軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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そんな風にのんびりと過ごしていたら、一ヵ月なんて時間はあっと言う間に終わってしまって、ウィンがすっかりノンナに懐いた事もあって、僕は後ろ髪を引かれながらもそろそろ仕事を始める為に、鍛冶師組合へと足を運んだ。

まぁなんたって、平和で穏やかな暮らしを維持する為には、それなりの稼ぎはどうしても必須だ。

「お待ちしておりました。先日ぶり、いえ、先日はお顔を拝見しただけなので、六年ぶりになりますね。当組合に足を運んでいただけて、嬉しく思います」

そうして鍛冶師組合で僕を出迎えてくれたのは、あの日、町であった組合の男性職員。

彼はやはり嬉しそうに、それから安堵した様に、笑みを浮かべてる。

あぁ、もしかして、僕がここに来るのがあまりに遅いから、そのまま旅立ったかと心配されていたのだろうか。

「お久しぶりです。連れた子が新しい環境に慣れる迄、少し時間を貰いました。何か仕事はありますか?」

僕がそう問えば、男性職員は頷いて、三つの仕事を提示した。

どうやら僕の都合に合わせて、好きな物を選んで良いらしい。

実に良い待遇である。

そして肝心の仕事内容は、一つ目はこの町の衛兵隊が使用する武器や防具の修理や、数が足りない物を作っての補充。

勿論それ等を全て僕が賄うのではなくて、こなした数、仕事への評価による出来高の報酬が支払われるらしい。

二つ目はこの町の鍛冶師に対する技術指導。

以前に僕が打った剣は、見本、手本として鍛冶師組合に飾られ、この町の鍛冶師に良い刺激を与えたそうだ。

それは実に面映ゆい話なのだけれど、それを打った僕が再びこの町を訪れた事を聞き付け、技術指導を頼みたいと言い出した鍛冶師が居るんだとか。

その鍛冶師が直接僕の所に突撃して来る事は、鍛冶師組合が止めて防いでくれたと言う。

だが弟子入りとまでは言わずとも、何らかの形で町の鍛冶師に技術指導を行う事は、鍛冶師組合からも改めて頼みたいとの事だった。

最後に三つ目はこの町の領主……、もといトラヴォイア公国の王への謁見だ。

何でも、このジャンぺモンの町でちょっとした名物になった剣を王が見て、更にその製作者がエルフと知って、興味を抱かれてしまったらしい。

さてこうして仕事内容を並べてみると、実質選択肢は一つしかなかった。

まず三は論外だろう。

何れは別の形で断り切れなくなる事はあったとしても、今は選択の余地が僕にあるなら、わざわざ王侯貴族と関わりたいとは思わない。

それはこの地に住む人間には名誉ある話なのかも知れないけれど、各地を旅するハイエルフである僕には余計なしがらみである。

次に二もやはり論外だ。

余程に相性が良かったり、熱意のある相手に鍛冶を教えると言うのなら兎も角、複数人に対する技術指導等は真っ平だった。

僕は、僕がクソドワーフ師匠から授けられた技術を、切り売りする形で誰かに教えて報酬を得たいとは、少しも思わない。

「だから僕は一つ目の、修理と補充を引き受けるよ。幸い、僕は仕事の手は早い方だし、出来高払いは有り難いよね」

そんな風に僕が言うと、男性職員はちょっと困った風に苦笑いを浮かべる。

どうやら彼も、僕が一つ目の仕事しか引き受けないであろう事は、最初から予測していたらしい。

ただ鍛冶師組合の立場的には、他の仕事をどちらも引き受けて欲しかったのだろう。

「えぇ、エイサーさんの腕なら、その仕事でも十分に稼げますでしょう。但しその、他の仕事をお断りになると、こちらで話を止めておく事は出来なくなりますので……」

男性職員は、続きの言葉を言い淀む。

もしかすると王の使者なり、或いは弟子入り志願者なりが直接僕を訪ねて来るかも知れず、そこに鍛冶師組合が口を挟む事は難しくなる訳か。

それは、うん、仕方のない話だった。

僕としては、この一ヵ月の間、鍛冶師組合がその話を止めていてくれただけでも、十分にありがたい。

もしもウィンとの時間を無粋な来客で邪魔されたなら、僕はきっと酷く不機嫌になってただろうし。

「何かあれば自分で対処します。あぁ、でもこの町の事情には不案内なので、相談はさせて貰えると有り難い、かな?」

僕がそう言えば、男性職員は笑みを浮かべて頷く。

まぁそんな来客が来ると限った訳でもないのに、今から心配し過ぎても仕方ない話でもある。

もしかしての話をすれば、キリなんてないのだ。

王からの使者が来たとしても、全く高圧的ではなくて、丁寧でユーモア溢れる興味深い人物かも知れない。

弟子入り志願者が来たとしても、熱意に溢れて、僕が気に入る人物かも知れない。

先に起こる問題を予想して備える心掛けは大切だが、それに意識を取られ過ぎない事も、同程度には必要だった。

「鍛冶場は以前と同じく、この組合の設備をお使い下さい。エイサーさん、また貴方の様な鍛冶師と一緒に仕事が出来る事を、とても光栄に思います」

そう言って手を差し出した男性職員と握手を交わしてから、僕は見覚えのある鍛冶場に案内される。

ノンナは大きく成長し、男性職員は少し年を取っていて、時は確実に流れていたけれど、この鍛冶場は以前と変わらぬそのままの姿だ。

そこに懐かしさと少しの嬉しさを感じながら、僕は炉に燃料を入れて、寝ていた火の精霊を起こす。