軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第582話 「機械の体」

経験値稼ぎはまだ途中ではあったが、残り時間を考えると目処は立ったと言っていい。

そのタイミングでブラン、バンブの両名から連絡があり、一度中央大陸に戻る事になった。

用件は融合によるキャラクター強化らしい。

祭壇を使うのならレアでなくても問題ないし、『哲学者の卵』を使うにしても教授でもサリーでも出来る作業ではあるが、結果が気になったため付き合うことにした。

集合場所は融合の祭壇のあるトレの森だったが、行ってみるとマグナメルム幹部がほぼ全員揃っており、教授の代わりに知らないキャラクターがいた。

旧世紀のアイドルもかくや、と言わんばかりのフリフリの衣装を身にまとった少女である。

いや、骨格からすると男性だろうか。

「……誰それ」

「ふむ。着替えるのを忘れていたな」

聞き覚えのない声だった。だがその話し方には覚えがあった。

他のメンバーとの距離感や、レアに対して物怖じしないその態度、そして唯一この場に居ない知り合いの事を考えると。

「──教授なのか!」

「ねー。びっくりだよね」

ブランがあまりびっくりしていないテンションで言った。

レアやライラのように、アバターのデザインをほぼリアルそのままにしているプレイヤーのほうが少数派であろう事はわかっているが、教授といえばどうしても老紳士かタヌキを想像してしまう。

その想像の教授の姿と現在の姿を重ね合わせると名状しがたいエグみのような感情が湧き上がってくる気がする。

バンブを含め、他のメンバーは皆なるべく視界に入れないように苦心しているようだ。

そのため教授を中心に不自然な空白地帯が出来ている。

レア自身はどうしたものか迷ったが、とりあえず全員に共通する方針として「深く触れるのはやめよう」という意思が見て取れたので、それに倣う事にした。

「……まあ、いいや。ええと、それで何だっけ」

「うちのバーガンディの強化素材が集まったんで、いっちょ融合実験でもしようかと!」

「ついでにその融合が他の魔物でも出来るのかも試してみたくてな。こっちも一応、鎧獣騎の素材は用意してきた」

「ああ、そうだった。そのために来たんだった」

あまりにあまりな状況に遭遇してしまったため、一瞬目的を忘れていた。

「えっと、じゃあ早速やろうか。バーガンディは祭壇の中央に。あと残骸はこっちに乗せてね」

ブランが連れてきた骨の竜が『死の芳香』を撒き散らしながら前脚をちょこんと祭壇に乗せた。

この環境下で涼しい顔をしているあたり、教授も災厄級としてはそこそこの実力を身に付けているらしい。

いやその涼しい顔というのもやめて欲しいというか、顔を見せるのをやめて欲しいところではあるが。

というか彼──彼?──は何故来たのか。

祭壇を起動し、ブランが虚空を見つめて何やらつぶやき、そして新たに生まれ変わったバーガンディは、骨と機械と鎧が混じり合った、中々に格好いいデザインだった。

「いいね! 格好いい!」

「お、『死の芳香』は無くなったのか」

ライラがそう言うとバーガンディから禍々しいオーラが立ち昇り、辺りに充満した。

「いや出さなくていいから! 別に出して欲しいわけじゃないから! 引っ込めておいて!」

「これ種族は何なの?」

「ふっふっふ。新生バーガンディは「メカニチェスクギドラ」! アンデッドではないみたいだけど、生物でもない感じ! 通常の『治療』や『回復魔法』は効かないかわりに、ほとんどの状態異常も受けない……これは鎧獣騎とかと同じかな。あとカスダメ無効だって。これは鎧のおかげかな」

能力値的にはウルルに匹敵するほどだが、ブランには例のメッセージは来なかったという。さらにこの上があるのかどうか不明だが、災害生物として認定されるかどうかと戦闘力には因果関係はないのかもしれない。

