軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第23話 不審者

「はぁ……」

「なにしょぼくれたため息ついてんだい!」

「あいたっ!?」

閉店後、一仕事終えた疲労から溜息を吐いた瞬間、急に背後から背中を強く叩かれる。

相手は確認するまでもない。

この場でこんな真似をしてくる人物は一人だけ。

そう、僕が働く飲食店のオーナー兼コックの女将さんだ。

「ちょっともう女将さん、痛いじゃないですか」

振り返って苦情を言う。

そんな僕に、こちらより身長が頭一つ分高く、筋肉質な身体つきの女将さんが、呆れる様な顔で此方を見下ろし言葉を続けた。

「全く……男の癖に情けないねぇ。そんなに気になるんなら、さっさと会いに行けばいいだろ」

「なっ!?ち、違いますよ!今日は忙しかったからちょっと疲れただけです!別にレイミーさんの事を考えていた訳じゃありません!」

「ふーん。あたしはレイミーだなんて一言も言ってないけね」

「う……」

女将さんがニヤニヤとした表情で僕を見て来る。

確かに名前は出してないけど、言ったも同然じゃないか。

彼女は意地悪だ。

「まあ冗談はさておき、本当に一度会いに行ってみたらどうだい?身分の事なんか考えずにぶつかる。それが青春ってもんだとあたしは思うけどねぇ」

「べ、別に身分とか……」

女将さんが他人事だと思ってか、簡単に言って来る。

確かに身分は違う。

だけどそれ以上に、僕と彼女は違うのだ。

レイミーが貴族だとか、そういう次元とは全く別の次元で。

――だから僕とレイミーは絶対に結ばれる事はない。

だけど……

それでも……

僕は彼女の事が……

「まあ無理強いはしないさ。けどね……人生は一度しかないんだよ。気持ちを伝える事ぐらいしたって、罰は当たらないんじゃないかい?」

「……」

「ああそうだ!」

女将さんが急に大声を出した。

そして急に店の奥に入って行ったかと思うと、少しして笑顔で戻って来る。

戻って来た彼女のその手には、見覚えのある手拭いが……

「女将さん、それって……」

「ああ、レイミーの私物だよ。あの子、店を辞める時に忘れて行ったみたいでね。明日は休みだ。悪いんだけど、明日あの子の所にこれを届けておくれ」

「お、俺が?」

「あたしは忙しいんだ!頼んだよ!」

女将さんが無理やり手拭いを僕の手に握らせて来る。

「あ、あの……」

「残りはもうあたし一人でやっとくから、あんたはもう帰んな」

女将さんはそう言うと、さっさと店の奥へ引っ込んでしまった。

「……ありがとうございます」

僕は小さく礼を言う。

レイミーに会いに行く口実を作ってくれた、女将さんの気遣に対して。

もちろん自分の気持ちを打ち明ける様な真似はしない。

ただ友人として、忘れ物を届けに会いに行くだけだ。

それでも……

彼女の顔を久しぶりに見れる。

そう思うだけで、胸が高鳴ってしょうがなかった。

翌日、僕はレイミーの屋敷を尋ね。

そして――

不審者として捕まった。

いや、別に何かしでかした訳じゃないよ。

ただ直前でしり込みしてしまって、屋敷の近くでてうろうろしてたら……まあ何と言うか、不審者として捕まってしまったという訳で。

うん、それだけ。

だから、えーっと……大丈夫だよね?

貴族の屋敷の周りで不審な行動してたからって、何かの罪になったりは……しないよね?