作品タイトル不明
442.バスタビア子爵をさがせ!
ここの騎馬隊、馬鎧というのか、甲冑を着ていてごつくて強そうなのだ。
しかし、将を射んと欲すれば先ず馬を射よである。
このゴツゴツお馬ちゃんを倒すのがベスト!
「【迅雷】」
剣を振るった先に何本も雷が走る。
雷は金属が大変好きです。金属と水ですね。
どなたかの【アシッドレイン】食らってたあたりにぴよっと伸ばしたら、お馬ちゃん、直立した。
「セツナ君ナイス」
ヴァージルを守ると宣言してくれたジラフが一緒に行動している。
「【なぎ払い】」
風をまとったヴァージルの【なぎ払い】はお馬ちゃんにとって致命的。騎士を背に乗せたまま、吹っ飛んだ。もちろん騎士にもダメージが入っている。
スクロールを持っている騎馬の騎士たちが、地位も高く司令塔の役目をはたしていると判断したプレイヤーたちは騎士を重点的に狙った。
フレンドリーファイアーがないのならば、魔法も撃ちたい放題だ。【フロストサークル】が吹きすさぶ中、俺たちは先へ先へと奥の大将を目指す。
「……おかしいな。バスタビア子爵がいない」
「子爵?」
「軍の配置的にこのあたりまで来ればいて当然なのだが……自分は領地でぬくぬくとしているのか?」
ヴァージルの言うとおり、俺たちはかなり奥まで食い込んできていた。
しかし、これもあと数秒で配置変換がある。配置が変わると自動的に俺たちはCエリアへ引き戻されるのだ。だからそこで出てくるんじゃないのかな? って思ってた。
だが、次も、その次も減ってきた騎馬をさらに減らす作業となる。
『ちょーっとおかしいね。何かトリガーがあるのかもしれない。斥候組、周囲探ってみよう』
猫じゃらしの方も同じことを思っていたらしい。
『ヴァージルがバスタビア子爵がいるべきところにいないって言ってる』
『AからE以外のエリア見張ってるニンニン部隊は何か見てないの?』
『御庭番衆って呼んで欲しいでござるよ~! 今のところ怪しい動きは見られないでござるね。といいたいところでござるが、配置換えのたびに振り出しに戻されて十分間で行ける距離の限界があるでござる』
『そうなんだよねー、最初登録したエリアに戻されるんだよ』
『運営には性格悪いのいるわよね~』
ということは。
だいたいみんな同じことを思い立ったようだ。
『イェーメールのポータルある人、八海山はあるよね? 酒屋の近くに』
よそのクランにポータル位置バレてるの笑う。
『八海山はDでござるね。御庭番衆、Dの内側の方にダッシュでござるよ』
『了解!』
『はせ参じる!』
『任せろくだしあ』
ござるはいないようだ。
「ヴァージル、聖騎士団にはどのあたりを守るように言ってるの?」
「四方の門と、街中にも配備した」
「お屋敷は?」
「アランが兄上といるとは言っていたが……」
とここまで交わして顔色を変えた。
「半蔵門線たちが見に行くって話だから、俺たちはここに」
「そうか……」
「ほら、ヴァージルがここにいたらさ、主戦力をここに投じてるって相手は安心するじゃん?」
ヴァージルが動いたら、俺らの読みが正しければ気づいたってバレる。
そんな言葉を交わしているうちに、また配置換え。俺たち振り出しに戻る。この戻る違和感を、ヴァージルは感じないようになっているようだ。
「だいたいこっちが突破されたらそれはそれで困るし」
「……そうだな。セツナの仲間を信じよう」
「うちの人員も何人か向かってるらしいから。しばらくしたら連絡が来るだろう」
そうしてまたワンターン戦う。
『イェーメールに入ったらターンの切り替わりに引き戻されなくなったでござる』
『屋敷周りは今のところ無事!』
『南門問題なし』
『北門問題なし』
『西門……敵影!!』
『さっき言った面子、西門へ。ポータル出す八海山護衛忘れずに』
異変が起こった場合、エリアDの中から移動する討伐メンバーが選別されていた。
俺たちはこのまま前線で敵を引きつけるのがお仕事だ。
「ヴァージル、やっぱりイェーメールに西門から侵入者だって。来訪者が向かってるよ」
「そうか」
「こっちの敵を引きつけられるだけ引きつけておいてって」
「わかった」
騎兵の数はかなり減ってきていた。もうほとんどいないといっても過言ではない。
数の報告があり回を追うごとに倒れた兵士の分が補充されるのだが、後方からの追加がなくなると左右のA,Eから補充しているらしく、そちらにほとんど兵士がいなくなった。
『Dに合流したけど、こっちもかなり余裕だね。ヴァージルがいるCに人員投入してるみたい』
『それでもBDは人員減らせないな。横から入られても嫌だし』
『A、E分でイェーメール対応できるんじゃない?』
そして、十五ターン目で残兵たちが踵を返して逃げていった。まだ十分経っていないうちなので、こちらの戦は終わりなのだろう。
「イェーメールへ帰還しよう」
ヴァージルがシュヴァルツを出し、俺もぎょろちゃんを召喚だ。
『西門と北門から大量の兵士がなだれ込んでこようとしてる。北に人を回そう。帰還したプレイヤーは西へ。西に集中していた人員、北に半数が向かって。ピロリ、半蔵門線は北へ即移動。てか、マスターんところみんな北へ移動よろしく。八海山ポータルが早い。緑水晶渡しといて』
『ストックは山ほどあるからいらないよ』
俺たちも騎獣で移動していたが、エリアDの八海山のところへ。
騎獣を戻して五つも出ているポータルに飛び込む。
酒屋から北門までダッシュすると、途中ピロリと合流した。
「半ちゃんはもう先に行ったわ。セツナ君も行っちゃって~」
「じゃ、お先に」
足は速いんだよ!
ヴァージルに合わせて走っていたが、ピロリに任せることにする。
北門では、半蔵門線や他のプレイヤーが頑張って敵を押しとどめていたが、今ここに辿り着いているのは基本足の速い素早さに振っている面子だ。数で押されると対応に困る。
ということで押し戻すよ!
「【水付与】【濁流】」
濁った水がごおっと俺の 細剣(レイピア) から飛び出して、門前でごたごたしていたやつを流し飛ばす。
「セツナ殿ナイスでござる~」
ヴァージルが来るまで時間稼ぎだ!