軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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前に幾らか述べたように、僕はヨソギ流の当主の決定に口を挟める立場だけれど、実際にそこに異論を唱えた事は殆どない。

もちろん幾人の候補の中から誰が適格かと問われれば、剣の才、人を見る目、導く力を考えて、意見を言うくらいはするだろう。

それが相談役に求められる役割である事は、僕にだってわかっているのだ。

後継ぎを定めるとなると、合理的な判断ばかりじゃなくて情が絡む。

最良と呼べぬ決定に対し、声に出せぬ多くの不満を読み取ったなら、それを声にするのも相談役の務めだろう。

だが本当はそれもあまり好きじゃなくて、既に決まった当主と会って手合わせをし、その子に大きな問題がない事を確認して、安堵するのが一番良かった。

何故なら、僕はこんなにも自由気ままに、好き勝手に生きている。

そんな僕が、誰かの人生を左右する言葉を吐き、場合によっては生まれてからずっと積み重ねてきた全てを否定するなんて、そんな資格が有るのだろうかと、どうしても思ってしまうから。

尤も、そうであっても、本当にそれが必要であるなら僕は役割を果たすだろうけれども。

しかしそんな僕に、まさにその他人の人生を左右する決断を手伝って欲しいとの願いが、遠方より届く。

それは僕が、351歳になった年の事。

願いを受けてパンタレイアス島で僕が乗り込んだ船は、西部へと向かう物。

そう、僕にその決断の手伝いを願ったのは、今の西部で一番の大国であるサバル帝国の皇帝となったウィンだった。

この時、ウィンの年齢は181歳。

ハーフエルフは二百年から三百年程の時間を生きる。

僕が見た限り、ウィンの寿命が短いって方だとは思わないから、まだそれなりに時間は残ってる筈。

にも拘わらずウィンからの願いは、次代を、サバル帝国の次の皇帝を決める決断の手助けだったから、……どうやら彼は、自分が生きてる間に誰かに帝位を譲って、寿命の限りは新しい皇帝を後ろから支える心算なのだろう。

でも、それはきっと、とても正しい判断だ。

ハーフエルフであるウィンは、サバル帝国で力を持つ種族、獣人との間に子を作れなかった。

だからどうしても、サバル帝国を継ぐ誰かとウィンの間に血縁はない。

つまり次代の皇帝にはそれを継ぐに足る理由がなく、どうしたって権威に不足する筈。

それをウィンが自らの存在で補強する形で後ろに控え、叶うならば彼の寿命が残る間に、更にその次へと世代交代を行わせる事で、その後も続く帝位の継承を安定させたいと思っている。

仮にウィンが、自らの寿命一杯まで皇帝としてサバル帝国を差配し続ければ、彼の死後は、即座に国が割れてしまうだろう可能性も考えられた。

相変わらずあの子は、ちゃんとサバル帝国の事を考える皇帝をやってるらしい。

「アイレナはどうする?」

手紙を渡してそう問えば、ざっと目を通したアイレナは首を横に振る。

尋ねはしたものの、てっきり付いてくるだろうと思い込んでた僕が驚くと、

「エイサー様を呼ぶのは、ウィン君はきっと甘えたいのでしょうから、私は邪魔をしないでおこうと思います」

……なんて風に、彼女は笑ってそう言った。

なるほど、ウィン君か。

アイレナに掛かると西部一の大国の皇帝も、小さな子供のままらしい。

尤も彼女はウィンを、僕に引き合わせる前から知ってて、何度も顔を見に生まれた森へと足を運んでいたのだから、そうなるのも無理はないのかもしれなかった。

あぁ、それにそうか。

ウィンの養父として知られている僕だけならともかく、アイレナまでもが今回の話に関わると、サバル帝国からすればエルフの強い干渉に思えてしまうかもしれない。

それはあまり、上手い話ではないのだろう。

僕がそれに思い当たると、アイレナも一つ頷く。

どうやら彼女も、同じ考えに至っていた様子。

知り合い同士が顔を合わせるにも色々と気を回し、考えを巡らせないといけないなんて実に面倒な話だけれど、それが今、ウィンの生きてる道だった。

僕らはその道を手伝う事はあっても、邪魔しようとは思わなかった。

「そっか、じゃあ、向こうで何か土産を探してくるよ」

サバル帝国には一人で行くしかないかと、僕はそう言う。

西部までは船でも結構かかるから、一人旅となると少し寂しい。

いや、もちろん船には船員が沢山いるし、僕には精霊だって傍に居るから、完全に一人って意味じゃないのだけれど。

もうそれなりの時間、ずっと一緒に暮らしてるから、まぁ、やっぱり少しは寂しくなってしまうのだ。

ヒイロに乗って行こうかなぁとも、少し思う。

そしたら西部にもあっという間だし。

だけどサバル帝国にまでヒイロで行くと、絶対に妙な騒ぎになるだろうし、目立たぬ場所で乗り降りをして、そこから普通に移動をするなら……、それこそ普通に最初から船で行った方が面倒がない。

「そうですね。では、お土産、楽しみにしてますね」

考え込んだ僕の気も知らず、アイレナはやはり笑ったままに、そんな風に言葉を返した。