軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第315話 「友人は選んだほうが」

ゾルレンを襲った未曽有の災害は、ユスティースやポートリー騎士団、プレイヤーズクラン「シュピールゲフェルテ」、そしてラ・ピュセル・ドウェルスの活躍によって退けられた。

誰一人欠けたとしても得ることが出来なかっただろう勝利だ。

それはすでに死亡してしまっている騎士たちもそうだ。彼らの力がなければ、みなが集結するまで持ち堪える事は出来なかった。

この街を、今度こそ守りきることができた。

ユスティースは感慨を込めて街を見渡す。

ほんの少し巨獣がすっ転んで崩れてしまった部分もあるが、元々前日の襲撃で瓦礫になっていた場所である。この死体さえどけてしまえば問題ないだろう。

それからほどなくして、死亡していたロイクや騎士たちも戻ってきた。

もちろんアリーナもだ。

ロイクたちがアリーナの姿は見ていないと言った時には血の気が引いたが、アリーナは彼らと違い街なかの宿屋がリスポーン地点であるため、彼らから少し遅れて私服で現れた。どうやらボロボロになった鎧を着替えていたらしい。

無駄に心配させた事に文句の一つも言いたいところだったが、アリーナとて一応は女性である。ロイクたちのようにガサツな男騎士とは違う。身だしなみは重要だし、それはユスティースも理解できる。

「──なんか、人増えてるね。とりあえず無事に倒せたみたいでなにより。

でも面倒なのってこの後なんだよねー……」

「復活するなり何よアリーナさん。そりゃ、まだ復興どころか瓦礫の撤去も終わってないけど」

「まあそれも面倒なんだけど、後処理っていうか。そもそもこの魔物がどうして突然現れたのかとか、本当に遺跡から現れたのかとかね」

アリーナが言わんとしていることはわかった。

それは確かに重要だ。

今回はたまたま、本当に運良く撃退する事ができたが、この街にいつも騎士がいるとは限らないし、また同じようなことが起こらないとも限らない。

次なる惨劇を未然に防ぐためには、確かにそれらの情報の精査は必要だ。

つまりは再発防止とか、そういうものに向けた対策なりなんなりを考える必要があるということである。

「しかし騎士──ナ殿、我々第三騎士団は何も嘘は言っていないぞ。この魔物は確かに遺跡で遭遇し、そしてこの街にやってきたのだ。突然現れた理由まではわからんが、遺跡では獅子型のモンスターと戦って──」

「ちょっと今私の名前ゴニョゴニョごまかしたでしょ。ぶっ飛ばすよ。

別にあなたたちの報告を疑ってるってわけじゃなくて、多角的に情報をまとめるためにも、客観的な視点とか、追加調査は必要なんじゃないかってこと。

言うまでもないことだけど、騎士ってのは普通の人に比べて強い力や権力を持ってる。だから道に外れた事をするわけにはいかないし、間違えるわけにもいかないの。

騎士の不手際はそのまま人々の安全を脅かす事に繋がりかねないし、何より主君の名を汚すことになるからね」

人々の安全よりも主君の名声の方が上位らしいあたり、現実の世界との価値観の違いを感じるが、アリーナの言うことはもっともではある。

さすがは先輩だ。

「幸い、今ここには公平性という点においては誰よりも確かな、ウェルスの聖女様もいらっしゃるわ。もう一度色々と調べ直して、あの方にこの魔物のことや今回の事件についての公的な見解を出してもらえば、国や主君に報告する内容、そして公式発表する内容としてはこれ以上ないものが出来るんじゃない?」

「でもアリーナさん、聖女様は昨日のあの魔物の集団を追ってみえたってことだから、あまり長いことこの街に縛り付けるわけには……」

「いいえ、構いませんよ。あの魔物たちの足取りはこの街の襲撃を最後に途絶えておりますし、どちらにしても続報を待つ必要があります。

もっとも、ウェルスやオーラルと違ってここペアレでは聖教会の影響力はあまり大きくありませんから、情報は期待できませんが」

これは大変ありがたい申し出だ。

とはいえ何らかの情報さえ入ればすぐにでも発つ可能性があるということだし、それはユスティースとアリーナにしても同様である。今はライリエネの計らいでこの街に待機していられるだけで、何らかの指示が出ればそれに従わなければならない。

