軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

プロローグ(カイル歴513年:20歳)終わりのはじまり

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【⚔ソリス男爵領史⚔ 終章】

カイル歴513年、グリフォニア帝国の大規模侵攻あり

帝国が誇る黒い鷹、皇帝の意を受けカイル王国を突く

国境を守る盾、ハストブルグ辺境伯は砦にこもり迎撃

これに対し帝国軍左翼は大規模な 繞回(ぎょうかい) 進撃を実施

密かに内通した子爵領境を抜け、エストール領を突く

ソリス男爵軍はテイグーンに陣を敷き迎撃するも敗走

男爵は領民と残兵の助命、収穫期の実りを民から収奪しないことを願い降伏

エストール領は北方派遣軍軍団長ヴァイス将軍に下る

若き男爵は処刑され男爵家は断絶しその終焉を迎える

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「これよりここエストール領の領主、ソリス・タクヒール男爵の処刑を開始する!

なお、この処刑はグリフォニア帝国北方派遣兵団、ヴァイス軍団長とソリス男爵とで結ばれた以下の約定に従い実施される。

ソリス男爵は全ての戦争責任を負い公開処刑とし、男爵は所有する全ての糧食、財産を引き渡す代わりに、全ての領民の生命、財産の安全は帝国が保証する。

以上、皇帝陛下の威に服さず、エストール領に数々の災厄を招いた元凶の処刑を、皇帝陛下の代理人たるブラッドリー侯爵が宣言するものなり!」

誰だ? あの偉そうな髭オヤジ。

群衆に向かって演説してるけど、何があったんだっけ?

あれ? ここどこだっけ?

エストの街の広場の真ん中?

そっか……、俺、今から処刑されるんだったか……

広場を埋め尽くす人だかり、その中心部でステージの様に一段高くなっている場所に、両手と両足を縛られ、磔にされている、領主だった俺。

そうだった……

ここエストール領は、辺境の男爵領にしては驚くほど豊かな領地で、優秀な父と母が二人で発展させた。

豊かさ故に、隣国だけでなく、近隣の貴族からも狙われていたが、両親たちは数々の戦役や陰謀も乗り切って領地を守ってきた。

でも、どこかで運命の歯車が狂ってしまった。

俺が10歳を過ぎた頃から、運に見放された様に次々と災厄に見舞われ……

大洪水、戦災、疫病の流行、干ばつによる大飢饉……

統治者の必死の努力にも関わらず衰退してしまった。

最初に起こった不幸は、大洪水で穀倉地帯が壊滅、農業生産力が半減したこと。

そしてその3年後には、国境紛争で将来を嘱望された次期当主の兄を失った。

それでも、何とか領地は父や母、家宰の努力で支えられていた。

だが、致命傷となる出来事は、更にその3年後に起こった。

俺が16歳の時に、疫病で多くの領民と、領主一家、父、母、妹を失い、内政面で男爵家の大黒柱だった家宰も失い、内政面で大きく力を落としてしまった。

俺が領地を継いだ後、必死に立て直しを図る努力をした。

それでも結果は報われなかった。

そして、19歳の時に発生した、大飢饉で更に多くの領民を失ってしまった。

本当に不幸と不運の連続だった。

領民たちは、両親たちの喪失を嘆き、俺の無能を罵る怨嗟の声を上げた。

最後は、これまで幾度となく撃退してきた隣国が、再び大軍をもって侵攻し、予想外の戦略に敗退、それ以上戦う力もなく降伏した。

降伏については、敵将と交渉し、自分の命と僅かばかり残った領地の財貨と糧食と引き換えに、なんとか領民の命と財産を保証してもらう約束を取り付けることができたんだっけ……

