軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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アイレナの死後、パンタレイアス島は悲しみに包まれる。

ゆっくり時間を掛けてそれを受け入れていた僕よりも、ずっと島の皆はアイレナの死を悲しんだ。

島の名前を、パンタレイアス島から、アイレナ島へと変えてしまうくらいに。

彼女がどれだけ島の発展に心を尽くして来たのか、皆はちゃんとわかってくれていたのだろう。

僕はそれから半年掛けてアイレナの銅像を作り、島の広場に設置した。

そう、石像じゃなくて銅像である。

海風の吹くパンタレイアス……、アイレナ島には、石像よりも銅像、正確にはブロンズ像が向いていると思ったから。

まずは石像を彫って型を取り、何度も試作を繰り返して、納得のいくブロンズ像を作ったのだ。

それから、僕は島を出る。

流石に、アイレナ島は彼女の思い出が多過ぎた。

何せ今は、島の名前からしてアイレナなのだ。

ここで過ごせば、僕は全ての時間を思い出に浸って過ごす事になるだろう。

それも決して悪くはないが、少なくともアイレナは僕にそんな生き方を望まない。

島の皆は別れを惜しんでくれて、家や工房は残しておいてくれるらしいが、……まぁ彼らの子や孫、更にその先の世代になれば、建て替えるなり何なりして、誰かが使うようになる筈だ。

僕はそれでいいと思う。

ハイエルフとしての生が終わり、精霊になるまではもう少しばかり時間があった。

その時間を、僕は一体どうやって過ごそうか。

僕は森を出てから、多くの大切な人々に出会って、その死を見送っている。

色んな人がいたけれど、誰もが皆、精一杯に自分の時間を生きた。

そんな彼らとの思い出が、僕の背中を押す。

ハイエルフとして生きる時間は長いけれど、僕も彼らのように自分に与えられた時間は精一杯に生きよう。

少なくとも、彼らと共に過ごしたハイエルフである間だけは。

……そして、そのもう少しばかりの時間も過ぎた。

具体的には二百年と幾許か。

今、僕がどうしているかといえば、故郷であるハイエルフの森で過ごしてる。

時折、不死なる鳥のヒイロに乗って、あちらこちらに行く事はあるけれど、以前のように自分の足での旅は、もう暫くしていない。

残った財産やら、愛用の魔剣以外の作品は、各地に隠して宝の地図を書いてきた。

ハイエルフの、深い森に置いておくより、その方がきっと楽しいだろうと思って。

僕はもう、精霊になる時も間近である。

この肉体を、魂が窮屈に感じているのが、どうしたってわかってしまう。

旅の最中にハイエルフとしての時間を終えるのも僕らしくはあるけれど、そうなると問題は残される肉体だ。

吸血鬼や吸精鬼やらの邪仙に見付かると何に使われてしまうかわからないし、地に還ればそこには大きな森が生まれるだろう。

そんな事になると、誰かに物凄い迷惑をかける羽目になる。

例えばの話だが、町の酒場で酔った拍子に、うっかり精霊になってしまったとしよう。

それはとても僕らしいうっかりではあるけれど、残された身体は町の墓地に埋葬されて、その十年後には町が森に飲まれました。

……なんて事になりかねないのだ。

故にこの身はちゃんとハイエルフの聖域に還す為、僕は残りの少しばかりの時間を、深い森で過ごしてる。

ただ僕はやっぱり、何もせずに時間を過ごすのは向いてないから、数ヵ月に一度、一週間から二週間くらいは、深い森を出てプルハ大樹海で、剣で魔物を狩っていた。

といっても魔物を殺しまくってる訳じゃない。

本当は、その方が世界の終焉を遅らせられるのかもしれないけれど、やっぱり食べもしないのに殺すだけってのはあまり好きになれなかったから。

大きな魔物を食べ尽くすのは無理にしても、少しでも口にする心算で狩っている。

ただ集落のハイエルフ、特に若いハイエルフには、精霊に頼らず剣一本で魔物を狩る姿が目新しいらしく、僕の狩りに同行したがったり、剣の振り方を教えてくれって言い出す者が、実は少なくない。

あぁ、これがサリックスの言っていた、悪い影響って奴なのだろうか。

そんな風には思うけれど、僕は悪い影響を与える側のハイエルフなので、付いてきたい者は好きにさせてるし、剣も振り方くらいは教えてる。

何かを切る為じゃなく、好奇心や時間を潰す為に学ぶ剣がどこまで形になるかは知らないが、……まぁ僕も、最初に剣を握った動機は似たようなものだったし、偉そうに言えた義理じゃないから。

また好奇心から肉の味を覚えた若いハイエルフは、僕が精霊になった後も、魔物を狩り続けるかもしれない。

そうなると、世界の終焉を遅らせる為に、ほんの少しの役には立つ筈だ。

もしうっかり、更に外の世界に興味を持って出て行ってしまうと……、そりゃまあ大変な事になるけれども。

しかしきっと外の世界に出て行ったハイエルフは、貴重な経験ができるだろう。

それも善しと考えてしまう辺り、僕は本当に悪いハイエルフだった。