軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第44話:事業計画

クレメッティ氏は唖然とされます。

「は、いや、え? ……2万5千個……まさか!」

ふふ、気づかれたみたいですわね。

「ええ、そうですわ。あれは無料鑑定の皮を被った魔石工場ですの」

「ばかな……」

「生産規模は一日あたり千個程度、かつて領地の冒険者から話を伺ったことがありますが、最小の0.1カラット未満の屑魔石でも夕食と酒が飲める程度の値段で買い取って貰えるとか。

さて、ここにある石は平均0.16カラットなので合計4000カラット分ありますけど、クレメッティさんはどの程度の価値を見出してくださるかしら」

「それは適正価格で……待ってください、これが毎月定期的に入ると?」

「この程度ではありませんわ」

「はぁ!?」

クレメッティ氏が思わずと言った様子で叫ばれます。レクシーが続けました。

「およそ2万人から2万5千個ということから分かるように、我々も複数回測定に来るべきだと伝え、実際来てくれている方もいます。子供たちには飴を配っているのもありますしね。ですが、それでも目新しさが減少すればあの会場に来られる方は減るでしょう」

「ああ、そうですよね、いずれは減って落ち着く。なるほど」

どことなくクレメッティ氏は安堵されたような声色です。

わたくしはレクシーが説明している間に資料から一枚の図を出し、クレメッティ氏に見えるように広げました。

「これは? 赤い点が大量に打たれていますが」

大量の赤い点、そして僅かに青い点が散らばっています。

「王都の地図ですわ、無料鑑定所を訪れた人の住所全てに 点(プロット) を打ちましたの。青は魔術師の才があると判定した人物のいらっしゃる場所ですわ」

「住所を書かせたのはこんな情報の活用が……!」

「こちらを見て何を感じられますか?」

彼は地図をじっと見つめます。

「あなたたちの鑑定会場がこのA&Vの文字のところですか。単純な同心円上ではなく、赤い点が多いのは商店街中心に貧民層へと広がっていますな。スラムの入り口の辺りまでというところでしょうか」

「その通りですわ。その辺りの考察などもレポートに纏めておりますが、もっと単純なことです」

「ほう」

「ほとんどの方が王都の南側からいらしている。ただそれだけですわ」

「……まさか」

「王都の中心部、富裕層のいる場所は除いて、東西南北の四ヶ所に事務所を増やします。これが次の一手ですわ」

「日産4千個ということですか!?」

「南部はまだしばらくは多いでしょうけど、そのうち減ってくるでしょうし、南部ほど他の地区は人口密度が高くないので3千くらいでしょうかね」

いずれ2千くらいには落ち着くでしょうけどね。

「あり得ない……お待ちください。次の一手と仰いましたか」

わたくしは頷きます。

「それはそうですわ、その次、さらに次と考えねば」

「何を考えていらっしゃるか伺っても?」

「王都中心部、富裕層の地区では別の施策を考えていますが、まだ動く時期ではありませんの。ただ、他に関しては簡単でしょう?」

「……近隣の街でも同じことを行う。次はさらに遠くの領地でも」

「ええ。それなりに人口の多い都市では常設、それ以外にも人の集まる祭りなどがあれば臨時で出店するなどの工夫はしたいところではありますわね」

「平民たちは魔力の鑑定を無料で受けられ、あなたたちはその裏で大量の魔石を得る。なんと恐ろしい手腕か」

「そうでしょうか?」

わたくしは首を傾げます。

「搾取する者、例えば重税を課す王や貴族は民から嫌われるものです。ですがあなたは搾取している相手からも、無料で魔力鑑定を受けられると喜ばれているのが恐ろしいですよ」

ふふ、無料を喜ぶだなんて。こちらには無料にする利があるからこそ無料にしているというのに。

笑みを浮かべて言います。

「わたくし、慈善事業には興味ありませんの」

「はは」

釣られたように乾いた笑いを返されました。

「貴族だった頃ならば 高貴な(ノブレス・) 務め(オブリージュ) なんて言って慈善も行いましたけど、今のわたくしには関係ありませんものね」

その後も資料の説明をし、次の事務所を構える場所の話なども詰めていきます。

それと……。

「ご要望通りに今の事務所の近くにある屋敷を買い取っておきました」

「ありがとうございます。早速今日からそちらに居を移そうかと思っておりますの」

わたくしたちは頭を下げます。

「古い屋敷ですがかなり広いですよ?」

「使用人には当てがあるので大丈夫ですわ。不足したらお願いするかもしれませんけど、信用できる者をまずは集めたいので」

そう、ペリクネンの屋敷にいた頃の従者たちをついに呼び寄せられるのです!

「そうですな……それが良いと思います。こちら屋敷の鍵です」

「ありがとうございます」

鍵を受け取ってセンニに渡し、わたくしたちは立ち上がりました。

「ではまたお会いしましょう」

「ええ、是非。……ああ、最後にこの国中で魔力鑑定所を広めて、そうしたら次はどうされますか?」

レクシーが答えます。

「それまでに俺が大気中魔素集積装置を開発しますよ」

彼は指を天に向けて立てました。

「空気から魔石を作るのです」