侵攻軍は20,000名~30,000名と予想され、主力は第一皇子が直轄する親衛軍15,000名となる。

親衛軍は数、装備、練度ともに精強で要注意が必要じゃ。

援軍が揃い、兵力差が拮抗するまでは籠城戦とする」

戦闘開始は今日より3~5日後と予想されているらしい。

王都からは子弟騎士団2,500名が既に出立しており、近隣の貴族より合計10,000名が援軍として、この先参集する予定とのことだった。

「数的に不利であり、今回は国境線の防衛が一番の目的である、功に逸らないこと各位留意して欲しい」

援軍が来るまで、味方は敵の三分の一にも満たない。

正直、籠城戦でも厳しい戦力比だった。

【前回の歴史】では、敵も同程度の数だったから、これも、俺がやらかしてしまった結果、【今回の世界】で、歴史の流れが変わっていた。

◯近隣の援軍

伯爵軍 X 4家 計5,000名

子爵軍 X 8家 計3,200名

男爵軍 X 12家 計1,800名

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合計 10,000名

常に戦いに晒される最辺境の貴族と違い、各貴族家の抱える兵力は、思ったよりも少ない。

これって……、援軍と呼んでよいのだろうか。

指揮系統が統一されていない、10,000名の烏合の衆。

経験も乏しくお荷物にしかならない2,500名の新兵達。

「王国は本当に勝つ気があるんでしょうか?」

思わず父に小声でこぼしてしまった。

援軍全て合わせても20,000以下か……、数だけでも、今回は相当厳しいな。

翌日の朝、援軍の第一陣が到着した。

なんと王都から長駈して駆け付けた兄が率いる第二子弟騎兵団だった。

一番遠い部隊が一番乗りって……

他の援軍の貴族たちは、やる気があるんだろうか?

益々不吉な予感しかしない。

「タクヒール元気だったか? 父上もご壮健そうで何よりですっ」

「ダレク兄さま、大役ご苦労様です」

「これで3人揃ったな。彼らは使えそうか?」

父も兄の到着が嬉しそうであった。

「まだまだ実戦経験も乏しく練度不足は否めません、それでも最低限のことはできるようにしたいと思います。クロスボウは持ってきてるんですよね?」

「兄上、都合570台は用意できると思います」

「父上、彼らにお貸しいただけますか?そうすれば守備隊としては最低限の働きはできると思ってます」

「それとタクヒール、魔法士発掘の件、王都の一部の人間には筒抜けだぞ! 俺がこの役目を受けなきゃならなくなった理由の一つは、それがバレてることだ」

「なんだと!真かっ!」

「えーっ、何でだろう……」

父と俺が予想外の情報に声を上げてしまった。

「恐らく情報源は教会だな、あそこからなら王都にまで情報が届く」

「そうだな、わしからも釘は刺しておくが、タクヒールも注意しろよ」

「了解しました。以後気を付けます」

盲点だった。当然と言えば当然のことだけど教会が王都の人間に情報を売っているということか。

情報を知る者はそれをネタに、ソリス男爵家を過剰に評価したり、危険視したり、矢面に立たせたり……

今回はそれが原因で、兄が、そして間接的に我々が矢面に立たされた、そういう事か。

今後は対策を考えないと拙い事になるな。

「なお、彼らには軍として最低限の集団行動は、こちらに向かう進軍中に叩き込みました。

あとは弓箭兵として慣れてもらうことです」

「手間を掛けるがよろしく頼む」

俺はソリス男爵軍が持参してきたクロスボウを全て兄に渡した。どのみち戦闘ではエストールボウを使うから不要の物だし。

後は、タイミングを見てバルトが持参したエストールボウを出してソリス男爵軍に配布するだけだ。

兄は早速、第二子弟騎士団に対して、クロスボウの訓練、城壁上からの試射などを行なっていた。

狙い方と、射程の感覚さえ掴めば、素人でもそれなりの斉射はできる。クロスボウのメリットが活かされていた。

事前にエストの街の工房群からは、通常なら持ち運べない量の、大量の矢は仕入れてある。

それをバルトが運んでいる。

父と兄、ヴァイス団長と俺は、今回従軍させている魔法士の情報、想定される作戦案などを協議した。

こうして迫り来る戦禍に対し、準備は整えられていった。