「ブレスとかはやっぱりないのか。呼吸しないからかな」

「でも『大口径粒子砲』っていうのがあるよ。お口の中に砲門があるからあれかな? 何の粒子吐き出すんだろ」

ブランがバーガンディの口の中を覗き込む。

主君に向かって撃つはずがないとわかってはいても、銃口の前に無防備な顔を晒すのを見るのは少しひやりとする。

どれだけ鍛えても、人の身では撃たれてから銃弾を避けるのは難しい。ならばこそ、対銃器において真っ先に覚えさせられるのが、相手の目線と銃口の向きから撃たれる前に軌道を予測することだ。その軌道上には問答無用の死が待ち受けていると教わってきたレアにとって、ブランの無邪気な振る舞いは心臓に悪い。

「まさにゲロビームだね」

聞き慣れない声だなと思ったら教授だった。

上品な言い方ではないため注意したいが関わりたくない。聞こえなかったことにして目をそらす。

「……おお。レアちゃんとライラさんが全くおんなじ顔してる……」

「……顔が同じなのは生まれつきなんだけど」

総評すれば、バーガンディは防御力が大幅に向上し、加えて攻撃に特化したスキルを新たに得たといった感じだろうか。

転生時に祭壇が要求した鎧獣騎の残骸は相当な量だったが、これはサイズのせいだと思われる。

新生バーガンディの検証をしている間に転生実験をしていた、バンブの配下のホブゴブリンはそこまで大量の残骸は必要としていなかったようだ。

と言っても転生後のサイズから考えればかなりの量だったようだが。

具体的には、一般的な鎧獣騎一体分ほどの残骸でホブゴブリン一体の転生が可能で、しかし転生後のサイズは元のホブゴブリンとさほど変わらない。

「サイオーガか。こりゃゴブリン系ならどれでもいいみたいだな。元になった種族によって、追加で支払う経験値が変わるみたいだ」

さらにスケルトン系でも試してみたところ、こちらは一律「サイボーン」という種族になった。

「ダジャレか」

そうライラがつまらなさそうに言い。

「サイボーグもサイバネティック・オーガニズムの略だしね」

とレアが付け加えると、ブランやバンブ、教授がこちらを見てきた。

「あれ? 笑わないの?」

「なんで笑わなきゃいけないの」

意味がわからない。

その後しばらく時間をかけ、メカニチェスクギドラやサイオーガたちについて実験と検証を行なった。

その結果わかったのは、これらの種族は純粋なキャラクターとしての性質と鎧獣騎としての性質を合わせ持った魔物だということだ。

基本的には経験値を消費すれば能力値を成長させることが出来、スキルも取得する事が出来る。

しかし一部パーツを換装することで、後付けで特殊なスキルをセットする事も可能だ。この場合に追加出来るスキルは闘技大会でウェインたちが使っていたような鎧獣騎専用のスキルのみのようだ。パーツによって追加できるスキルの中に通常スキルは確認できなかった。

ただしこれは現時点ではそうだったというだけで、本当に存在しないのかはわからない。

ただもし存在するのだとしても、おそらく経験値を支払って普通に取得した方が早い。

パーツを製造するのにも相応のコストがかかるし、現在のマグナメルムの資本と技術力で見つからないのであれば普通に製造出来るものだとは思えないからだ。

一時的に南方大陸のウィキーヌス連邦からアンリ研究員を呼び出してまで検証した結果である。

「考えようによっちゃあ、こいつは意思を持ち成長する鎧獣騎って言ってもいいのか?」

「その代わり乗り込めないけどね」

「大型の種族でこれをやって、人が乗り込める空間をパーツとして組み込んでやれば、音声入力で動くロボットとして運用できないこともないんじゃないかね」

「ロボ! あいつをやっつけろ! みたいな感じ?」

「何だそのファジーな命令は。それで認識するんだったらもう「全部やっといて」でいいだろ」

「ロボ! 宿題全部やっといて!」

「いや世界守れよ」

もしかしたらこのアタッチメントで戦闘力が上下するという部分がひっかかり、バーガンディは災厄認定されなかったのかもしれない。

素材となる鎧獣騎は必要だが、手っ取り早く強くなれ、また経験値以外に金貨でも強化が可能ということで、バンブは満足してMPCにこの結果を持ち帰っていった。

融合の祭壇自体はポートリー領内にもあるとのことで、まずはその周辺の制圧から取り掛かるそうだ。

こうして各勢力が着々と戦力を充実させていき、黄金龍復活に備えていくのだった。