軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第544話 「一回戦初日終了」

「お疲れ様。二回戦進出おめでとう」

「ありがとうオクトー。なかなか面白かったよ」

「すっ、すご、あの、凄い凄かったです! なんて言うか、うまく言えないですけど!」

「ジャ姉凄いしか言ってないじゃん! えと、ええと、凄いだけじゃなくて、何かドキドキしたっていうか、その、ヤバかったです!」

インディゴの頭に戻ったレアに、ライラが祝いの言葉をくれた。

そして語彙力が失われたジャネットやマーガレットもレアの試合を讃えてくれている。

予選はインディゴの背中に陣取っていたレアたちだったが、本戦では頭部にレジャーシート代わりの毛皮を移していた。観客が増えたせいだ。

女子と男子で分けていた頃はよかったが、アビゴルが参加するのであれば彼は座席としては使えない。予選の時のような事故を再発させるわけにはいかないし、幸いインディゴにはまだ空間的余裕があった。

他にもカナルキアの人魚たちや、MPC、ハガレニクセンの構成員たちの一部も同乗する事になったため、今やインディゴは翼の先まで席が埋まっている状態である。スキルの『飛翔』で浮いているのでなければ、羽ばたきで半分以上は空に投げ出されているところだ。

そうした状況から、レアたちの席はだんだんと前の方においやられ、頭部に乗ることになったというわけだ。

ただ、頭部とそれ以外とで席が物理的に離れていたのはよかったかもしれない。

背後ではハガレニクセンたちがセプテムの名を讃えて大騒ぎしている。一部にはMPCの魔物も混じっているようだ。

席が近かったらどうなっていたかわからない。

モニターには次の試合の選手が映されていた。運営による前説が行なわれている。

どうやって調べたのか、出場選手に対するざっくりとした紹介をしているらしい。

自分の時は幻獣王との会話に夢中で聞いていなかったが、何を話されていたのだろう。ライラを見る限りでは特におかしな事は言われていないようだが。

「──あの彼、ウェインだっけ。出てたのか」

モニターに映る選手は見覚えのある人物だ。鎧獣騎の上に乗り、腕を組んでいる。

仲間と思われる他の2名はきちんと搭乗してスタンバイしているので、単に格好つけているだけだと思われる。誰に対する何のアピールなのか。

「ああ、見たことあるな。一緒にいるのは聖リーガン、だったかな。それにハウストと蔵灰汁と、他2人は……量産品のローブか」

聖リーガンと言えば西方大陸で『儀式魔法陣』を広めた第一人者だ。教授が手ずからレクチャーしたということだし、ライラもその時に会っていたようだ。

生身で鎧獣騎に随伴するにはかなりの実力が必要なはずだが、『儀式魔法陣』を使いこなせているのであればそれも難しくないということなのだろう。

「そのローブの2人だけど、顔が見えないからはっきりとは言えないけど、あれ、ヨーイチとサスケとかいう異邦人じゃないかな」

地底王国を吹き飛ばした時に見たような気がする。レアに矢を射てきた時だ。

以前にペアレ王都でライラが捕らえた時はローブなどと言う気の利いたものは着ていなかった。量産品のローブを見ただけではわからなくても仕方ない。

「対戦相手も全員異邦人かな。知らない連中だ」

一方の対戦相手は全員が生身であり、男女比も半々といったところ。リア充という単語が脳裏に浮かぶ。

「いやいやセプテムちゃん。あれ会ったことあるよ」

「え、うそ」

「女の子たちは知らないけどね。男の方はルート村にいた異邦人だ。ほら、ドラゴンの」

「ああ、あの」

ドラゴンがいるとかいう噂に釣られて遊びに行き、結局空振りだったので代わりにライラの配下のトゥルー・ドラゴンを置いてきた村だ。そういえば国家として立ち上げたとかどこかで見た。こんなイベントに参加する余裕が出来る程度にはうまく回しているらしい。

