作品タイトル不明
443.クエストクリア
MPがないのでそこまで何度も出せないが、俺の【濁流】で敵兵を押し戻しつつ、後援を待った。やっぱり数って大切ですよ。多勢に無勢って言うしね。
『にゃ~! 屋敷に侵入者っ! 多少の支援求む』
猫じゃらしの叫びに応答がいくつか。
ジェローム兄ちゃんいるからそれはまずい!
『ヴァージルにそっち行ってもらったら?』
『そうするわ!!』
一緒にいたピロリが返事をしたからあちらは大丈夫だろう。ピロリも一緒に行くだろうし。
てことはこっちは来訪者と数名の聖騎士団であたらないといけない。
アスター家の騎士は基本前線に行っていた。たぶん馬で駆けてるから追いつくのに少々時間がかかる。自主的にポータルを使用することはないようだった。
ヴァージルが慣れすぎ。
「【針雨】」
フレンドリーファイアがないなら広範囲水攻撃。火は門の近くなのでためらってしまう。地味な継続ダメージを食らわせるのだ。
鎧を着ている者もいたが、周囲に隠れて潜んでいたようで軽装が多かった。
みんな思い思いのスキルを出して敵を始末していく。
《クエストクリア! バスタビア子爵を捕らえました。エンディングC》
戦っていた兵士がふいっと消えて、残った来訪者と騎士たちが雄叫びをあげる。
「お疲れ様でござる~」
半蔵門線が妖刀をしまって俺のそばに駆け寄ってきた。
「お屋敷に行くでござるよ。ヴァージル殿が捕まえたのでござろう」
「うん」
捕らえたって言ってた。始末はしなかったんだなあ。
戦闘中は姿が消えていた門兵さんが、周囲の来訪者に語りかけている。
「ありがとう。イェーメールを救ってくれて感謝しかない。後日アスター家当主から礼があると思う。また冒険者ギルドを通して連絡をするよ」
つまり、解散ってことだね。
俺と半蔵門線は走って屋敷へ向かった。
バスタビア子爵は私兵と雇った傭兵に正面を任せ、少数の側近とともにこっそり屋敷に侵入してきたらしい。
さすがに兵士を残していたし、猫じゃらしも冒険者だ。迎え撃とうとしたら、トラヴィスが捕まっていた。
「兄上……ひどい」
トラヴィスがソファでめそめそしている。
「お前が、『俺のことは構わず、家門を優先させてくれ』というから、攻撃に転じたのだが」
「そこは!! 可愛い弟を見捨てることなんてできない! でしょう!?」
かわ……いい?
みんなが小首を傾げる。
容赦なく攻撃に転じようとしたところへヴァージルが到着し、無双したそう。
「ちょっと、かっこつけたかっただけなのに! 建前ってあるだろう!?」
「まあ、迷うことなくトラヴィスさんを切り捨てたからバスタビア子爵の方が戸惑ってて隙が生まれたので、ね?」
とは猫じゃらし。
面白い寸劇を間近で見られて楽しかったとの感想です。
「魔法使い殿が全力で杖で殴りにいったので相手が戸惑っていた、が正解だな……」
「なぐる……の?」
俺が猫耳猫じゃらしをチラリと見ると、ウィンクしてサムズアップ。
『筋力マシマシだぜっ!』
『猫じゃらし、殴りマジシャンな。知力は装備で補ってる系』
『知の泉、とても助かりました。今三百冊突破したとこ。プラス三十ウマー!」
『棒術と思えば、でござろうか』
まあ、職業あってないようなものだからなあ。多少の装備制限があるけど、どちらかというとステータス基準だから。
それにしてもトラヴィス、お前ってやつはどこまでも期待を裏切らない。
その後ジェロームから丁寧なお礼の言葉をいただき、今日のところはこれで解散となった。後日改めてという話だ。
そこで再びアナウンスがあり、イェーメールの住民好感度がプラス二十されるし、店頭販売価格が五パーセント引きになるという。これは参加した全員に通知がきたようだ。プラス貢献度も加算された。
『もう少し早く気づけば貢献度も高くなっていたかもしれないなあ』
『こればっかりは最初に出くわしたサーバーってことで仕方ないよ』
『初クエスト、イベントに対しては貢献度や報償が多くなるようにもなってるし、そこら辺はバランスはとってるんじゃないか?』
『初出っていうのが、俺はとても嬉しいですよ!』
猫じゃらし、ソーダ、ジラフ、黒豆。クランリーダーたちが……違うか、ロジックのところはダインだった。
そのダインはと言えば、何やらセバスチャンと、部屋の隅で歓談している。
「え、マジっすか! 熱いっ!!」
などとめちゃくちゃ盛り上がっている。細かいところは聞き取れない。
セバスチャンはニコニコそれに応えていた。何を話しているんだろう。
後片付けも忙しそうなので俺たちは屋敷を後にする。
もうすぐ夜が明ける。丸一日まだ遊べる。
『で、結局バスタビア子爵の反乱って何から派生? アスター家のクエストにまだなかったよね』
猫じゃらしがアライアンスチャットで尋ねてくる。
『なんか前に、お高い果物盗人捕まえたクエストがあって、それを受けてたから『領主の矜持』クエストが進化したみたい』
『ああ、ジェロームとヴァージル一緒に行動してたやつね。へーっ。発動条件が決まってるっぽいかな。それなら他鯖でも扱えそうだな。マスター、動画にするんだろ?』
『一応な~。アスター家の中にいないと始まらないとかあったらご愁傷様だけど』
『食事中だったもんねッ!』
『って、猫じゃらしさん知ってるんですね』
『え、知らないヤツいるの? 動画になってたし、セツナ君関連の再生数見たことある? 時々とんでもないネタ拾ってるから、ゲームで前線張るヤツでチェックしてないプレイヤーなんていないよ?』
まあ、なんてことでしょう。
写本師のときの再生数はヤバかったが、あれはあれよ、イケメン集客だったから。また別だと思ってた。
普通に親衛隊以外も資料として見ているのか。変なネタバレにならないようにやっぱり気をつけよう。ソーダにチェックしてもらうのもそろそろ負担かなと思って差し控えていると、全部出せと言われるのである。
アライアンスが解かれ、俺たちは第七都市へ。
クランハウスでモーニングだ。
「パンケーキにしてみたよッ!」
「わーいなのじゃ!」
「こっちもあるよ~」
パンケーキはちょっと甘いからと言ったら、エッグベネディクト風にしてくれた。チーズがどばっとかかっていて黄色いソースとサラダを添えて。大変美味しいしゅうございます。
「でもあれだね、今回みたいに突発的だと参加できない人もいるんだね」
「そうでござるが……まあ仕方なし。拙者も参加できていない突発イベントは山ほどあるでござるよ」
「山ほどあるの?」
「そうよ~、……セツナ君、イベント告知アナウンス切ってる?」
「あー、そういえば。なんか前にアンジェリーナさんと話してるときに関係のないクエストアナウンスうるさいなって」
「……セツナっちがそれで幸せならいいんだけどッ」
「邪魔されるよりはまし」
「ならばよしなのじゃ!」
静かに読書したいしね。