軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

揺れ動く

「セイディ、大丈夫? ひどい顔色だわ」

「ちょっと寝不足で……」

翌日、朝食を終えエリザとノーマンと共に広間でお茶をしていると、エリザは心配そうに私の顔を覗き込んだ。

ルーファスのことばかり考えてしまっていたせいで、昨晩はあまり眠れなかったのだ。今は間違いなく、こんなことで悩んでいる場合ではないというのに。

ちなみに大司教から聞いた話は、昨晩のうちに二人にも話してあった。今日はこの後ニールとジェラルドも来てくれることになっており、今後について話し合う予定だ。

「もしかして、出先で何かあった? 何か辛いこととか」

「ぜ、全然違うの! ごめんね!」

「そう? それなら良いんだけど」

しっかりしなければと、私は両頬を思い切り叩く。それと同時に、ハーラが私に客人が来たことを知らせてくれた。

「ニール? それともジェラルド?」

「いえ、ルーファス様です」

「えっ?」

予想もしていなかった返事に、心臓が跳ねた。もちろん、彼とは何の約束もしていない。一体どうしたのだろう。

とにかく慌てて鏡の前へと行き、変なところがないかチェックした私は、早鐘を打つ心臓を押さえて玄関へと向かう。

するとそこには、騎士服を着たルーファスの姿があった。どうやら彼は、夜勤の後らしい。

「急に来てしまってすまない。今日はその、先日のことを改めて謝りたくて来たんだ」

「い、いえ……」

顔を赤らめながらそう言った彼を見ていると、色々と思い出してしまい、こちらまで照れてしまう。少しの気まずい沈黙の後、ルーファスは再び口を開いた。

「お詫びの品と言ってはなんだが、良かったら受け取って欲しい。いらなかったら捨ててくれ」

そうして、いくつもの可愛らしい箱を手渡される。彼なりに一生懸命選んでくれたらしく、それだけで嬉しくなった。

「わざわざありがとう。本当に気にしなくて良いのに」

「いや、良くない。それと他にも何か、俺にできることがあれば何でも言って欲しい」

そんな彼の申し出に対し、私は思わず「それなら、お酒はもう飲まないでほしい」と言ってしまった。

ルーファスは驚いたように少しだけ目を見開いた後、ひどく申し訳なさそうな表情を浮かべ、片手で目元を覆った。

「……不愉快な思いをさせてしまい、本当にすまない。一生酒は飲まないようにする」

「ち、違うの、そうじゃなくて」

別に彼に、お酒自体をやめてほしい訳じゃない。それに私は、不愉快な思いだってしていない。

「その、女の人がいる場所では飲まないで欲しいだけ」

「…………? 分かった」

私の訳の分からないお願いに対しても、彼は約束すると言ってくれて。不思議と、ひどく安堵している自分がいた。

「また何かあったら呼んでくれ」

「うん、本当にありがとう。お仕事お疲れ様」

「……ありがとう」

そうしてあっという間に帰ってしまった彼を見送ると、私は今し方貰ったばかりのプレゼントを抱え、自室へ向かう。

ドキドキしながら、ひとつひとつを開封していく。可愛らしいお菓子や素敵なアクセサリーが入っていて、私の為に選んでくれたものだと思うと、胸の奥が温かくなった。

それらを大切に再び箱にしまうと、私はエリザとノーマンのいる広間へと戻る。それからすぐニールがやって来たのと同時に、ジェラルドが遅くなるという知らせが届いた。

「セイディ、ジェラルドが来るまで少し休んでいたら?」

「うんうん。僕らはのんびりお喋りしてるからさ」

「ああ。セイディは一番、頑張ってくれてるからな」

「そんなことないよ」

余程酷い顔をしていたのか、皆そう言ってくれて。

結局、お言葉に甘えさせてもらうことにした私は自室へと戻るとベッドに倒れ込み、すぐに夢の中へと落ちていった。

◇◇◇

「目が覚めた?」

そんな声にゆっくりと目を開ければ、すぐ側にはジェラルドの姿があった。どうして、彼がここにいるんだろう。

寝起きで頭がうまく働いていない私の髪をそっと掬うと、ジェラルドは困ったように微笑んだ。

「セイディは、酷いね」

「…………?」

少しずつはっきりとしてきた意識の中で、一体何のことだろうと考える。そんな私に「分からない?」と彼は続けた。

「僕が好きだと伝えて結婚を申し込んだ直後に、他の男と二人で外泊だなんて、本当に酷いなと思って」

責めるようなその言葉に、どきりと心臓が跳ねた。けれど元々、泊まりのつもりではなかったのだ。

慌てて起き上がり不可抗力だったと伝えれば、ジェラルドは「そうなんだ」と私の頭を撫でた。

「それなら、何もなかったよね?」

「…………っ」

エメラルドのような透き通る瞳に、じっと見つめられる。

あれは、何もなかったと言えるのだろうか。戸惑ってしまい答えに詰まっていると、ジェラルドは私の両腕を掴んで。

「……ごめんね。流石に許せそうにない」

視界がぐらりと傾いたかと思うと、私は彼によってベッドに縫い付けられていた。