「ありがとうございます! よし、そうと決まればさっそく調べるわよ! ええと、まずはこの死体からかな?」

「ま、まて。少し休憩を」

「話聞いてたでしょ。時間ないんだからほら! 疲れてるなら疲労回復ポーションあげるから」

そういえば、状況からするとおそらくロイクたちは昨夜は眠っていない。

寝てない自慢はなんと返していいかわからないのでユスティースは苦手だ。とりあえず体調が戻れば文句はあるまい。

インベントリからポーションを大量に出してロイクに押し付けた。

「ひ、疲労回復ポーションは継続的な健康に対する安全性がまだ」

「死んでも死なない騎士が健康なんて気にしてどうすんの? はよ飲め!」

ユスティースも1本飲んでおく。アリーナにも必要だろうか。

そう思ってアリーナを見ると、彼女はこちらに背を向けていた。

「あーそうだったー状況が終了した事を領主のおっさんに報告しなきゃー。

私は住民たちの方に行ってくるね」

「あ、それもあった! お願いアリーナさん。避難場所とかわかるの?」

「大丈夫。領主に聞いておいた。じゃあ行ってくるね。鎧もないし、走ればすぐに追いつくかな」

「あ、その前にポーショ」

聞こえなかったのか、アリーナはユスティースも目を見張るほどのスピードで走り去っていった。

なるほどあの脚力が敵を翻弄する機動力の要なのだろう。

「よし、じゃあアリーナさんがここの領主を連れてくる前にせめて死体だけでも調べられる状態にしておきましょう! まずは頭の部分の瓦礫の撤去からかな」

「……んぐ。これ本当に大丈夫なんだよな。妙な副作用とかはないよな……?

ところで、騎士ユスティース。そちらの者たちはもしかして貴女の友人か? あまりその、交友関係に口出しをするような立場ではないのだが、友人は選んだほうがいいのではないか? 先ほどの騎士アリ、アリーナ?の話ではないが、あまり妙な輩と付き合いがあるようだと、人々の目にだな」

「いやあれはただの顔見知りっていうかあの通り目立つから知ってるってだけで別に友人とかではまったくないから。

てか、あなた達に騎士どうこうとか言われるとは心外にもほどがあるわよ。それ国に帰ったら団長さんに言ってあげたら?」

「──もちろん、そのつもりだ」

「……これも全裸って言うのかな」

「そんなこと知るか」

騎士団に加え、ウェインたちのプレイヤーズクランも総出で瓦礫の撤去を行ない、ようやく巨獣の全貌を再び日の下に曝け出す事が出来た。

小さな瓦礫はプレイヤーたちのインベントリを利用すれば比較的容易にどかすことができたが、大きなものはそうもいかない。

元々崩れた家などの残骸であるため、壁1枚分にもなるような大きさのものもざらだった。

露わになったヒト型の上半身はもはや何も身につけてはいない。

炎系の範囲魔法の直撃を何度も受けることで全て焼け落ちてしまったためだ。

巨獣部分は当然服など着ていないので、今はまったく何も装備していない状態だと言える。

作業のキリがいいのでそうして一息ついていたところに、アリーナが領主を連れて戻ってきた。

「──おお、片付いてる。もうちょっと早く戻ってこれれば手伝えたんだけど残念だわ」

「いや、だから私は急がなくてもよいのかと」

彼女にツッコミを入れたのは領主その人だ。

アリーナのこういう、誰とでも仲良くなれる性質というか、多少の無礼を働いても許してくれそうな相手を見極めるバランス感覚というのは率直に言って感心する。

時折そのしわ寄せがユスティースに回ってくる事もあるが、全体で言えばプラスの効果の方が大きいだろう。

「──ゾルレン領主様とお見受けいたします。

私はアマーリエ。ウェルス聖教会の者です。この度はまことにご愁傷様でした。まずはお悔やみ申し上げます」

「おあ、おお、はい。これはどうもご丁寧に。

あー、このような小汚い服装で申し訳ない。噂の聖女様に会う、ええと、拝謁を賜る?ような格好ではないとは思うところですが、なにぶん着替える時間もなかったものでして……。

