軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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今は連合軍が支配するクォーラム教の聖地近くに、続々と兵が集まりつつあるらしい。

ハーフリングの斥候によると、その数は既に二十万を越え、最終的には三十万も越える見込みとの事だった。

割合で言えばおよそ六割から七割がミズンズ連邦の兵で、残りが他の人間国家から派遣されてきた兵になるだろう。

……凄い数だなぁとも思うし、西部中から集めてもそんなものなのかとも思う。

もちろんこの数は、本当に西部中からかき集めた数には遠い筈。

人間の国々だって自国を防衛する兵力は当然ながら必要となるし、兵と同じく問題なのが、その兵を養う兵糧だ。

離れた場所の国である程、ミズンズ連邦にまで兵を派遣するには、多くの兵糧が必要となる。

故に遠くの国が律儀に大軍を派遣する事は考えにくいので、この数は西部の人間の総力には遠い。

尤もそれでも、連合軍の数倍の兵力は集まってるから、激戦になるのは間違いがなかった。

但し連合軍の種族の代表者達は勝利する心算で軍略を練っているし、僕もこの戦いは連合軍が勝つと思う。

こんな言い方をするのはなんだけれど、やはり種族の差というのはとても大きいのだ。

まず今の段階でも、人間はハーフリングの斥候を見付ける事ができず、一方的に軍容を連合軍に知られてる。

次に拠点となる砦や町にはドワーフの手が入り、人間が知るそれとは防衛力が別物となっていた。

獣人は防衛には向かないが、ドワーフ達が自らが手を加えた拠点に籠れば、数の差があったとしても攻撃を耐え抜くだろう。

魔術師は時に戦場を左右しうる存在だが、人間の魔術師はエルフの精霊術に敵わない。

おかげで僕が魔術を学ぶ時は、他の魔術師から大層嫌われた。

人間の軍が拠点を攻め落とせずに足を止めれば、獣人がそれを削り殺す。

夜目が利き、匂いや気配で相手の位置を捉える事に長けた、獣の感覚と身体能力を兼ね備えた彼らは、夜襲や野戦に強い。

昼も夜も戦いを強いられる人間の軍は、兵力と共に士気を削られ、やがては崩壊していく筈である。

最も警戒すべきはクォーラム教によって集められた神術、法術、つまりは超能力の使い手だが、それも大軍の戦いを左右する程の力はないし、超能力を備えて生まれてくるのは、何も人間だけではないのだ。

特に獣人の有角族は、有牙族に比べると単純な戦闘能力には劣るけれども、精神的な力を重んじる彼らには、人間の宗教組織と同じく、超能力の持ち主を見付けて能力開発を行うノウハウがあるという。

更に決して数は多くないが、ケンタウロスやアラクネ、蟻人といった、特異な力を持つ種族も連合軍には参加していた。

だから数の差に苦戦する事はあっても、恐らく連合軍が勝利するだろう。

でもそんな事は、きっと人間の軍を招集した張本人である聖教主だってわかってる筈。

ならばその戦いを単に軍に任せるだけでなく、きっと邪仙としての力、仙術を使って干渉してくるに違いない。

しかしその瞬間こそが、聖教主を討つ好機でもあった。

戦いをなるべく早く終わらせたいと思うウィンにとって、つまりは僕にとっても、聖教主が後方に引き籠ったまま、戦意を煽り続ける展開が一番困る。

まぁいずれにせよ、決着をつけるべき時は、もう然程に遠くない。

そんな戦いが間近に迫ってる今日、僕はウィンに誘われて、クラウースラの町を離れて遠出をしている。

行き先は最前線の間近になると予想されるが、それでも決して戦場とはならないだろう場所、そう、クォーラム教が聖地とする場所の傍にある、霊木を有する大きな森だった。

霊木を有する大きな森は、エルフにとって非常に重要な場所だから、連合軍もそれに配慮して戦場にはしない。

また人間側も、クォーラム教の聖地を奪還する目的の幾らかは、この森の霊木から採れるアプアの実、若返りの霊薬の原料だ。

いわばこの森は戦いに勝利した際の賞品のような物で、どちらも傷付けようとはしないだろう。

さて、今、この時期に森を訪れる理由を、未だにウィンには聞いていないが、彼が護身用の武器以外に持った二本の木剣を見れば、目的は明白である。

東中央部に居た頃にウィンから届いた手紙には、何時かまた手合わせしたいと幾度も書かれてた。

何も戦いを控えたこんな時にと思わなくもないけれど……、いや、だからこそなのか。

もしかすると、今を逃がせばもう二度と機会はないかもしれないと、彼は思っているらしい。

それは少しばかり、悲観が過ぎると思わなくはないけれど、この争いが続く地で、ウィンはきっと、不意の別れを多く経験したのだろう。

邪仙を倒す為に有効な手段、魔剣を手に入れ、更に僕が戦いを援護するとなっても、尚も不安を抱えるくらいに。

或いは僕がその戦いを援護、つまりは参加するからこそ、僕が居なくなってしまう未来を考えるのかもしれない。

まぁいずれにしても、彼が手合わせを望むなら、僕に断る理由はなかった。