【権限なし領主】、領民たちは、俺のことをそう呼んだ。

この世界では領地の発展度、領民の忠誠度などを反映し領主には支配する土地への【権限】が発現する。

権限は、それぞれの領地の強みを補うもの、それにより生産効率が上がったり、商業が発展しやすくなったりと、領地に恩恵をもたらす。

各領主はこの、権限をもとに領地運営や外交、戦闘に活用するのだが……

俺にはその権限が発現しなかった。

当然といえば、当然のことだけど……

剣技に長け、戦上手で将来を嘱望された、兄に劣り、

戦闘や、投機などの商才に長けた、父に及ばず、

開発、開拓などの内政運営に長けた、母に敵わない。

それらに比べ、特に取り柄もない次男坊の俺が、災厄でなし崩しに領主になり、領地の人口も生産力もどんどん衰退していったんだから。

領民達が至る所でつぶやく陰口も俺は知っていた。

この広場に集まった領民達の殆どが、他国に占領された不満、これから敵国に踏み荒らされるだろう自分たちの生活に対する不安、守り切れなかった、不甲斐ない領主への不満で爆発寸前だった。

最初は、磔にされてる俺に石でも投げつけられるんじゃないかな……

そんな緊張した空気が充満してたと思う。

でも、髭親父の口上で俺が、自らの命と財貨を引き換えに領民を守る。そんな取り決めをしていた事を知り、安心したのか少しだけ空気が変わった気がする。

「火をくべよ!」

髭親父の号令で、侵攻軍の兵士たちが、一斉に足元に積まれた柴に火を付けた。

その時だった、遠巻きに周りを囲んでいた領民たちのうち、一人の女性が膝をつき祈り始めた。

『私は知っています……、誰が何と言おうと貴方が常に領民を大切になされていたことを』

あれは、兄に、そして兄の没後は妹に仕えていてくれたメイドのアンだ。良かった、無事だったんだ。

別の場所でもう一人。

『私は知っています……、貴方が領民のため、傾きかけていた領地を必死に立て直そうとしていたことを』

あれは、俺が領主になった際、力になってくれた右腕、行政官のミザリーだ。彼女も無事だった!

更にまた一人。

『私は知っています……、貴方は疫病の時、感染の恐れも気にせず、領民のため奔走したことを』

あの女性、確か疫病の時に、施療院で看護に走り回ってくれた人だ。確か、ローザさんだっけ?

祈る人は次々と増えていった。

『私は知っています……、災厄のたびに貴方が私たちの為に粗末な食事、寝床で共に戦ったことを』

あの女性、飢饉の際、エストの街で炊き出しを一緒に手伝ってくれた人だ。確かクレアさん?

『私は知っています……、貴方は家を失った私たちに土地と生きる糧を与えてくれたことを』

あの女性、エストの街で破産した商人の娘さんで、行政府で採用したんだっけ? 名前はわからないけど。

ってか、女性ばっか。

でも、俺のために泣いてくれるのが妙に嬉しかった。

俺って……、こんなにもてたんだっけ?

不謹慎にも苦笑してしまった。

彼女たちの祈りの声が離れた俺の所にも聞こえる。

俺だけでなく、周りを取り囲んでいる人たちにも。

不思議な光景だった……

膝を突き祈り始める人が、彼女たちの声を聞いてからどんどん増えている。

それと同時に祈る人々の声が、まるで光の輪のようになって、やさしく俺を包んでいった。

『私は知っています。貴方が……』

災厄のたびに民を救うために走り回っていたことを、

復興のために日々、一生懸命汗を流していたことを、

私達に住む場所と食事、仕事を与えてくれたことを、

貴族でありながら、領民と共に歩んでくれたことを、

その命を差し出し、私達を守ってくれたことを……

敵兵を除く全ての人が祈ってくれている、泣いている人もたくさんいる。

権限なし領主、そう揶揄されても、頑張って生きていた事も無駄じゃなかった。

少しでも安らかな気持ちで最期を迎えられそうだ。

そう思った時だった。

どこからともなく不思議な、機械的な声が、まるで天から降りてくるように聞こえた。

『権限発現に必要な要素が、定められた基準に到達しました。

これより権限として領地鑑定、固有スキルとして時空魔法スキルが発現します』

え?今更かよ!

どうしようもないじゃん!

立ち上がる炎で、薄れゆく意識の中で思わずツッコンでしまった。

そして、俺の世界は終わった……