ええー、私はチボーです。ゾルレンの領主をやっとります。あ、ウェルスの人にはピンと来ないかもしれませんが、領主と言っても貴族とかじゃなくてですね」

「存じております。

チボー様にはお詫びを申し上げねばなりません。

昨日この街を襲った魔物の軍勢というのは、ウェルスの地からこちらへ逃げ延びてきた者たちなのです。

ウェルス王都が襲われた際、私たちが仕留めきれてさえいればこのような被害に遭う事もなかったはずなのですが、私たちの力不足でこのような事になってしまいまことに申し訳ありませんでした」

「そんな! 頭を上げてください聖女様!

道すがらこちらのオーラルの騎士さんに聞きましたが、なんでもこの大型の魔物の討伐にも力を貸して下さったとか!

魔物の行動など私ら人間にはどうすることもできませんし、聖女様には感謝こそすれ、恨みに思う事などありません!」

領主はオーラルの騎士、つまりアリーナから話を聞いたと言っているが、聖女が巨獣討伐に貢献した事をアリーナは知らないはずだ。その時アリーナは死亡していてあの場にはいなかった。

リスポーンして戻ってきたところに目立つ聖女がいたことからそう類推して話しておいてくれたということだろうか。

他国とは言え領主である人物に憶測を話して聞かせるというのはちょっとどうかと思わないでもないが、せっかく助けてくれた聖女が街の人たちに恨まれてしまうというのも心苦しい。説明の時間も省けたしこれはこれでファインプレーと言える。

「聖女様やウェルス聖教会の方々へのお礼については、また後日改めてということで……。ああ、もちろんオーラル王国やあちらの異邦人の方々にもお礼はいたします。皆さんがいなければ、我々は帰る家を失っていたでしょうから」

ユスティース個人にと言われていたら断っていたかもしれないが、国に対して礼をすると言われては勝手な事は言えない。

シュピーゲル何とかというプレイヤーたちも思わぬ臨時収入に湧いているようだ。

「──して、この巨大な死体が街を襲った魔物ですか。なるほど、死体を見るだけでもその恐ろしさが伝わってくるようですな。

おお、この魔物には人の上半身がついて──え?」

ヒト型上半身の顔を見た領主の顔が強張った。

何度も自分の目を擦り、恐る恐る巨獣の顔を服の袖で拭うなどして、その姿かたちを確かめている。

「……もしかして、お知り合いとか?」

巨獣の上にくっついていた上半身は何度かペアレを自分の国だというような事を言っていた。

もしペアレ出身の獣人が何らかの理由で魔物になってしまったというなら、領主が知り合いでもおかしくはない。

実に悲劇的な展開だが、街を守るためには仕方がなかった事だ。

「い、いや……知り合いというか、ばかな、なぜこの方が……」

よほど動揺しているのか、領主は上の空だ。

「チボー様? 落ち着いてください。私たちもついております。失礼しますね」

聖女が領主の背をさする。

しばらくそうしているうちに、ようやく事態を飲み込む覚悟が出来たのか、領主は深呼吸をしてからこちらに向き直った。

「──わ、私自身は、それほど何度もお会いした事があるわけではないが、最近はたびたびこの街にもお見えになっていたと聞いているし、間違いないだろう。

このお方は、我がペアレ王国の第1王子、オーギュスト殿下です……」

聞いていた全員が息を呑んだ。

えらそうな口ぶりからそこらの一般人ではないだろうとは思ってはいたが、まさか王族だったとは。

支離滅裂な会話内容から、自分自身をペアレの重要人物だと思い込んでいるだけの人間という可能性もあったというか、ユスティースとしてはそうだったらいいなと思っていたが、そういうわけにもいかなかったようだ。

