軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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情報を仕入れ終えた僕は、再び北西に向かって旅を続ける。

真っ直ぐにクォーラム教の聖地を目指すのであれば、北西ではなく西へと向かうべきだが、僕は取り敢えずは人間以外の種族の勢力圏に入る事を優先した。

恐らくウィンがいるのは、クォーラム教の聖地ではないにしても、その近くだろうとは思う。

大きな戦いが控えているなら、彼は後方じゃなくて、前線に近い位置に居ようとする筈だから。

あの子は、僕にとっては困った事に、そういう子だ。

ならば僕も真っ直ぐにクォーラム教の聖地を目指そうかとも思ったのだが、残念ながら彼の地はここから些か遠かった。

僕がクォーラム教の聖地に辿り着くには、幾つもの人間の国を、その中でも最も大きなミズンズ連邦の領土を突っ切らなければならない。

街道を利用せず、人里に近寄らない旅にもすっかり慣れてはいるけれど、そうしてしまうとこれから数ヵ月の間は新しい、状況の変化に応じた情報が一切得られなくなってしまう。

もちろん今回のように襲い掛かって来る人間を返り討ちにして尋問するって手もあるけれど、これは可能ならば避けたい手段である。

何せ、僕は一切悪くないのに、こちらが盗賊にでもなったような気分にさせられるから。

他に手がなければ仕方がないが、他の種族の勢力圏、特に連合軍の中心となっているという獣人に接触できれば、もっと穏便に情報は手に入る筈。

またこちらは情報に比べれば些細な問題ではあるのだが、そろそろ岩塩を始めとする旅の必需品の残量が心許ない。

僕が西中央部でシヨウの国を旅立ってからもう半年近くは経っていて、通る場所が場所だけに、その間は一切の補充が叶わなかったし。

護衛から情報を聞き出した後、行商人に取引を申し出たのだけれど、彼には亜人に売る物は一つもないと拒絶されてしまった。

自分が危うい立場に置かれているにもかかわらず、随分と頑なな態度だったけれども、何か人間以外の種族に対して強い恨みでもあったのだろうか。

護衛の二人は素直に情報を話してくれたし、あの行商人が西部の平均的な人間だとは、あまり考えたくはないのだけれども。

まぁいずれにしても、やはり他の種族の勢力圏にさえ出れば、必需品の補充も叶うだろう。

クォーラム教の聖地へは多少遠回りになるけれど、そればかりは仕方がなかった。

聖地奪還の軍を聖教主が招集しているという話だが、すぐさま動員が叶うという訳じゃない。

ミズンズ連邦から、常備兵のみを集めるだけならともかく、こんな遠方の国にまでその話が伝わっている、兵の供出を求めているなら、どうしたって動員には時間が必要だ。

民から兵を集めて最低限の訓練を施し、装備を与えて体裁を整え、更に食料を手配して、集結地までの行軍計画を立てるとなると、一朝一夕にどうにかなるものではないから。

恐らく聖教主は聖地奪還の軍に多数の国を協力させる事で、クォーラム教の権威が健在であると誇示し、圧倒的な大軍を以ってその他の種族の連合軍を叩き潰したいのだろう。

だがその思惑はともかくとして、こんな西部の外れの国まで招集の話が伝わっているという事こそが、まだ時間があると僕に教えてくれている。

当たり前の話だが、多くの人間が集まって移動しなければならない軍よりも、単身で旅慣れた僕の方が、圧倒的に移動速度は速い。

ここからクォーラム教の聖地までの遠さが、即ち僕にとっての時間の余裕だった。

とは言え、もちろん急いだ方が良い事には変わりはない。

僕は地形を気にせず真っ直ぐに北西へと歩き続け、二ヵ月程で人間の国の幾つかを突っ切って、その他の種族の勢力圏へと辿り着く。

そこは見渡す限り一面の荒野で、整備された道もなく、昼夜の寒暖の差が非常に厳しい場所だった。

けれども、だからこそ野に生きる獣たちは逞しいのか、遠目には野牛の群れが移動しているのが見える。

更にはその野牛を狙って、群れからはぐれるのを待ってつけ回してる数匹の大型肉食獣も。

そういえば西部の人間の国を移動している時にも思ったが……、西部は西中央部程に魔物の数が多くない。

クォーラム教が活動してる長さで言えば、西部の方がずっと長いにも拘らずだ。

恐らくそれはエルフが去った、或いはエルフを捕まえた後の小さな森を、魔物が増える前に焼いて切り開いてしまったからなのだろう。

最初からエルフが居なくなれば森に魔物が増えると知っていたのか、西部を掌握する過程でそれを知ったのかはさておき、クォーラム教は増える魔物への対処法を把握している。

なのに西中央部では、敢えてその対処を取っていなかった。

その理由は、魔物が増えて不安が増大した方が、西中央部での布教に有利であるからじゃないだろうか。

だとすれば僕がハイエルフであるから、エルフに寄った物の考え方をしている事を差し引いても、クォーラム教は好きになれない存在だ。

……話が逸れたが、辺り一面が荒野であってもその地で人が生きているなら、その痕跡は必ず残る。

大草原でもそうだった。

あの広い大草原を生きる民は、家畜の餌となる草を求めて居住地を転々とする遊牧の民だが、彼らの移動にも痕跡は残り、それを辿れば居住地へと辿り着く。

ここが荒野であっても、この地に生きるのが人間以外の種族であっても、それは同じ事だろう。

狩りをしてその肉を糧とするなら、狙う獲物はあの野牛もその一つか。

だったらあの肉食獣と同じく、群れを監視し、それを追う狩人がいるかもしれない。

仮に今は居なくとも、その狩人が野営をした跡が残っているかもしれない。

一つ痕跡を見付ければ、その近くに必ず別の痕跡もある筈だ。

そうやって痕跡を一つずつ丁寧に辿って行けば、やがては彼らの生活圏に足を踏み入れる事になる。

そうして出会うのが獣人か、或いは別の種族なのかはまだわからないけれど、取り敢えずはあの野牛の群れを追ってみるとしよう。