軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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拘束したファーダ・フィッチ達をサバル帝国行きの船に詰め込んでから二年が経ったある日。

パンタレイアス島に、再び遠方からの来客がやってくる。

但し今回の来客は、西ではなく東から。

それはサバル帝国がある西部とは、大陸の反対側に位置する東部の巨大国家、黄古帝国からの使者だった。

ソレイユは15歳の半ばも過ぎ、一人前の大人として認められる時も近い。

彼女はこの先、一体どんな生き方を選ぶのだろうか。

6歳から九年間、僕はソレイユに剣を教えたが、彼女の剣才は並みだった。

恐らく魔物も人も、今のソレイユにはまだ斬れないんじゃないかと思う。

毎朝の鍛錬は日課にしてるから、剣を振った時間に相応の腕にはなってるけれど、逆に言えばその程度に過ぎない。

僕のように長い寿命があれば少しずつでも積み重ねていけるけれども、人間である彼女にその時間は与えられていなかった。

アイレナが教えてる精霊術、精霊からの助力を得る術に関しては、優秀であると聞いている。

ただそちらも身を護る程度ならともかく、戦いに使える腕があるかと言えば、……それも微妙なところだろう。

精霊に力を貸してくれる気があっても、相手を傷付け、打ち倒すイメージを抱かなければ、強力な現象は起こらない。

気持ちに怯みがあれば、精霊は明確にそれを感じ取る。

少なくとも今のソレイユには、精霊の力を借りて誰かを傷付ける事は、難しいんじゃないだろうか。

もちろん、それは別に悪い事じゃない。

ソレイユに興味がありそうだったから、僕は剣の振り方を教えたけれど、その技を無理に役立てる必要はどこにもないのだ。

むしろ身体を動かす事で彼女が健やかに成長してくれたと思えば、既にこれ以上なく役立っているとも言える。

精霊術に関しても同じだ。

僕らにとって友である精霊との触れ合い方を学びながら、ソレイユの感性は形作られた。

それ以上に大切な事はないだろう。

戦えるかどうかなんて、実に些細な話だった。

尤も、仮にソレイユが冒険者になりたいとか言い出したら、今の実力と覚悟じゃ無理だからと、僕は反対するだろうけれども。

それとこれとは、また別の話である。

では彼女が一番得意な事は何なのかと考えてみると、……鷲であるシュウと心を交わす事だろうか。

こればかりは僕にも真似のできない、ソレイユだけの特技だ。

シュウは僕が釣りをしてるところを見かけると魚をねだりに来るけれど、しかし僕の言う事を聞いたりは特にしなかった。

だがソレイユの言葉にシュウが従わなかったところは、僕は一度も見た覚えがない。

また僕が作って彼女に贈った手甲と肩当は、定位置という程ではないけれど、シュウが留まる場所として活用されてる。

このパンタレイアス島で、腕か肩に鷲を留まらせた少女と言えば、誰もがソレイユの事だと思い当たるだろう。

しかしそれが彼女の生きる道に大きく関わる特技かと言えば、これもやはり微妙な話だ。

狩人や斥候として生きるなら、稀有な技ではあるかもしれないが、ソレイユにそれが活かせるだろうか。

彼女はシュウを友として接し、大切にしている為、危険のある事をさせられるようには見えなかった。

すると現実的な進路としては……、このままアイレナの手伝いをして大人になる時を迎え、エルフのキャラバンの出張所に雇われる辺りか。

まぁそれが良いんじゃないかと、僕も思う。

独り立ちを強く意識してたウィンは、力を身に付けて旅に出たけれど、その娘だからってソレイユが似たような真似をする必要はない。

この島で恋人を見つけて結ばれ、子を残してくれたなら、僕にもアイレナにも楽しみが一つ増える。

ソレイユの子孫を長く見守るという、穏やかな楽しみが。

でも予想していたそんな未来は、東から来た客人が塗り替えてしまう。

黄古帝国から、仙人に言われてやって来た彼の乗る船の接近には、僕だけじゃなくてアイレナも、更には僕らに比べると感知能力に劣るソレイユですら、即座に気付く。

何故ならまるで、このパンタレイアス島に向かって、別の島が近付いて来てるかのような、そんな大きな気配がしたから。

つまりは、そう、東からの客人は、仙術の使い手だったのだ。

気配の大きさから言えば黄古帝国の支配者である仙人達程ではないけれど、過去に会った邪仙、レイホンや聖教主には引けを取らない。

尤もレイホンや聖教主のように放つ気配が歪じゃないから……、自然の力を取り込んで、昇華する事に成功した仙人の見習い、或いは高弟辺りになるんじゃないだろうか。

ただ急にやって来た大きな気配に驚きはしたが、僕は仙人からの使者がやって来る理由に、一つばかり心当たりがあった。

より正しく言うならば、それは仙人からの使者というよりも、彼らと繋がりのあるもっと上位の存在、巨人からのメッセンジャーだ。

以前に雲の上を訪れて知った事だけれど、仙人という存在を生み出したのは巨人である。

巨人の力の使い方を参考に、それを模した技が仙術であり、それを正しく会得した人が仙人となるらしい。

それは巨人の行う、終焉を避ける実験の一つだったが、本当に僅かな限られた才の持ち主しか仙人には至れなかった為、実験失敗だと判断された。

けれどもその後も巨人と仙人の間には繋がりがあり、仙人は巨人の地上での手足として、働く事があるという。

故に今回も、僕に巨人の言葉を伝える為に、仙人達は弟子をこのパンタレイアス島に使者として派遣したのだ。