布で目元が隠された聖女の表情はわからないが、ポートリー騎士団も、そしてシュピーゲル団も全員が青ざめている。

たとえどんな理由があったにしろ、一国の王族をその手にかけてしまったとなれば大問題だ。

特にユスティースやアリーナ、ロイクたちの立場は非常にまずい。

国際問題どころの話ではない。ペアレ王国の出方次第では戦争も避けられないかもしれない。

ふとインベントリの中の、ザグレウスの心臓という蘇生アイテムの事を思い出した。

ボスモンスターを蘇生させるなど普通に考えれば有り得ない事だが、死亡してしまってはまずい相手だというなら仕方がない。

これも非常に貴重なアイテムだが、ユスティースとしては領主ライリエネのプレイヤー救済活動のおこぼれとして手に出来たようなものだ。

ここで使う運命のイベントアイテムだったと思えば悔いもない。

しかし取り出そうとしたユスティースの肩をウェインが掴んで止めた。

そして自分のインベントリからザグレウスの心臓を取り出し、掲げた。

「──我々は蘇生アイテムを持っています。このアイテムを使えばおそらく蘇生させる事が可能だと思います。

こちらの魔物、こちらの方を倒してしまった責任もありますし、このアイテムを提供すること自体は構いませんが、王子殿下と同じ顔とはいえ一度は街を狙ってやってきた相手を蘇生するという事の是非もあります。

領主さま、どういたしましょう」

「蘇生!? そんなものが……。いやしかし、そう言われても……。だが殿下の……」

領主は驚くやら悩むやら、非常に複雑な表情で目を白黒させてしまった。

プレイヤーの立場としてはああ言うしかない。

というか、自分の財産であるアイテムを供出する時点で損しかない提案だし、これ以上ないほど誠実だとも言える。

しかし言い方が少し突き放しているというか、端的に言うと冷たく思える。領主にしてもそんな重大な決断をいきなり迫られてもどうして良いか分からないだろうし、もう少しやんわりとはできないのか。

迷わずアイテムを差し出した点は好感度高いが、その先の相手の気持ちまでは思いやれないあたりがやはり少し、無いな、という感じがする。

「──あのアイテムはさ、まあ前のイベントの報酬なわけだが、俺たちはあくまでクランとして参加したもんだ。だからあの報酬も、一応全員が手にはしたが、クランの財産として計上しとこうって話になってる。

今回提供したのもクランとして相談した結果だし、たまたまだが別のとこでも1個使おうって結論になってるしな。

騎士っつってもあんたもプレイヤーなんだし、個人のふところから出すってのも痛いだろ。ここは俺たちが出しとくよって話さ」

ギノレガメッシュが耳打ちしてきた。

どうやらウェイン個人の持ち物として出したわけではないらしい。

だったら好感度も返してもらう。

「──そのアイテムというのは、大天使を打ち倒した際に手に入ったものと同じでしょうか。

だとしたら、亡くなってから時間が経ってしまうと効果を得られない可能性があります」

聖女アマーリエの助言を受け、もはや猶予はないと見てか、周囲のプレイヤーたちに目配せをして、ウェインは最後に領主を見た。

領主は首を縦にも横にも振らなかったが、それを少なくとも否定ではないと判断したのか、ウェインは手に持ったザグレウスの心臓を巨獣、いや王子の遺体に押し付けた。

「……何も起きないな」

聖女が何のアクションも起こさないところからすると、使い方として間違っているわけではないはずだ。

しかししばらく様子を見ていた聖女は首を横に振った。

「おそらく、時間が経ち過ぎてしまっているせいでしょう……。ご愁傷様ですが、王子殿下の復活はもう……」

復活時にLPなどがどのくらい戻ることになるのかは不明にしろ、もし戦闘開始時に全てが戻されてしまったとしたら大変な事になる。

最初からフルメンバーとも言えるこの状況であれば一度目よりはうまく立ち回れるだろうが、すぐ側には守るべき領主もいる。

それに領主たちに続いてちらほらと他の住民たちも戻ってきているらしく、興味深げにこちらを見ている人々の姿もある。

王子の命が戻らない事については複雑だろうが、それでもこれ以上状況が動かない事についてはほっとしたらしく、領主の顔色が安定してきた。

「そ、蘇生アイテムとかいうものが使用できなかった事は残念だが……。

とにかく、どうであれ皆さんの活躍でこの街が救われたのは確かだ。

なぜ殿下がこのようなことになっているかはわからんが、陛下も殿下のこのお姿をご覧になれば、尋常ならざる事態であったことは納得……まあ、その、何とかご理解いただいて……」

