作品タイトル不明
445.様々なモンスター
入り口を真っ直ぐいったところ広い空洞に出た。そこから四方に道が延びている。
『迷路よりのマップなのかな』
『まあ、すぐに地図ができあがるから迷路も問題ないがな』
ソーダと八海山がそれぞれの道を覗いている。
『リーダ-、どの道行きたい?』
『俺は断然左の道!』
『よし、じゃあそっちはモンスター多いだろうから右に行ってみよう』
『えええええ』
不満の声を上げながら、ダインが渋々右の道へ進み始める。
妖怪アンテナではなく、モンスターアンテナをお持ちらしい。
『リーダーが突っ込みたがる方は大概モンスターハウス形成されてるから避けるが吉』
猫じゃらしの言葉にシャーツさんがうんうんと頷いていた。
『直感型なのじゃ』
『初めてのマップで重宝されるタイプね~』
それでもモンスターがゼロなわけではない。狼のようなタイプもいたし、古式ゆかしいゴブリンタイプもいた。
だが、ここで初めてのタイプに遭遇する。
『なんか、【気配察知】に変なのが引っかかってるんだけど』
『変なの?』
『範囲が広いけど色が薄いみたいな?』
少し先へ行った脇道なのだが、どうもぼんやりとしているのだ。
『ホントだッ。……ガス系かなッ』
『げーっ、面倒だ。リーダー、ステイ! 突撃して一人で転ぶな』
『ガス系?』
『物理攻撃がまったく効かない、気体のモンスターだよ』
猫じゃらしが詳しく説明してくれたところによると、ガス系のモンスターはとても厄介らしい。物理は無理なので魔法になるが、毒だったり炎で爆発したりするという。
『広いところならモンスターとしての本質を保てなくなるほどの風魔法で蹴散らせばいいんだが、ここは狭い通路だからなあ』
『ある意味最強でござるね……爆破して道が崩れてとかありそうでござる。ということで一番手は拙者が』
そう言って懐から触媒を取り出す。
『セツナ殿、【水付与】を』
「【水付与】」
預かった粉をふっと半蔵門線の小太刀に吹きかけると、刃の表面に水滴が浮かんだ。
一人先へ進むと刀を振るう。
「水遁の術、【霧雨】」
道に細かな雨が溢れる。
『おーっ!? 気配なくなった!!』
『【鑑定】しそびれたから何系かわからないまま!!』
『本来後方に展開して姿をくらませるために使う術でござるね。気体が水に吸収されたでござる。水溶性でビンゴでござる』
『となると、水魔法の【アシッドレイン】とかでも代用できるか』
『それやると進めなくなるけどな』
半蔵門線の進んだあたりまで来ると、【鑑定】が働く。
地面に溜まった水が、【ごくごく薄い亜硫酸】になっていた。
『ガスの種類が硫黄系ってことかな』
『【ウォーターボール】大量にぶつける方がいいかもしれないのじゃ』
『【気配察知】必須だな。ガスは気づいたら突っ込んでいてダメージを受けそうだ』
遁術がない場合も試しておきたいと、【ウォーターボール】で対応してみたが、気体なので通り抜けてしまう。やはり範囲攻撃の方がいいという話になった。【ウォーターボール】が貫通するたびに気体の範囲は狭まるので水溶性ではあるようだし、弱体化はできていた。
そして移動すること三十分。
『あ、【何かありそうな壁】がある』
【鑑定】よ、それはどうなのか。
『よっしゃー! 掘るぞぉー!!』
基本的にダインの行きたいのと逆の方向へ適当に移動してきていた。もしかしたらモンスターがたくさんいる方がいい鉱石が採れるかもしれないが、少しゆっくり採掘したかったので選んだ道だ。
行き止まりでもない通路の途中だが、みんながツルハシを持ち出す。
『【気配察知】だけはよろしく』
突然襲いかかられて武器がツルハシはよろしくないね。
絵面はとても面白いが。
採掘の熟練度はまったく上がっていない。赤や緑水晶を掘っていたくらいだ。
『セツナはいきなりマジックストーンゴーレムに行ったからな。普通はその前があるんだよ。赤水晶ダンジョンの下層に行くとか』
『ストーンゴーレム狩りは連れて行ってもらったことがありますが、マジックストーンはまだ経験していませんね』
とはシャーツ。
『ストーンゴーレムは定期的にイベント起こしてクラーケンの目玉採りしてるもんな~』
『リーダーがいつまで経っても命中率上がらないからなかなか目玉が手に入らん』
クラーケンの目玉はレアドロップらしい。
『あ、イカいるなら格安で買ってよ、案山子君』
『いいよッ! セツナっちが捕ってきてからご無沙汰だしッ! あとで猫っちの都合のよいときにッ』
『リターンにバター醤油焼きが欲しいな』
『俺! イカめし食いたい!』
『大根との煮物が食べたいです』
『ロジックも料理人抱えろよ~』
『うちに入りたいヤツみんな腕力系だからなあ』
みんな物理攻撃しにいくそうだ。
『ヒーラーも募集してるけどすぐ辞めていくんだよー』
『それは、全部、リーダーのせいだからなっ!!』
とりあえず突っ込む系男子、ダイン。
『まあ、それでレア引いてくるからすごいんですけどね、リーダーは』
『そうやってぇぇお前ら全員で甘やかすからっ!! うちのエンゲル係数やべえんだよ!』
回復をどうしてもポーションで賄うしかなくなるそうだ。
ロジックの回復はなんと、シャーツさんらしい。
『タンクと回復でパラディンめざしてます』
『聖騎士だね! そういったお誘いないの?』
このゲーム、どこにどんな道があるのか本当にわからない。ある日突然脇道へ入っていてもおかしくない。
『聖騎士団……ここだけの話、一度だけ、イェーメールで遭遇しました』
『はっ!? マジ!?』
『聞いてねえぇぇ!!』
『イェーメール……』
『やだあ、ヴァージルのところ……』
やっぱりそういった道があるんだね。
『色々と怖いので、もう少し鍛錬を積んで自信が持てたらと、保留にしているところです。聖騎士団のスキルはとてもとても興味があるんですが』
『行ってこい、シャーツ! あのでっかい盾とか、全体回復とか、どう考えてもうちのクランに必要なスキルだろっ!!』
猫じゃらしに杖でガンガン叩かれるシャーツに、八海山が回復をかける。
『だって怖いじゃないですか! 親衛隊とか親衛隊が!!』
『いや、別にそこまで怖くないですけど』
『それは、セツナさんが親衛隊から保護すべき対象として見られているからですよ。セツナさん以外が下手にヴァージルに近寄るのは危険です』
ヴァージルが特級呪物になっている。
『そうじゃなかったら情報を寄越せと詰め寄られる未来しか見えないです。他の都市ならホイホイ行ったんですけどね』
まあ、ヴァージルが時々見せてくれるスキルはとても羨ましい。守る系がすごくいいよなあと思う。
『それに、俺が聖騎士団に入ったらクランに行く頻度減りますけど、そのときリーダーの防御と回復誰が担当するんですか?』
『おおおお、お前が聖騎士になってスキル覚えてくるってんなら、俺だって聖職者に一度転向して回復系軒並み覚えてきてやらあ!!』
売り言葉に買い言葉。のちに、プレイヤーに聖騎士が誕生する。