軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第7話 領地入手

コーガス侯爵家に仕える執事生活が始まった。

まず最初にやるべき仕事は借金の返済だ。

俺は転移魔法で金を借りていた貴族家に回り、利子も含めて返済を終える。

因みに金を借りていたのは、コーガス侯爵家に叙爵を受けていた者達だ。

普通に考えて、返す当てもない今の侯爵家に数億もの金を貸すなど、正気の沙汰ではない。

なら、なぜ彼らは金を貸していたのか?

答えは簡単である。

万一借金苦で一家心中でもされて侯爵家がなくなってしまえば、彼らに与えられた貴族位が失効してしまうからだ。

彼らはそれを避けるため、返済の当てがなくとも、金を貸し続けたという訳である。

まあ爵位が齎す権益に比べれば、微々たる出費でしかないからな。

――貴族であるメリットは三つ。

一つ。

見栄を張れる。

個人的には下らない理由だと思うが、これの為だけに大金を払ってもいいと言う者も普通にいる。

金を持つ商人なんかはどれだけ富があっても、上流層である貴族にはなれないからな。

どれだけ稼ごうともただの平民。

その事をコンプレックスに思う者もいるのだろう。

二つ目は税金関係だ。

市民は移動に通行税が課せられる訳だが、貴族はそれがかからない。

当然他の貴族の領地でも無料だ。

法によって徴収できない様になっている。

この通行税が大きい。

一般人からすれば大した額ではないのだが、大掛かりな商売をする人間にとっては馬鹿にできない額となる。

何故なら、運び込む荷が多ければ多いほど税金が高額になるからだ。

そのため、通行税は大きな商いをする際の足かせとなっていた。

それを一切支払わなくていいのだから、大商人からすれば垂涎の権利と言えるだろう。

因みに、貴族は領地のサイズで国に納める税金が決まる。

そして叙爵された一時的な従属貴族はそもそも領地を持てないため、国に一切税金を納める必要がなかったりする。

で、三つめは、ある一定水準以上の軍備を持てる事だ。

基本的にこの国では50名以上所属する武力集団——軍は、貴族しか持つ事が許されない。

市民に大きな力を持たせないためだ。

別に戦力なんて必要ない?

そんな事は無い。

手広く商売をしている大商人にもなると、商品運搬用の護衛——野盗とか普通にいるし、魔王時代の魔物が土着して広く分布もしているので警備は必要——だけでもその数を簡単に超えてしまう。

そうなると、自前の戦力ではなく傭兵を雇う必要が出て来る。

別に傭兵でいいじゃんと思うかもしれないが、1年の内300日以上契約が続くと所属扱いにされるため、その都度別の傭兵を雇わなければならず。

別の傭兵達に切り替える手間と、無駄にかさむコストは決して馬鹿にできない。

更に付け加えるなら、毎年変える短い付き合いという事は、雇った傭兵達との信頼という点でも難が出てくる。

なので規模の大きな商いを営む者なら、この権利はあって損はないのだ。

「コーガス家当主代理、タケル・ユーシャーと申します。ご当主様への御取次ぎをお願いしたい」

現在、俺は例の森を買い取るために所有している貴族——グラン子爵家の元を訪れていた。

コーガス当主代理であるレイミーの名代として。

委任状を門番に見せると、程なくして執事がやって来た。

「ご案内したします」

俺は執事に案内され、執務室へ通された。

中には髭面の大男――グリン・グラン子爵がおり、挨拶をすると開口一番――

「あの土地に価値はないぞ」

こう言われてしまう。

言うまでもない事だが、用件は事前に手紙で先方には伝えてある。

だからこそ、こんなにすんなり子爵と接見出来たのだ。

「それどころか、あそこは抱えるだけ負債になる」

「承知しております。ですがコーガス侯爵家は現在、領地を有しておりません。あくまでも領地を所有していると周囲に示すためですので、当家でなら得る物は御座います」

貴族から爵位を付与されただけのなんちゃって貴族はともかく、本物の貴族、それも侯爵家が領地を持っていないのは滑稽極まりない。

なので、せめて面子が立つように領地を手に入れる。

という体だ。

実際は手に入れた領地を使って収入を得る気満々な訳だが、それを馬鹿正直に教える訳もない。

そんな真似をすれば、値を吊り上げられてしまうだけである。

「面子か。少々胡散臭いが……まあいいだろう。コーガス侯爵家とは、多少懇意にしていた過去もある。余計な詮索はせず、そちらの提示した額で売ろう」

俺がいた時代には無かったが、どうやらグラン子爵家は、コーガス侯爵家と交流があった様だ。

交流があったなら……

30年前、コーガス家が没落する事になった事情を詳しく聞きたいという気持ちが湧いて来る。

が、それをぐっと堪えた。

名代とは言え、俺は所詮コーガス家に仕える執事でしかない。

執事如きが余計な訊ねごとをしては、相手が気分を害してしまう恐れがあった。

それでせっかく提示値で売ってくれると言う有難い話が流れてしまっては、元も子もない。

「ありがとうございます」

なので余計な事は言わず、俺は深く頭を下げて礼だけを口にした。

「礼にはおよばん。コーガス侯爵家がこれからどう立ち直っていくのか、そのお手並みを拝見させて貰うとしよう」

「必ずやグラン子爵閣下のご期待に沿えられる事でしょう」

相手の反応を見る限り、こちらに好意的だ。

なので、特に隠すことなく俺はコーガス家再興を宣言する。

さて、森は手に入った。

次は召集状を送らないとな。

金づる共に。