よく見てみれば試合のフィールドは麦畑だった。

ルート村は真のドラゴンが現れるまでは農村だったようだし、慣れた地形で戦いたいということだろう。

いや農夫が麦畑で暴れるのはどうかと思うが。

「まあでも、さすがにたぶん聖リーガンたちが勝つかな。見どころはなさそう」

「見どころあろうがなかろうが、たぶんこれの勝った方が次のわたしの相手になるし、一応見ておいた方がいいのかな……」

レアの次の試合であるなら、二回戦はレアとこの試合の勝者が戦うことになるのだろう。

トーナメント表は公表されていないので正確なところは不明だが、あえて試合の順番をランダムにする意味はないように思える。

そうしてぼうっと眺めていたが、決着まではしばらくの時間がかかった。

少なくともレアの試合よりは長かっただろう。

ライラが言った通り、勝ったのはウェインたちのチームだった。

ルート村の村人たちも、連携も良く完成度の高いチームだったが、さすがに最新バージョンの暴力には叶わなかったようだ。

アップデート前の実力、と考えればかなりいい線いっていたのではないだろうか。時間がかかったのはそれだけ実力が近かったからだと言える。山でしっかり鍛えているらしい。

ルート村はプロスペレ遺跡からもそう遠くないので、これが終わったらぜひそちらに行ってアップデートしてもらいたい。

その後も順当に試合が行われ、いくつかは興味深い内容のものもあった。

「やった! バーガンディが勝った!」

「相手はオークキングか。相手の方が格上のはずだけど、これは相性の差かな」

バーガンディはパッシブで周りにデバフをばらまいている。

そこには実際の実力では測れないアドバンテージがある。何せきちんとした対策が出来ていなければ、多少格上という程度では万全の状態で戦う事ができないからだ。

デバフに抵抗できるほどの実力差があれば関係ないが、オークキングは見た目の通り、攻撃も防御も物理に偏っていたようだ。

地上の観客席では裸の豚男たちが項垂れていた。自分たちのボスが負けてしまったのが残念だといった様子に見える。

そういう社会性とは無縁の魔物だと勝手に考えていたが、意外とそうでもないのかもしれない。

「でも魚人たちがグループで参加するとは驚いたな。ひとり人間混じってたよね。あれが異邦人かな」

バーガンディの次の試合は、魚人たちと女性ばかりのプレイヤーチームとの対戦だった。

魚人の方は【フィッシャーマンズ】、女性ばかりの方は【姫とエルフと下僕たち】というチーム名だったか。

危なげなく姫とエルフたちが勝ったが、そもそも魚人が群れているのは少し驚いた。

そしてそのグループ作成の手引きをしたのだろう異邦人には見覚えがあった。

「あの異邦人だけ、何か妙に防御力高かったよね。何だったんだろう」

「たぶん装備かな。あのベストの光沢、見覚えがある。あれわたしの糸だ」

「はあ!? なんで!?」

ライラに耳元で叫ばれた。

「どっどど、どういうことですかセプテム様!」

近くにいたジャネットやマーガレットも騒いでいる。

「どういうことって言われても。あの異邦人にはちょっと世話になった事があって。そのお礼に糸をあげたんだよ。たぶんお金では買えない素材だし、お礼にちょうどいいかなって」

