軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「我らの友に乾杯だ!!」

船長であるスインの音頭に、船員達が掲げた木製ジョッキをぶつけ合う。

皆がそれを一気に飲み干し、我先にと開けた酒樽から酒を汲む。

こう、実に野蛮な宴会だけれど、それが良い。

僕も酒に口を付けるが、かなり甘い酒だった。

あぁ、これは、……サトウキビの酒だろうか。

サトウキビの酒といえば、砂糖を絞り終わったサトウキビの汁、廃糖蜜を利用して作る蒸留酒、ラム酒を思い浮かべるけれど、これはまた別である。

恐らくは、サトウキビを発酵させて作った、醸造酒じゃないだろうか。

中々に面白い、酒だった。

それから味も、悪くない。

味を確かめた僕は、更にグイと呷って喉に流し込む。

酒精はそんなに強くないから、それなりの量が飲めるだろう。

それから料理に手を伸ばし、あばら骨付きの肉を、齧り取って喰らう。

船の上では肉といえば、保存ができるように塩漬けにした物が主になるから、いつもとは違うちゃんとした脂の旨味が、殊更に堪らない。

酒は僕がバドモドの島で手に入れた物を提供したが、料理の食材はスインが奮発してくれた。

どうやらスインは、船の上で宴会になる事を見越して、食材の肉を仕入れていてくれたのだろう。

流石は一流の商人でもあるだけあって、全く本当に、気の利く男だ。

でもこうして久しぶりに、脂がたっぷりとのった肉を食べると、なんだか狩りがしたくなってくる。

血の滴るようなステーキが食べたいというのもあるけれど、自らの手で獲物を狩り、余さずに食べる喜びを、久しぶりに味わいたくなったのだ。

まだもう少し先の話になるけれど、大陸の中央部に戻ったら、どこかの森に入ろうか。

ぐるりと周囲を見回せば、残念ながらこの宴に参加できない、見張りの船員と目が合った。

ばつが悪そうに目を逸らす彼だったが、その気持ちは良くわかる。

誰だって美味そうな食事は羨ましいし、酒を飲んで騒ぎに加わりたいのは、当然だ。

まぁ食事に関しては、不満の解消のためにもスインがそれなりの物を、当番で宴に参加できない船員達にも出すだろうから、それで堪えて貰うより他にない。

改めて、酒に口を付ける。

船員達が頻繁に酒の礼を言いにくるが、気にするような事じゃないのだ。

どうせ一人で飲み切れる量じゃなかったのだから、こうして大勢で消費する方が、僕だって楽しい。

それに彼らとは、ミンタールに着いたらお別れになる。

だったらこうして酒を飲んで肉を喰らって、思い出の一つでも増やすのは、決して悪い事じゃないだろう。

「なぁ、森人様……、いや、エイサーさんよ。アンタいっそ船員としてこの船に残らないか」

宴の最中、僕の傍にやってきた船長のスインが、不意にそんな事を言い出した。

彼の意図をつかみかね、僕が首を傾げると、

「いやもちろん、アンタみたいな人に平船員なんて言わねえぜ。何かしらの役職は考えるさ。アンタならどんな待遇で迎え入れても、うちの連中は納得するだろうしな」

彼は慌てた風にそう言い加える。

……どうやら、結構本気で言ってるらしい。

あぁ、それも多分、決して悪くはないのだろう。

色んな場所を旅する船で働くのは、……あぁ、僕に向いてる気が、割とする。

海の男達のわかり易い性格は、僕にとって好ましい物だし、海に囲まれて風に吹かれる環境は、精霊達の声もよく聞こえて、心地が良かった。

だから何時かは、船で働くのも悪くないと、そう思う。

いやいっそ、船で働くのではなく、自分の船を持つ方が楽しいだろうか。

海や風に宿る精霊の助けを借りれば、それこそ僕は、この世界のどこにだって船で行ける。

それは想像するだけでも、胸が高鳴る素敵な旅だ。

でもだからこそ、僕は首を横に振る。

「嬉しい誘いだけれど、今はそれはできないよ。陸には、まだ僕が行かなきゃならない場所、待っててくれる人も、いるからね」

そう、それが素敵な旅になる予感があるからこそ、それをするのは今じゃない。

仮に僕が船に乗り、あちらこちらを夢中で旅してまわったなら、ふと気付いた時には、きっとこの大陸の知人は殆ど残っていないだろう。

あぁ、もちろん、故郷の深い森に住むハイエルフや、精霊、黄金竜、仙人といった、不滅の連中は別だけれども。

アイレナ達、エルフだって、僕よりは早くに死んでしまうのだから。

或いは知人達の墓ですら、僕より先に朽ちてしまう。

「そうかい。いや、残念だ。でも俺はよ、エイサーさん。アンタみたいな森人を船に乗せた事、絶対に忘れないぜ。……まぁまだミンタールには暫くかかるし、よろしくな」

断る僕に、そういって手を差し出すスイン。

僕もその手を、固く握る。

そして丁度その時、そろそろ酒が回ったのだろうか。

飲んでいた船員達の間で、騒ぎが起きた。

よし、それもまた、少しばかり楽しみにしていたイベントだ。

僕はスインの手を離し、懐から取り出した革の手袋を付け、今度は拳を硬く握った。

スインだけじゃなく、全ての船員が僕を忘れられないように、伝説を創ろう。

目指すは全員ノックアウト。

突然の行動に驚くスインに笑みを向けてから、僕は船員達の騒ぎに飛び込んだ。