軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

441.戦闘開始!

ゲーム開始まであと三分となる。すっかり日は落ちて、暗くなってきた。

平原の向こうの方からたいまつの明かりがやってくる。チラチラと光っている。普通は野戦って昼間行うものだと思ってた。ほら、映画とかもそうじゃん? 動くにしてもやりにくい。そこはお互い様だ。

でも敵は夜になる時間に接触してきた。

夜陰に乗じてなにか起きそうだ。

「そういえば、対人戦だけど、どこまでやっていいんだろう?」

「どこまでとは?」

「一応さ、イェーメールの領民もいるってことだろう?」

「ああ、そういうことか。気にしなくていいよ。圧倒的な力の差を見せて相手のやる気を削ぐのも戦法だよ。衝突回数が少ないほうが互いの損害は少ないさ」

アリを潰すのにゾウになるタイプの男、ヴァージルだった。

んじゃまあ、遠慮はいらないのか。

「付与いる?」

「そうだな……風あたりをもらおうかな」

「俺は何にしようかなぁ」

ちなみに、フレンドリーファイアーはないとのこと。思う存分大魔法も展開しておしまいなさいってことだ。

「MPは俺が渡すよ」

「俺もあげるよ」

突如後ろから声がしたと思ったら、漆黒のジラフだった。ジラフは魔法使いだ。

「ジラフさんもC班ですか」

「うん。大魔法得意だしね。よろしく、ヴァージルさん」

『そばで見るとガチイケメンだね、ヴァージルさん』

アライアンスを組んだパーティーチャットでジラフが言うと、途端に騒がしくなった。

『リーダーずるいっ!』

『私もぉぉぉ!! C班がよかった!!!』

『ヴァージル様ぁ~!!』

『持ち場を離れたヤツは、うちの大将からお仕置きだべ~』

『お仕置きしちゃうよ★』

カオスだ。

最後は猫じゃらしとダインなのだが、二人は相変わらず仲がよさそう。

『それでなくても、命令違反はたくさんいそうだしな』

八海山が言うのであたりを見る。【夜目】のおかげではっきり見えますね。周囲に蔓延るヴァージルファンクラブの面々が!!

「接敵したら、エリア内にほどよく散ってくださいね~? ヴァージルに来訪者のいいところ見せてあげてくださいよー?」

ヴァージルをだしにして釘差しをするが、さてはてどうなることやら。

『時間まであと三十秒。大魔法組への、魔術展開を指示』

「魔法使いさんたち、大魔法展開準備お願いします!」

おお! と声が上がり、杖を構えたプレイヤーが前線に出てきた。その前には盾を構えたタンクたちが並ぶ。あちこちからスキル発動の声が上がっていた。

俺はソーダか、たまに一緒に行動するクランメンバーのタンクしか知らないから、聞き慣れないスキルにちょっと興味がある。

ソーダガチガチ防御振りだからなあ。

「【マジックバリア】」

すぐ横でジラフが叫ぶ。青白い壁が俺とヴァージルの全面と頭上に現れた。

《『バスタビア子爵家の反乱』開始です》

アナウンスとともに軍が前方に出現する。Cエリアの外側だったのだが、右端に出ていた戦闘領域がぐんっと広がった。扇状にさらに増した。つまり、敵の軍勢も一緒のCエリアになったのだ。そして、戦闘領域に入ればそこに魔法が展開できる。

「【メテオストーム】」

見知った円陣がヴァージルから十メートルくらい前方に広がった。進軍してくるバスタビア子爵の軍は、まず歩兵。その後ろから騎兵だ。

歩兵たちが逃げ惑う。

火、風、氷あたりが多いのかな。

ちなみに俺は雷にした。属性たくさんの方が楽しそうだし? ヴァージルがMPをくれるので【万雷】を食らわしてみたりした。

楽しい。

俺が魔法使いに大魔法準備と言ったが、彼らは役どころをよく理解しており、大魔法も周囲をよく見て時間差で食らわしている。炎と氷のタッグは相変わらずエグい。

と、五分ほどこちらの遠距離攻撃が降り注いだところで敵方の騎馬が何やら叫んだ。懐から取り出した紙を破く。

その動作は見たことがある。

「スクロール来るぞっ!!」

相手は戦の準備をしてきているのだ。

こちらよりずっと、作戦はあるのだろう。

空に赤い円陣がきらめいた。

「炎系だ!」

火ネズミのローブを被る。

「【癒やしの息吹】」

周囲が炎に焼かれる。同時にヴァージルの回復魔法が癒やしていく。それでなんとか死なずに済んでる人がいる。多少……数は減った。

『スクロール攻撃キツいな』

『騎馬の、ちょっと身なりが良さそうなヤツが使ってたのじゃ』

『それじゃあそいつら先に狙おうか。遠距離隊で』

どこも同じような展開らしい。

とはいえ、手前に歩兵がやまほどいる。どうしたって魔法を飛ばせる距離は限界がある。だがその団体さんが徐々にこちらへ向かってきて俺たちの前線と混じり合う頃にはスクロールを破ることが終わっていた。

『うち、風系大魔法スクロールだったわ』

『こっち雷系』

『氷なのじゃ! 欲しいのじゃ!』

それぞれのエリアで違うようだ。

『そういや……アナウンスがエリアの状態が変わるって言ってたな……』

参謀猫じゃらしの言葉にダインが叫んでる。

『うおおおお!! とっとと始末!! 物理イズちゃん! ぴょん!』

『死んだら戦線復帰できねーから死ぬなよ~』

帰って来られない仕様か。それは死んじゃダメだな。でも、俺、火以外魔法攻撃耐えられなさそう。スクロールが何枚も破られ、俺たちのエリアにまんべんなく炎の塊が降ってきたのだ。

ジラフさんの【マジックバリア】のおかげでかなり軽減してたんだよね。

とりあえず、

「ヴァージルの護衛よろしく」

「そうだね、【マジックバリア】は切らさないよう気をつけるよ」

スクロール攻撃が止んで混戦状態に入った。俺の雷 細剣(レイピア) は、歩兵なら【突き刺し】すれば消えてくれる。

と、突然兵士たちが消えた。

《残兵カウントと再配置。五秒後に再開します》

「回復だ!!」

「備えろ!」

とはプレイヤー。

「一度引いたようだな。だがすぐ来るぞ、セツナ」

とはヴァージル。

周りとの温度差がNPCだ。

そして同じようなことを五回やったところで状況が変わる。

スクロール攻撃に耐えられなかったプレイヤーの数が減り、混戦で敵の数を減らした。再配置で再びスクロールが来るので、歩兵よりお金を持っていそうな騎馬をやるために素早さのある斥候や、距離のある攻撃ができる弓職が活躍していた。五回繰り返したことにより、騎馬の数は半分にはなったようだ。

「全軍突撃!」

今まで後ろの方で歩兵の戦いを眺めていた騎馬たちが駆け出す。

本気の戦の始まりだ!!