「ちょうどよくありませんよ! 釣り合ってません! どんなお世話を受けたか知りませんけど、そん──」

話の途中でジャネットが消えた。マーガレットもいない。アリソンやエリザベスもだ。

「ああ、次は彼女たちの試合か」

おかげで話が終わった。いいタイミングだった。

「いや話終わってないからね。どういうことなのかお姉ちゃんに話しなさい」

「──負けました」

「ミスが多かったね。どうしたの。他に気を取られることでもあった?」

「いや多分セプテムちゃんのせいでは」

ジャネットたちは4人に加え、各人の『使役』しているフラム・グリフォンも合わせた8人のフルパーティでの参戦だったが、本戦では一回戦で敗退してしまった。

「……しかしあっちは順調に仕上がってるね。ふふふ。いい感じだ」

そのジャネットたちを下したのは、ライラの配下、ユスティース率いるオーラル騎士団である。

いや、今やオーラル鎧獣騎士団と言うべきか。

全員が最新式の鎧獣騎を与えられた、おそらく現段階では世界屈指の鎧獣騎部隊だ。

とくにチームリーダーであるユスティースの騎体が目を引く。

他よりひと回りもふた回りも大きいその騎体は、その大きさでありながら敏捷性も損なわれておらず、さらにいくつものスキルを発動させていた。下手をしたらあれ一騎でも準災厄級に届きそうなほどである。作るのにいくらかかっているのか。やりすぎにもほどがある。なぜそのおもちゃをレアに渡さないのか。

ともかく、仮にジャネットたちが万全であったとしても、現状あれに勝つのは難しい。なので別にレアのせいで負けたわけではない。ミスが多かったのは事実だが。

その次の試合はユーベルが勝ち、さらにその次の試合ではインベルが負けた。

ユーベルVSアビゴルの怪獣大決戦は実に見ごたえがあった。

勝ったのはユーベルだが、これは災厄級ドラゴンとして過ごした年季の違いによるものだろう。アビゴルがもう少し慣れていれば勝負の行方はわからなかったかもしれない。

アビゴルにとっては残念だったが、これで次から男子席も復活できる。

インベルを下したのは南方大陸にいた女悪魔、シトリーだった。

以前にちらりと会った時はあまり強いという印象は持たなかったが、そうは言っても大悪魔、腐っても災厄級である。準災厄クラスのオルトロスであるインベルでは少し届かなかったようだ。後でみんなで修行するとフレンドチャットで言っていた。

みんなというのはヒエムスやネーブラの事だろう。

日程的には明日になるだろうが、選手に伝えられている出番のタイミングから考えると、ヒエムスの一回戦の相手はブラン、ネーブラの相手はメリサンドだ。結果は見えている。

もちろん皆ベストを尽くすだろうが、それはそれとして修業する事になるのは確実というわけだ。

「次は初日最後の試合か」

「──ああ。行ってくるぜ」

「──はあ。行ってきます……」

対照的な表情を見せ、バンブとジョー・ハガレニクスたちが消えていった。

本戦初日の全てのプログラムが終わり、残りは翌日になった。

前日同様インディゴに乗ったまま遠くの転移装置を目指し、元の世界に帰還する。

元の世界に戻ったら、そのままもう一度全員インディゴの背に乗せ、空中庭園アウラケルサスを目指す。

アウラケルサスにある珊瑚城を宿泊用施設として貸し出す事にしてあるのだ。

今一緒にいるプレイヤーたちは、早い段階からマグナメルムへの協力を申し出てくれた者たちだ。

このくらいのサービスはしてもよかろうという配慮だった。

珊瑚城は一階、二階部分こそ水没してしまっているが、三階以上は水面から出ている。ヒルス王城からメイドレヴナントを連れて来て、人類が生活できるよう整備させてあった。

二階以下は水中に生きる者しか過ごせない空間になっているが、観客の中にはカナルキアの幹部も何名かいる。メリサンドも水中エリアに泊まるらしい。こちらもあらかじめカナルキアからメロウを呼んであり、宿泊に耐えるよう整備してある。

レアたちは別の場所でログアウトするが、ジャネットたちはここに泊まる事になる。

チームで大会に参加した事ですでにプレイヤーであることは知られている。いつの間にか家檻たちと仲良くなっているようだ。他にもハガレニクセンの女性陣やらと夜通し恋バナをするとか言っていた。

レアも興味があったので混ざりたかったが、リスクを考えて自重した。