「──旦那様!」

1人の獣人が駆けてきた。

「なんだ騒々しい、今ちょっと重大な問題が」

「も、申し訳ありません! ですがこちらも重大事でして、ハトが……」

「ハト? ああ、しまった、ハトを避難させておくのを忘れていたな……」

息を整えながら、駆けてきた獣人が領主に何かを手渡した。

小さな筒か何かのようだ。

オーラルで使っている物と同じなら、あれはおそらく伝書鳩にくくりつける手紙だろう。

領主は鳩を避難させるのを忘れたというが、その前にその鳩を使って近隣の街や王都などに助けを求めるのが先ではないだろうか。オーラルであれば普通はそうする。

忘れていたくらいだし、獣人というのは普段は伝書鳩をあまり利用しない文化なのかもしれない。

例えば見つけた国民がハトを食べてしまう事故が多発するとか。

「避難? あの、旦那様が王都にハトを飛ばしたのではないのですか?」

「王都? いや、さっきは文なんて書いている余裕は……」

「と、とにかくそれをお読みください!」

領主は筒から丸められた布を取り出し、広げて読んだ。

見ていて分かるほどに領主の顔が険しくなっていく。

王子の顔を確認した時と同じかそれ以上だ。

「……なんだ、これは。どういうことだ……」

気にはなるが、おいそれと聞くわけにもいかない。

雰囲気を察してか、聖女が領主に声をかける。

「あの、よろしいでしょうか。そのハトというのはどちらからの?

もし今回の件に関わるような内容でしたら、差し支えなければ文の内容をお教えいただけませんか?」

聖女もウェルスの所属ではあるのだが、明らかに国家の首輪付きの公務員であるユスティースやロイクが聞くよりはカドが立たないだろう。

「……う、む……。それが、その……。

ハトは王都からの返信を携えてきた、ということらしく……。陛下のサインもあるし、これは陛下からの書だ。

本来であれば、その内容を他国の方々に話すのはまずい……。まずいのだが、しかし皆さんに無関係な話ではないし、正直、どうしていいか……」

しばらく領主は逡巡していたが、やがて意を決して話し始めた。

「……しかし何もしないわけにも、何も言わないわけにもいかんか。

この街が襲われた、という事は陛下はご存知だ。しかしどういうわけか、襲ってきたのはポートリー騎士団であるとお考えらしい。第1王子殿下がここにいる事もご存知で、文の内容は……。

その殿下と協力してポートリー騎士団を取り押さえろ、と……」

意味が分からない。

事実とあべこべだ。

この街を襲ったのは、領主の目が間違っていないのなら第1王子の方だし、守ったのはポートリー騎士団だ。

「返信という事は、チボー様はペアレ国王にすでにお手紙を?」

「い、いや! そんな暇はなかったし、私は何もしていない! いったい何がどうなっているんだ……」

領主は頭を抱えた。

頭を抱えたいのはユスティースも同じだし、ロイクも茫然としている。

「……それに、陛下ご自身もすぐに王都を発ち、ゾルレンに向かうとある。

そんな認識である陛下が、もしもこれをご覧になったとしたらどうなるか……」

事態は混迷を極めている。

解決しようにも、どこから手をつけていいのかさえわからない。

アリーナに目配せをすると、彼女はひとつ頷いて宿に戻っていった。

困った時はライリエネに丸投げするしかない。

いかに有能であり、尊敬に値する領主だとしても、出来る事と出来ない事がある。

紆余曲折を経てペアレ王国が内外に発した公式声明は、否応なくその現実をユスティースたちに突き付けるのだった。