軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二王子のお茶会     ・

いよいよお茶会の日よ。

気が進まないけど「やりたくない用事こそ最初にこなせ」というおじいちゃんの名言を思い出して頑張ることにする。

お母さまと二人で焼いたアップルパイは全部で四ホールも出来て、護衛の騎士さん達にも配れそうな量。セバスチャンが厳かに抱えて運んでくれたわ。

今回の出席者は王子と私とお姉さまの三人だけみたい。そもそも十一歳の男の子が六歳の女の子をお茶に呼んで何を話すつもりかしらね。

どうせなら同級生のお二人でお話が弾んで、私は一人で王宮のお庭を探検できたらいいなぁ。

まあ、無理か。私が一人で王宮の敷地内をフラフラしてたら衛兵さんに捕まってぐるぐる巻きに縛られて牢屋に放り込まれるわね。

妄想してるうちに素敵な部屋に着いた。外に面した壁は全てスライドドアで、広々と開け放たれている。

「わぁぁ…」

素敵! と叫ぶ前にお姉さまに目で止められちゃった。今日のお姉さまは目から殺人光線か何かが出てるかと思うほど。迫力があるわ。

「やあ、カタリナ嬢、マリアンヌ嬢、来てくれたこと、礼を言うよ」

「本日はお招きいただきまして…」

お姉さまが優雅に挨拶をしようとしてる途中で王子が遮る。

「カタリナ、今日は堅苦しいのは抜きにしよう。同級生とその妹が遊びに来た、それで頼む」

「かしこまりましたアレクサンドル王子」

心を折らずに最後まで優雅にお辞儀をするお姉さま、さすがです。

続いて私の挨拶ね。

「本日はお招き…」

「いや、大丈夫だから。肩の力を抜いてくれ。また噛んだら可哀想だ」

ぬーー。

噛まないし! それに最後まで挨拶したって十秒で言い切れるでしょうに。せっかちさんか。

「あっはっは。ごめんごめん。最後まで挨拶したかったかな」

殿下は愉快そうに笑う。

「マリアンヌ、口!」

お姉さまが唇をほとんど動かさずに注意してくれて、自分が唇を尖らせてたことに気がついた。

ふわー。危ない。不敬になっちゃう。

豪華な室内に感心してキョロキョロしてたらメイドさんたちが香り高いお茶を淹れてくれた。

その香りの素晴らしさに驚いていたら、カットされたアップルパイもお皿に盛り付けられて配られた。

全てが上品でスムーズ。

「このアップルバイは、マリアンヌが焼いたそうだね?」

殿下が珍しそうに眺めてる。

「はい。私と母で焼きました。お姉さまは味見をしてくれました。アレクサンドル様のお口に合うと良いのですが」

お姉さまはなんだか小さくなってるけど、殿下は結構大きくナイフを入れてパクリと食べた。

「うまいな! 王宮で出るアップルパイとはだいぶ見た目が違うが、これはこれで大変美味だ」

そうでしょう、そうでしょう!

「これはお母さまがおばあさまに習ったレシピで我が家自慢のっていいますか、アルハンの田舎の貧乏男爵家の自慢のレシピです!」

あれ?

今誰か「ぐっ!」って変な声を出した?

振り返ったら壁際に立っていた綺麗な顔の若い騎士さんが、顔を真っ赤にして肩をフルフル震わせてますけど。

向かいのワゴンの上でティーセットを並べ直してたメイドさんも、苦しげに目を閉じて口をへの字にしてなにか堪えてますけど。

なんか変なこと言った?わたし。

殿下は顎を左肩にくっつけるようにして震えてるし、お姉さまは天井の隅を眺めて涙目だわ。

「いや、その、すまない、マリアンヌ嬢。君はなかなか愉快だな」

「はあ。そうでしょうか。おじいさまは馬を育てるのに頭がいっぱいでお金儲けに疎くて稼ぎが悪いのだとおばあさまがよくこぼしてます」

「ブハッ!」

後ろの騎士さんが勢いよく吹き出して慌てて顔を取り繕ってる。メイドさんは腕が揺れててカップから盛大にお茶が溢れてますけど?

「殿下、申し訳ございません! 妹が品のないことを!」

お姉さまは立ち上がって今にも床に額をぶつけるかと思うほど頭を下げて謝ってる。えええー。

謝られてる殿下はというと、目を閉じ、片手を額に当てて下を向いたまま、おなか辺りをヒクヒクさせて無言。

みんな笑いに飢えてるのね。この程度の会話でそんなに笑うなんて。

まあ、そんなこんなでお茶会は順調に進みましたよ。

おじいさまとおばあさまの話題を出すと、お姉さま以外のみんなが必ず苦悶の表情になると言うことは確信したわ!

お姉さまは口から魂が半分抜け出たみたいなお顔をしてたけど。

お茶会の話題は、私の趣味が読書だと言うと何を読むのか、とか。

なんでも読むけれど、生き物について読むのが好きで、植物や動物の親から子へ受け継がれる性質の仕組みが面白くて読み飽きないと話したら王子は身を乗り出すようにして聞いてくれた。

その後も王子が次々に質問して。私が答えて。お姉さまは慎ましく聞き役に回ってくださってた。

あっという間に時間が過ぎて、お茶会は終わった。はーやれやれ。

「今日は実に楽しく有意義な時間だった。また来てくれるだろうか」

うわー。それはちょっと。

私がそう思っているとお姉さまが「光栄でございます」とまた上品にお辞儀をした。

「マリアンヌ嬢もまた来てくれるか?」

「ええと、ちょっと考えさせ……ぐふうっ!」

お姉さまに手刀の先で思い切り脇腹を突かれました。