軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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僕がシヨウの国に来てから六年目、敵対的な南の隣国であるカザリアと、更にその南にある海に面した国、ジルチアスの争いが激化する。

元々、西部の宗教を国教とするカザリアと、豊穣神を崇めるジルチアスは敵対関係にあったけれど、その内実はカザリアからの侵攻をジルチアスが跳ね除けているだけだったらしい。

何故ならジルチアスは海を使った貿易や特産物の生産で富んでいたし、逆にカザリアは戦意は旺盛だが国内は魔物も多くてボロボロの国だから、ジルチアス側にはカザリアを占領したい理由がなかったのだ。

もちろん攻められる事に関する怒りや憎しみがなかった訳ではなかろうが、カザリアを滅ぼし、ボロボロになった国土を手に入れてもその管理が負担にしかならないとなれば、ジルチアスには動かないだけの理性があった。

けれども最近になってその状況が大きく変わる。

……その変化とは、イネェルダの地にエルフの国、シヨウが生まれ、その周囲に大きな川が発生し、更にエルフと友好的な国の間で、川を用いた水運が発展し始めた事。

エルフと敵対的な国であるカザリアはその対象外だが、それでも発生した川には面していた。

つまりエルフに対して友好的なジルチアスがカザリアの国土を得て川に面すれば、その水運に加われるのではないかと、ジルチアスの重鎮は考えたのだ。

いやまぁ重鎮というか、具体的には僕と手紙のやり取りをしてる一人である、ジルチアスのグレンダ・ヴェルブス伯爵がだけれども。

グレンダからはジルチアスが川に面すれば、エルフの助けを得て水運に加われる可能性はあるかと、確認する手紙も来てたし。

僕の個人的な意見としては、戦争が激しくなる事は好まない。

でもシヨウの国として見るならば、敵対的な国であるカザリアが消え、ジルチアスが水運に加われば、川船の運航に協力してるエルフの価値は、存在感は更に増す。

何一つとして損がないばかりか、大きな益がある話だ。

当然ながらカザリアが占拠されたとしても、西部の宗教の教えを信じていた元国民は、そう簡単に信用できないけれども、その管理をジルチアスがきっちりと行い、責任を負うというのなら、シヨウの国がそれを拒む事はないだろう。

そうなるとジルチアスの行動は実に早かった。

攻めたとしても利益が見込めず、不利益ばかりしか予想されないから、ジルチアスはカザリアの存在を我慢してただけである。

そこに利益の見込みが生まれたのなら、もうジルチアスがカザリアの存在を許そう筈がない。

伝え聞く話によると、破竹の勢いでジルチアスの軍がカザリアの町を占拠していってるそうだ。

まぁ元々の国力に差があるし、……カザリアは川ができた後もシヨウの国に攻め込もうとして、何度も兵を川に沈める結果になっていたから、以前よりも弱くなっていたし。

理性的に考えればカザリアの行為は愚かだったけれど、しかし僕は、それこそが宗教の恐ろしさだと思う。

一つの思想に纏まった集団は前に進む強い力を発揮するが、けれども別の方向、横や後ろを向けなくなる。

人間を最も高い地位に置く西部の宗教を信じたカザリアの人々は、エルフに対する敗北を受け入れられずに、その戦力をすり減らした。

カザリアを愚かだと笑うのは簡単だけれど、でもその轍は、誰だって踏んでしまう可能性はあるのだ。

別に宗教ではなくとも、人間だけでなくエルフだって、ハイエルフだって、人は信じた何かの為になら、時に盲目的になるのだから。

僕にもそうなってしまいそうな事が、幾つかはある。

シヨウの国の南側で、僕は今、流れる川をじっと見ていた。

東側に比べて、南側は水の流れがとても急だ。

しかも曲がりくねった川の流れは一定じゃなくて、場所によって大きく変わるから、船の運航が困難な難所となってる。

もちろん僕がそうなるように地に線を引き、水の精霊に頼んで流れを作っているのだから、当たり前の話なのだけれども。

でもジルチアスがカザリアを完全に制圧し、この川へと辿り着いたなら、その流れも徐々に穏やかにしていくだろう。

やがては幾人ものカザリアの兵士を飲み込んだ事なんて、まるで忘れてしまったかのように、静かで穏やかな川となる。

それを思うと、僕は何とも言えない気分になった。

ぱちゃっと、急な流れの中で、魚が跳ねる。

あぁ、他の川とも流れを繋げたから、この川にも生き物が増え始め、魚が住み着くようになったのか。

川の流れが穏やかになると、この魚は困るだろうか?

ある程度は流れの速さも、残しておくべきかもしれない。

今はまだ魚や川底に生える水草等も少ないけれど……、やがては水棲の魔物さえも、発生するようになる筈だ。

あと数年もすれば、僕はこの地を去り、この川も僕の手を離れる。

それから後、この川はどんな風に変化していくのだろう。

僕はそんな事を考えながら、川の流れを見つめ続けた。

エルフの身を守る為に作った川が、大きな戦いを呼ぶ要因となった事を、僕の中でどんな風に消化していいのか、まだわからずに。